青木さやか×やましたひでこ 春のおしゃべり会に登場「断捨離で自己肯定感は上がる?」「見えないところを片付けた時、より清々しく感じるのが不思議」
2025年4月8日(火)11時0分 婦人公論.jp
仲良しの2人、撮影中も話は止まらず(撮影:本社 奥西義和 以下すべて)
BS朝日開局25周年記念「ウチ、“断捨離”しました!」やましたひでこと春のおしゃべり会が、2025年4月8日(火)13:00から、東京国際フォーラム ホールCで開催されます。お2人が青木さん宅の断捨離について語った対談を再配信します。
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雑誌の対談での出会いを経て意気投合したという断捨離提唱者・やましたひでこさんとお笑い芸人・女優・文筆家としてマルチな活躍をする青木さやかさん。青木家の断捨離から始まり、ご家族との関係や仕事での失敗談など、ざっくばらんに語り合っていただきました。
(構成◎岡宗真由子 撮影◎本社 奥西義和)
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自分の家が世界一居心地がいいと…
やました 初めての出会いは『サンキュ!』という雑誌の対談からですね。
青木 もう1年半ぐらい経ちますね。
やました 私の家にお招きしての対談でした。
青木 私は、結構自分のお家が好きでして…ひでこさんのお家に行っての驚きは「自分のうちより居心地の良い場所が、この世にあるんだ!」。まるでパワースポットに来たかのような清々しさで、とても感動しました。
やました 自宅のパワースポット化が断捨離ですから。
青木 対談を終えた後、ひでこさんはご自宅の全てを見せてくださいました。扉という扉、全部の引き出しを開けて見せてくださって、あまりの美しさに驚愕しました。
まるでモデルルームのよう。やましたさん宅のリビング(写真提供◎やましたさん)
はっきり言って一目惚れです
やました 私は、まずご本を拝読したのもあるのですが、お会いして飾らない人柄にすっかり魅了されてしまいました。
青木 ありがとうございます。私もひでこさんとお話すると、ゴールが見えるように感じるんです。そこに簡単に辿り着けるわけではないですが、どこに向かって走れば良いのかというアドバイスがいただける。お会いしてからは、何か迷うことがあるとひでこさんに相談してみたいと思うようになりました。
やました 私はこの仕事をするようになって、たくさんの方と対談して来ましたし、自分がかつて仰ぎ見ていたような方ともお会いする機会がありました。けれども心から「友達になりたい〜」と思った方は、初めてと言っていいくらい。さやかさんに一目惚れしたんです。そしてさやかさんの「ぜひ我が家にも来てください」というラブコールを真に受けて、すぐに伺うことにしました。
青木 あの「やましたひでこ」に直接アドバイスいただけるのはすごいチャンスだと思いました。それをYouTubeでも収録していただいて。
やました さやかさんは、何を言ってもとにかく軽快に打ち返してくれるから、私も最初から飛ばしましたね。
青木 こんなに言われるんだって驚きました。(笑)
やました 普通のおうちを片付けるレベルではお話していません。女優・青木さやかの家ですから、私も気合い充分。
やましたさんの指示で、青木さん宅の冷蔵庫のものをすべて出してみると・・・(写真提供◎青木さん)
扉の中は「収納」ではなく「楽屋」
青木 最初は冷蔵庫の整理からやっていただいて。
やました 家の中の納戸など、見えてない部分にモノがギッチリ詰まっているのは、見なくてもすぐにわかりました。でもそこから取り掛かるのは大変なので、手始めに冷蔵庫を選びました。
青木 なぜ収納にモノが詰まっているとわかるんですか?
やました 仕事柄なんとなくわかってしまうんですよ。押し込められたモノたちから、悪い “気”が出ているというか…。見えるところは片付いていて一見雰囲気がいい部屋なんだけど、ひとつひとつのモノはあまり愛でていない様子から、ちょっと自己肯定感の低さを感じましたね。
青木 言い当てられてしまって驚きでした。でもそもそも収納とはギッチリ詰め込むのが正解だと思っていたんです。
やました 大きな声では言えませんが、私は収納とは「詰め込んで殺す場所」と捉えています。
青木 ひでこさんは収納の中でさえ、飾り方を考えて!と仰るのでびっくりしました。
やました 扉の中は「収納」ではなく「楽屋」と考えていただきたいんです。永遠に出番のない多くの役者が詰め込まれている楽屋は怖いですよね。
青木 断捨離して気づいたこととしては、見えるところを片付けた時よりも、見えないところを片付けた時、より清々しく感じるということです。目に入っていないのに不思議でした。
やました そう、見えないところが変わると、部屋の中の“気”が変わるんです。
断捨離で自己肯定感を上げていく(青木)
青木 断捨離は、部屋が綺麗になることはもちろん、自己肯定感が上がることが直感的にわかったので、迷いなく取り組むことができました。
やました そこがわからない人も多いのよ。簡単に言うと、私は自宅が「自分を励ましてもてなす空間」になるべきだと思っています。散らかった部屋の中で自己啓発本を読んでいても自己肯定感は上がらない。さやかさんは勘がいいからすぐに理解してくれました。
青木 私は母との関係に悩み、芸能界で成功したら自己肯定感が上がるかと思って走り続けてきました。でも芸人として売れても自分を愛する気持ちは高まりませんでした。できる限り早いスピードで自己肯定感を高めていくことは私の人生のテーマです。
やました セルフイメージを高く持つと「これは高かったから捨てられない」みたいな発想にならないんです。セルフイメージを低く持っているとそれに合わせて自分も萎縮していくし、高く持っていると自ずと自己肯定感が上がっていきます。そしてモノで訓練すると、人や仕事での断捨離もできるようになっていく。断捨離をすると良い出会いが加速して、自分に必要のない人との別れも加速していく流れが生まれます。また舞台に例えると、同じステージに立つ人たちが集まってくるし、そこに似合わない人とは自然と縁が切れていく。さやかさんとの出会いは本当にワクワクするような素敵なものでした。
青木 私も人は出会いで決まると思っています。人間関係は私にとって最重要。なので人間関係にまつわるモノは捨てづらかったです。大切な人にいただいたものですね。そのモノ自体は飾ろうとは思わないけれど、関係性を思うと捨てられない。
やました 関係性って大事なのよね。私も最近失敗してしまったことがありました。あるおばあちゃんのお宅の片付けに伺ったの。その方は姑にも夫にも支配されていて、2人は亡くなっているのに2人にまつわる何もかもが捨てられない。でも娘さんに説得されてやっと片付けることができるようになった。
青木 よかったですね。
やました でも最後になって、私が玄関に貼ってあった折り紙の作品も片付けようとしたらその方の顔色が変わってしまったの。「お任せするって決めたからいいのよ!」って仰るのだけど、明らかに機嫌が悪くなってしまって。よく聞いてみると、その作品はおばあちゃんが今通っているデイケアで作っているものだったことがわかった。送ってくる介護士の方がその作品を見て「みんな捨てちゃうのに飾ってくれてありがとうね」と言ってくれていたそうで、おばあちゃんにとって今まであまりなかった「褒められる経験」を思い出す大切なモノだったというわけ。娘さんと相談の上、おしゃれに飾り直すことにしました。そうしたら嘘のようにご機嫌になられたんです。
青木 彼女にとって、それは自己肯定感を高めてくれるモノだったのですね。
解放感のある青木さん宅のリビング(写真提供◎青木さん)
大抵のモノは過去への執着(やました)
やました 大抵のモノは過去への執着で、垢のようなもの。でも現在の関係性と結びついているものは捨てる必要がない。
青木 私はかなりのものを減らすことができました。
やました そう、番組スタッフが、青木さん宅の最後の撮影に入る前に「ひでこさん、青木さんちは完璧で、もういじる箇所がないかもしれませんよ。尺が埋まらないかもしれない」って心配していたくらい。
青木 でもまたすぐにモノは増えてきますね。
やました それでいいのよ。断捨離は一度挑戦して終わりというわけではありません。私たちは流れの中にあって、常に澱みなく入れ替わっていくべき存在。たとえ今必要なものでも、未来には必要ではなくなる時がきます。さやかさんは潔く捨てていたけれど、抵抗はなかったですか?
青木 断捨離は楽しくはあったのですが、とても疲れましたね。棚から出して、ひとつひとつのものに向き合うのは、大変でした。
やました そう、頭を使って、いるのかいらないのか判断するより、“しまう”という体を使う動作の方が楽なのが人間。思考を放棄して体を動かす方が簡単なの。だから慣れるまで疲れるのは当然なのよ。それから疲れる原因はもうひとつあって、人間の思考はすぐに過去に行ったり未来に行ったりするから、それを「今」「現在」に結びつけておくことが大変なの。
青木 やはり過去に高く買ったものは捨て難かったですね。
やました 買い物って間違いだらけなのよね。
青木 ひでこさんでもそう感じるのですね。
最後の3年、母とは大バトルでした
やました さやかさんは、晩年のお母さまと仲直りをされてよかったですね。
青木 はい、胸の詰まりが取れたような気持ちになりました。
やました 私はあまり仲直りできずにお別れしたのよ。最期の言葉は「何にも捨てんといて」
青木 そうだったんですね!
やました でも捨てました。後始末をしないまま旅立っていくのは母にとっても気の毒だと思ってね。私と母は相克の関係にあって、母が黒だったらこちらは白、母が肉なら私は野菜、彼女は白米じゃないとご飯じゃないと言っていたけれど私は玄米が食べたい、とかね。母はいい家柄でお嬢さん育ちだったのだけれど、戦争で全てを失ってしまい、いつも不満を抱えていました。そして悪いことが起きると大体人のせいにするので、私とはいつもバトルになってしまう。モノもたくさん溜め込んでいて、何もかも捨てないでほしいと意固地になっていました。
『母』(青木さやか・著/中央公論新社)
青木 私も母に反発していましたが、反発するあまり早くに家を出たので、似ているのか正反対なのか、よくわからないです。母は晩年がんを患ったので、最期はかなり色々なものを自分で処分して始末良く亡くなっていきました。
やました 立派な方よね。ご本を読んだら、離婚当時、母は母ではなくオンナにみえた、と。私はね、さやかさんのお母さま、カッコいい女性だったと思っていますよ。
青木 友達の生き方ならば「カッコいい」と思えたのかもしれませんが、当時は子どもだったので、ものすごく反発していました。世間体を気にする性格だったのに、内情はこれか!という気持ちもありました。私たちの暮らしていたのは狭い町だったので、一時は、離婚により町の注目を集めた青木家でした。
やました でもお母さまは最後は校長先生にもなられましたよね。それは実力で、悪評なんかものともしなかったということでしょう。私はパワフルで魅力的な女性でいらしたと思います。
青木 母は私と弟に結構な額のお金を遺してくれていました。私が仕送りしたお金も全部使わずにいてくれたこともわかって。ひでこさんに「お金は愛よ」と言われたことがとても印象に残っています。
娘に対しては放任主義です
やました モノは結局残骸になるし、処分に困るからお金にしてくれるのは愛なのよ。
青木 はい、ありがたかったですね。母はほとんどのものを処分して、これは使うかなというモノは遺していましたが、そのうちの9割はいらないモノでした。子どもに何かものを残すということはやめた方がいいですね。ただ、今子どもが処分しないものには苦しめられています。家中綺麗にしたつもりでも娘の一部屋が散らかっていると、どうにも落ち着かないです。
『厄介なオンナ』(青木さやか・著/大和書房)
やました ただね、子どものものを勝手に捨ててはダメなの。捨てる行為というよりは、人間、「選択決断」の領域に踏み込まれることが嫌なものなの。それにお嬢さんは中学生でしょ。まだインプットの時期だからある程度ものを溜め込むのは仕方がないこと。「あなたのものを捨てたい」じゃなくて「散らかっていると気分が悪い」ということを率直に伝えてみるのもいいんじゃない?
青木 その言い方は迫力ありますね(笑)。娘はオシャレが大好きで、服をとにかくたくさん買いこんでくるのです。
やました ウチの息子の場合は漫画が好きでした。たくさん持っていたので、少しぐらい捨ててもバレないだろうと、勝手に捨ててしまったの。そうしたら「僕の『るろうに剣心』はどこ?」と聞かれましてね、最初はしらばっくれてたんだけど、捨てたと認めたら怒られました。今でも恨まれています。(笑)
青木 そうなんですね…!
やました 先日、彼が放浪の旅に出ているカナダで久しぶりに会った時、本屋に行ったら「MANGA」のコーナーがあるんだよ!と案内されました。「日本の漫画は世界で愛されている」という話を聞かせてくれて、ああ多分まだ根に持ってるな、と(笑)。あれは本当に申し訳なく思っています。息子は20歳くらいの時に突然なんにでも歯向かう口をきくようになったので、「言いたいことがあるなら言いなさい!」と詰め寄りました。そうすると「お母さんは断捨離断捨離って言うけど捨てるばっかりだ、それに価値観を押し付けている!」と言われたんです。価値観を押し付けるのだけはやめようと心がけていたのに、そう言われたのが本当にショックだった。その後は離れて住むようになり、とにかく息子の人生には一切口を出していないつもりです。
青木 私も母に口うるさく言われたので、娘に対しては放任主義です。何をしろとか指示しません。そうしたら先日、「勉強しないでいいっていう考えを押し付けないで」と言われました。娘はこの頃塾のコマ数を勝手に増やしてくるので、費用が大変です。
やました 良い子に育っているじゃない。私は息子が結婚する時にね、「あなたが選んだ人なら誰でもいいのよ」と伝えました。でもお嫁さんに「片付けは好きですか?」って聞いたら「そんなに好きじゃない」って言うから近づかないようにしています(笑)。無用な対立は避けた方がいいものね。
“女”として生きられる。最高だと思います
青木 私は今、娘と2人で暮らしていますが、娘が家を出ていく日はちょっと想像がつきません。「寂しい」という言葉で表現できないくらい喪失感があると思います。
やました そうね、助け合って暮らしているものね。でもね、そうしたらいよいよ恋に生きればいいと思う。日本は、妻でいる人、母でいる人が“女”であることが許されない社会。お嬢さんが成長されたら、さやかさんの場合は大手を振って“女”として生きられる。最高だと思います。
青木 娘が大学を卒業したらでしょうか。
やました 私個人としてはね、早いほうがいいと思います。私たち本当は死ぬまで女性でしょ。青木さやかが“女”になっているところを私も見届けたいですから。
『モノが減ると「運」が増える 1日5分からの断捨離』(やましたひでこ・著/大和書房)
青木 そうですね、今はマッチングアプリも充実してるって聞きますから(笑)。
やました 時間を作ってまたご飯を食べに行きましょう。
青木 ぜひ近々お願いします!
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