男性による「男性嫌悪」が潜んでいることに、男自身は気付いていない? ジェンダーギャップの解消を阻害するミサンドリー

4月8日(金)23時0分 messy

(C)柴田英里

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 日本において、「ジェンダーギャップ指数世界101位」、「セクハラやパワハラの被害者は圧倒的に女性が多い」という現状は、フェミニズムやジェンダースタディーズの不足と必要性を切実に示すものであり、「輝く女性の活躍を加速する男性リーダーの会」というネーミングセンスを正気かつ無邪気に発揮できている程度には、日本における女性の地位は男性に比べて相対的に低いように思います。

 ジェンダーギャップ指数世界101位の中でもとりわけ大きな問題である「女性の貧困」の背景には、「男性は女性よりも相対的に年収が高い」という悲しい現実と、「男は仕事、女は子育て」という性別役割分担に基づく価値観があります。

 「女性も男性と同様のキャリア形成ができなければならない」ということは当然ですが、それを実現するためには、「家事育児(無償労働)は女の仕事」という女性を抑圧する固定観念を解消するだけでなく、「産休や育休を男性は使うべきでない」「仕事ができない男は格好悪い」「男らしくない男は気持ち悪い」「専業主夫なんてヒモと同じ」など、男性を抑圧する保守的な固定観念を解消していく必要もあります。「女性は生きづらい」=「男性は生きづらくない」という公式は成立しないからです。男性にも用意された規範があり、それを一部でも壊さずに維持させたままでは、ジェンダーギャップは解消されません。

 前者と後者をともに担うことがフェミニズムやジェンダースタディーズの役割ですが、女性に関する事柄が中心的なフェミニズムに比べて、後者を中心に思考していくメンズスタディーズは、「男性=マジョリティ」という認識が強いゆえか、日本において発展が乏しいことは否めません。

 メンズスタディーズが発展途上であることはすなわち、「男性の方が生き方の選択肢が少ない」こと、旧来の家父長的理想の男性像がそのまま機能していることに他なりません。

 「結婚しても子供が産まれても仕事をしたい」という女性の意見は、「家事育児(無償労働)は女の仕事」という価値観が実際には「家事育児(無償労働)とパートタイムなどの家計の補佐的な労働(低賃金・非正規雇用)は女の仕事」として運用されているので、「結婚したら/子供が産まれたら仕事をやめて育児に専念したい」という男性の意見よりは好意的に受け取られるでしょう。

 婚活市場では未だに、「高収入男性と若い女性」の組み合わせがスタンダードです。男に求められるのは年収、女は若さと美しさと家庭的な趣味なのです。

 メンズスタディーズが発展途上であることの背景には、「男性=マジョリティ」という認識が強いことだけでなく、ミサンドリー(男性嫌悪・男性の自己嫌悪)もあるでしょう。

 ミサンドリーがメンズスタディーズの発展の障害になるのは、複雑な前提があります。旧来の家父長的理想の男性像を地でいくような保守的でマッチョな男性<Aタイプ>は「男がつらいのは当たり前マインド」と「男同士の絆で昇進できる」というムチとアメ(マゾヒズムとホモソーシャル)の構造によって、内面化した規範に鈍感になっています。他方、そうした鈍感さに耐えられない、「旧来の家父長的理想の男性像」につらさを覚えるような男性<Bタイプ>は、既存の「男性性」そのものを憎みがちになり、結果自己嫌悪を併発し、「男性で生きづらいですが女性の皆さんに比べたら全然マシなので文句は言いません」「被害者か加害者で言ったら加害者ですごめんなさい」という視点に陥ってしまいます。

メンズスタディーズの参入障壁となる男性のミサンドリー(男性嫌悪・自己嫌悪)

 女性による女性へのミソジニーはフェミニズムにおいて繰り返し論じられていますが、男性による男性へのミサンドリーは女性のそれに比べて論じられる機会自体に恵まれていないように思いますし、そもそも「ミサンドリー」という単語自体が「ミソジニー」に比べてマイナーですので、以下、大きく6つに分類してみました。

(1)ミサンドリー以前・潜伏型

(2)羨望・嫉妬(酸っぱいブドウ)型

(3)鏡像型

(4)自戒・免罪型

(5)非マッチョアピール型

(6)被害者・過剰防衛型

 順を追って説明していきます。

 まずは、(1)の【ミサンドリー以前・潜伏型】です。これは、「男がつらいのは当たり前マインド」と「男同士の絆で昇進できる」というムチとアメ、マゾヒズムとホモソーシャルの構造や、「旧来の家父長的理想の男性像」、「男性の方が生き方の選択肢が少ない」ことに疑問を抱かず、つらさも感じていない状態です。他者としての男性嫌悪・自己嫌悪双方のミサンドリーは顕在化していませんが、ミサンドリーがないということではありません。

 次に、(2)の【羨望・嫉妬(すっぱい葡萄)型】です。これは、(1)のような【ミサンドリー以前・潜伏型】に対して、「マッチョでマジョリティになりたい」「旧来の家父長的理想の男性のようにふるまいたい」ものの、だがしかし、自分はそうはなれないから、旧来の家父長的理想の男性像なんてろくでもない・なくなるべきものだと定義する。つまり、手に入れたくてたまらないのに努力しても手に届かない対象を「価値が無く低級で自分にふさわしくない」ものとしてあきらめるイソップ童話の「すっぱい葡萄」の話と同じ状態です。他者としての男性嫌悪(ミサンドリー)が顕在化しています。

 続いて、(3)の【鏡像型】です。これは、「保守的でマッチョな男性を嫌悪しているので自分はマッチョではない」、または、「自分の中にあるマッチョさを自覚し、我慢しているので、マッチョな男性のふるまいを見るのは不愉快・つらい」、つまり、「鏡像は実体でない」「鏡像は実体ではないが実体の自分と極めて似ている」という状態です。それぞれ、他者としての男性嫌悪のミサンドリーが強め/自己嫌悪としてのミサンドリーが強めの、他者と自己が混合した男性嫌悪(ミサンドリー)が顕在化しています。

 (4)【自戒・免罪型】は、(3)の【鏡像型】とよく似ていますが、自戒をこめて「保守的でマッチョな男性を批判すること」や、自分をマジョリティであると自覚した上でマイノリティに対しての横暴な態度を詫びることに疲れ、「男性で生きづらいですが女性の皆さんに比べたら全然マシなので文句は言いません」「被害者か加害者で言ったら加害者ですごめんなさい」というような、少々卑屈になっている状態です。自己嫌悪としての男性嫌悪(ミサンドリー)が顕在化しています。

 (5)【非マッチョアピール型】です。これは、(3)の【鏡像型】と(4)【自戒・免罪型】とよく似ていますが、自己嫌悪としての男性嫌悪(ミサンドリー)や卑屈さが極めて薄く、「保守的でマッチョな男性を批判すること」によって他者から承認を得たいという、承認欲求解消ツールとしてミサンドリーを利用している状態です。他者としての男性嫌悪(ミサンドリー)が顕在化しています。

 最後に、(6)【被害者・過剰防衛型】です。これは、「男性も女性も、マジョリティもマイノリティも生きやすい社会」の形成よりも、「保守的でマッチョな悪い男性を罰する」ことに力を入れている状態です。自分は「旧来の家父長的理想の男性像」の被害者であり、自分が苦しむ原因である「旧来の家父長的理想の男性像」は唾棄され、二度と自分のような被害者がでないように罰せられねばならない——として、他者としての男性嫌悪(ミサンドリー)が顕在化しています。

(1)の【ミサンドリー以前・潜伏型】だと思う方は、ダイバーシティーや多様性を認めていく社会に変わりつつある現状をふまえ、自分自身についていま一度振り返ってみてはどうでしょうか。

(2)の【羨望・嫉妬(すっぱい葡萄)型】ミサンドリーを解消するためには、まずは「旧来の家父長的理想の男性像への羨望」を自覚することが必要ではないでしょうか。

(3)の【鏡像型】ミサンドリーを解消するためには、「自己/他者」を区別し主語を大きくしないこと、好ましい場合もある「統率力」や「決断力」といった、二元論において男性性を担うものと、「ミソジニー」や「ホモフォビア」といった保守的でマッチョな男性社会の悪い部分を一緒にしないで、細やかに見ていく視点が必要ではないでしょうか。

(4)の【自戒・免罪型】ミサンドリーを解消するためには、卑屈にならずに「男性の生きづらさ」を語っても良いと、自信を持つことが必要ではないでしょうか。

(5)の【非マッチョアピール型】ミサンドリーを解消するためには、承認欲求を承認欲求として認め、承認欲求解消のために「保守的でマッチョな男性像」をサンドバッグにしたり、ミサンドリーをアピールすることは、旧来の家父長的理想の男性像とは別の型のマッチョ男性になり得るということを自覚することが必要ではないでしょうか。

(6)の【被害者・過剰防衛型】ミサンドリーを解消するためには、二元論的男性性そのものを排除しようとせず、視野を広げ他罰とは違う方法で「男性も女性も、マジョリティもマイノリティも生きやすい社会」を目指す方法についても考えをめぐらせてみることが必要ではないでしょうか。

 全男性が上記6タイプの分類に当てはまるわけではありませんし、すでに男らしさからの解放を実現している男性もいます。しかし、今なお多くの男性はミサンドリーにとらわれていると私には見えます。

 私は、非男性として、男性のミサンドリー(男性嫌悪・自己嫌悪)が解消し、メンズスタディーズがより良い発展を遂げ、男性の生き方の選択が増えることを願っています。

messy

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