「死ねよ!ゴミ!」撮り鉄がカメラの前を横切った自動車に罵声、法的問題は?

4月9日(火)16時48分 弁護士ドットコム

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鉄道ファンの中でも、特に列車の撮影を趣味とする通称「撮り鉄」。そのマナーが問われる動画が4月4日、ネット上にアップされて話題となっている。問題が起きたのは、鉄道ファンの間で有名な「ヒガハス」と呼ばれる撮影スポットで、JR東日本・東北本線(宇都宮線)の東大宮〜蓮田間にあり、田園風景を背景に長編成列車の全景をきれいにフレームに収めて撮影ができることから人気の場所となっている。



しかし、この日、お目当ての臨時列車がちょうど通過するタイミングで、ファンたちと線路の間にある道路に1台の自動車が通りかかった。目の前を自動車に横切られてシャッターチャンスを失ったファンは激昂。自動車の運転手に対して「死ねよ!ゴミ!」などと罵声を浴びせる様子が映った動画がTwitterに複数、アップされた(現在は削除されている)。



ネットでは、「撮り鉄」たちの態度に批判が集中しているが、公共の場におけるこうした行為は、法的にどのような問題があるのだろうか。



まず、問題となった動画では、列車が通過しようとした際にちょうど自動車が近づいてきたことに気づいたファンたちが「車止めちゃえ、止めちゃえ!」と話し、実際に「ストップ!ストップ!」と大声をあげている。



動画では、異変に気づいた自動車がスピードを緩めているようにも見える。しかし、停車せずに走り続けたことから、「おい!」「早く行けー!」と口々に自動車に向かって叫んでいた。結局、列車と自動車が重なってしまい、シャッターチャンスを失ったファンの一部が、「おおい!」「死ねよ!ゴミ!」と何回も自動車の運転手に対して罵声を浴びせていた。



こうした行為は、法的に問題はないのだろうか。甲本晃啓弁護士に聞いた。



●「通行させない」行為は強要罪、「罵声を浴びせる」行為は脅迫罪の可能性も

ファンたちの行動をどうとらえるか。



「停止を求めたことと罵声を浴びせたことについて分けて検討します。



まず、停止を求めることについては、原則を確認すると、道路は誰もが自由に往来することができ、文句を言われる筋合いはありません。もっとも、『お願い』のレベルであれば、一時的に止まってもらうように協力を求めることは、特に問題ありません。例えば、ガソリンスタンドや店舗の駐車場の車の出入りのため民間の誘導員が通行車両に停止をお願いするという場面は、みなさんも日常的に見る光景だと思います。



しかし、お願いのレベルをこえて通行させないようにすることは、犯罪にあたる可能性があります。たとえば、バリケードなどを置いて道路を通行できなくすれば、刑法124条の往来妨害罪(2年以下の懲役又は20万円以下の罰金)が成立しますし、物理的に通行ができる状況であっても暴行・脅迫等によって無理矢理その場に停止させれば223条の強要罪(3年以下の懲役)が成立します。



道路の所有者または管理者であれば、あらかじめ通行禁止の措置をとることもできますが、たまたま列車の撮影で訪れている第三者には、そのよう措置をとることはできません。



次に、罵声を浴びせたことについては、侮辱罪や脅迫罪、または埼玉県迷惑行為防止条例違反(公共の場所で公衆にすごむ等の不安を覚えさせる言動に関する罪)にあたると思われます。実際、その車の運転手は相当に怖い思いをしたと思いますが、例えば、運転手の気が動転してしまい人身事故を起こしてしまった場合には、罵声を浴びせた人たちには傷害罪(15年以下の懲役又は50万円以下の罰金)が成立する可能性もあります」



●50年近く続く「撮り鉄」のマナー問題…解決方法は?

安全に楽しく鉄道の撮影を楽しむためには何が必要なのだろうか。



「あまりにマナー違反が酷く、繰り返されるようであると、鉄道会社や周辺の土地所有者は、撮影ができないように目隠しとなる柵を設けるなどの対策をせざるをえなくなることも予想されます。



なお、このようなマナー違反は、何も現在に始まったことではなく、1970年代の鉄道雑誌を開いても、駅や沿線での撮影マナーに関する投書が載っており、もう50年近くも続いている問題であると言え、解決の難しさを物語っています。撮影マナーの問題は、シャッターチャンスという短い時間に情熱を注ぐ『撮り鉄』の人たちにとっては、心待ちにしたその瞬間に起こってしまった問題に冷静に対応することの難しさの現れと言えるでしょう。



とは言え、やはり一人一人がマナーを意識することからしか、この問題を解決に向かわせることはできないでしょう。最近では、ネットで動画を公開するという『私刑』的な対応が見られることもありますが、これはその時の制裁的な気持ちを一時的に満足させるのかもしれませんが、問題解決につながらないことは言うまでもありません。



大切な一瞬に一人一人が冷静になることが難しいのであれば、たとえば撮影者同士でお金を出し合って交通整理のための誘導員を雇うとか、地元の警察と協議の場をもうけてもらい、事前に法的にとることのできる対応(道路占有使用の許可等)を検討するなどして、社会との調整をファン自ら模索していくこともひとつの解決方法となるかもしれません」



なお、今回自動車が通行していた道が管理用道路であり、一般車両は通行禁止だったという「反論」もあがっているようだが、それでも、公道と同じように罪に問われる可能性があるので、くれぐれも注意したい。



(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
甲本 晃啓(こうもと・あきひろ)弁護士
東京・日本橋兜町に事務所を構える理系弁護士。鉄道に関する造詣が深く、鉄道模型メーカーの法律顧問を務める。著作権・商標権が専門。企業法務を中心としつつ、個人向けにネット名誉毀損事件の投稿者側の弁護を行っている。


事務所名:弁護士法人甲本総合法律事務所
事務所URL:http://komoto.jp

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