狼に育てられた男、人間としての暮らしに失望している(スペイン)

4月9日(月)20時30分 カラパイア

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 マルコス・ロドリゲス・パントーヤは7歳の時から12年間、スペイン、コルドバの山間部で狼とともに生きてきた。

 19歳の時、治安警察隊に発見され文明社会に帰還することになった。しかし現在72歳になった彼は人間との暮らしにそれほど馴染めなかったようだ。

 彼が今までの人生で一番幸福だったのは、オオカミたちと暮らした時期で、現在の人間としての暮らしに失望しているという。


El reencuentro de un hombre con sus hermanos, los lobos de la Sierra Morena

【親に捨てられ、共に暮らした羊飼いの老人に先立たれ独りぼっちに】

 1946年、コルドバ、アニョーラで生まれたパントーヤは3歳の時に母親を亡くし、それから間もなくして父親が別の女性と結婚した時に捨てられた。

 まだ子どもだった彼は山に連れて行かれ、年老いた羊飼いに身売りされる。パントーヤは羊飼いの後を継ぎ、300頭の羊の面倒を見るようになった。

 老人から火の起こし方や道具の使い方を学びながら暮らすが、彼がまだ8歳にも満たない1954年、羊飼いは亡くなり、独り取り残されることになった。

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【その後狼たちと暮らすように】

 パントーヤが野生の狼と暮らすようになった経緯ははっきりしない。しかし12年後に治安警察隊が彼を発見した時、パントーヤは人語の代わりに動物のような唸り声を発するようになっていた。

 彼は文明に連れ戻されるが、人間との暮らしに馴染むことはなかった。ある時などは、狼たちの許に帰ろうとさえした。しかし以前とは変わってしまい、狼たちに兄弟として受け入れられることはなかった。

 「すぐそこにいるのは分かる。息遣いも聞こえる。それで鳥肌が立つ…でも姿は見せちゃくれない」と最近パントーヤはエルパイース紙で語っている。

 「狼がいて、呼びかけるとちゃんと返してくれるんだ。でも近寄ってはこなかった。私から人間の臭いがして、コロンもつけていたせいだな」

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【一番幸せな記憶は狼たちと暮らしたこと】

 パントーヤは彼の最後の幸せな記憶は狼たちとの暮らしでのことだったと話す。そこにいたメス狼は彼の人生で初めて母親としての愛情を示してくれた。また子狼たちも彼を兄弟として受け入れてくれた。

 彼に自然の中で生きる方法を教え、食べられる木の実やキノコあるいは毒入りのものを示してくれた。彼はコウモリや蛇が潜む洞窟の中で眠り、大地を裸足のまま全力で駆け回った頃を覚えている。

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 「走れないのは雪で痛くなってしまう時だけだ。足には大きなタコができて、岩を蹴るのなんてボールを蹴るようなものだった」


【人間としての暮らしに失望】

 そんな幸せな時間は53年前に終わり、それからは失意の人生となった。彼は人間に騙されたり虐待されたりしたこと、介護や建設の仕事で上司に利用されたことを語る。サッカーや政治について詳しくないことを人から馬鹿にされることもあるという。

 今、パントーヤはガリシア州オウレンセのランテという村で暮らしている。年金では暖房を買うことができず、今年の冬は特に難儀したという。幸いにも「アミーガス・ダス・アルボレス」という団体が寄付を募り、次の冬に向けた暖房器具を購入してくれた。

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 人との暮らしに失望を禁じ得ない彼であるが、少なくとも隣人の何人かは仲間として受け入れてくれたことが嬉しいと語る。

 また子供たちとおしゃべりしながら、動物の素晴らしさや環境を守ることの大切さを話すことが好きだという。

 アミーガス・ダス・アルボレスは時折彼を学校に招き、生徒たちに話をしてもらっている。パントーヤが一番落ち着ける人間は子供なのだ。

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 パントーヤは動物に育てられた人間というほとんど前例のない稀有な事例である。これまで人類学や本の題材として度々研究対象とされてきた。


"Los animales eran mi familia, mis amigos, todo" BBC MUNDO

References:elpais/ written by hiroching / edited by parumo

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