名車と暮らせば~メルセデス「124」との悲喜こもごも~ 第22回 メルセデス「W124」の屋根にトラブル! 新たな「名車」も登場?

2024年4月9日(火)11時30分 マイナビニュース

昨年のマイカー車検取得レポート以来しばらく更新していなかった「名車と暮らせば」だが、記事が出なかった理由は極めてシンプル。主役であるメルセデス・ベンツ「W124セダン」(1993年式280E)が快調そのもので、報告したくなるようなことが何も起きなかったからだ。まだまだ元気に走ってくれそうなW124には満足している……のだが、実は、別の名車に乗り換えたいという気持ちがわいてきたのも事実だ。
W124の修理の歴史
昨年の車検を前に、くだんの「アイディング」で6気筒のイグニッションコイル(3個)とオーバーロードリレー、左側タイロッド(右側は一昨年に交換済み)を交換してからは、ずっとトラブルなしで夏、秋、冬の3シーズンを越してきた我がW124。
それ以前にも、ハンチング(アイドリングが一定しない症状)に起因する大物のメインコンピュータやスロットルバルブをはじめ、フューエルポンプの交換、燃料タンク取り外し洗浄、ラジエターサブタンクの交換とそれらに伴うホース類の全交換、エアバッグのアラームに起因するステアリング系パーツ交換、各部のブッシュやマウント類、各種オイル、タイヤなどの交換を行なっていたので、ATなどの超大物を除けば、やるべきことが大体一回りした感じだ。
トータルで三桁万円近くの費用を要したが、おかげで長いノーズに搭載するM104型直列6気筒DOHCエンジンは快調に回り続け、各地で頻繁に開催される試乗会にもノートラブルできっちりと参加できていた。
久々のトラブル! ルーフがボヨンと垂れ下がる…
そんな状況で迎えた2024年1月末のこと。それが発覚したのは、伊豆で開催されたとあるスポーツモデルの試乗会を終えての帰路だった。交差点で止まった時に背伸びをしようと腕を上げると、グーにした手の先が当たったのは妙にフワリとした感覚の天井で、しかも、当たるはずのないような低い位置にそれがあるのだ。「ウンッ?」と思わず見上げると、薄いグレーのルーフライニングがまるで風船のように丸く垂れ下がってしまっているではありませんか!!
すぐに、古い輸入車によくあるルーフの垂れ下がりだと理解した。「昨年の夏の猛烈な高温のせいなのだろうか」とか、「いつから始まっていたのだろうか」とか、「後席に乗った家族はなんで気が付かなかったのだろうか」などといろいろなことを考えながらも、なんとか冷静な気分を繕って自宅に戻ったのを覚えている。
内装屋さんは減っているらしい…
さて、修理はどうする?
そのまま放置しておくと、剥がれた隙間からグサグサに劣化したウレタンがポロポロと落ち出してくる(実際に少し落ち始めている)とか、窓を開けて走っていると風圧で一気にライニングが剥がれて大変なことになるなどの恐ろしい事態に陥りかねない。すぐに修理先を探すことにした。
まず、近所にある自動車修理工場に聞いてみると、こうした案件に対処できる内装屋さんは高齢化を理由に廃業しているところが多く、近場でやっているところはないだろう、とのこと。そこでアイディングの白濱社長に聞いてみると、「4〜5日ほど業者にあずけて、費用は10万円前後かな」とのお返事。また、直後に開催されたJAIA(日本自動車輸入組合)の試乗会に参加した際、知り合いのメルセデス・ベンツ日本の広報さんに聞いてみると、メルセデス・ベンツ品川には「R109」(古いSL系)などの修理もできる有名なベテランがまだ在籍しているとの話だったのだが、確認してもらうと最低でも費用は15万円以上、期間は1週間以上とのことだったので、丁重に辞退することにした。
そこでネットで調べてみたら、新宿と杉並にやってくれそうなところが見つかった。それぞれの店を訪ねて見積もりを取ったところ、どちらも午前10時までにクルマを預ければ夕方までには仕上げてくれるという。結局、お願いしたのは新宿にある「FINE ARTS」(ファインアーツ)という個人経営の業者さん。材料のサンプルや1日仕上がりという点は同じだったのだが、費用面の差でこちらを選ばせていただいた。
職人技でW124が復活!
社長の黒田浩正さんは、自動車の内装をずっと手がけてきたという。独立後はルーフの張り替え依頼がけっこう増えてきているとのことだ。これも専門業者が減っている影響なのだろう。
筆者のW124はサンルーフなしのモデルだったので、作業は比較的簡単とのことだった。当日は仲間の業者さんと2人で左右の取り付け部を並行して一気に外していき、劣化したウレタンを除去したベース部材に新しいライニングを貼り付けた後は、また2人して左右並行に取り付け作業を行なっていった。その手際の良さは見事なもので、午後2時半ごろには作業完了。車内に接着剤などのイヤな匂いは残っておらず、すぐに乗って帰ることができた。費用は7.37万円。完全乾燥までは1週間程度かかる、とのことだった。
春は別れの季節…新たな名車が登場!
ステーションワゴンの「S124」に約7年、セダンの「W124」に約3年と、合計でちょうど10年間付き合ってきたメルセデスの124シリーズ。冒頭で紹介したように、旧いクルマらしくいろいろなことがあったけれども、ストックパーツが豊富で壊れたらすぐに治る(パーツ代は年々高騰中)し、最新モデルの試乗会を終えて124に乗り換えた時には、いつもホッとするような安心感を与えてくれていた。そして、ちょっと離れた位置から見たその姿は、どの角度からもシンプルで飽きることなく魅力的。さすが“最善か無か”を標榜した最後のメルセデスで、誰もが認める「名車」といっていいだろう。
ただ、筆者には今のうちに乗っておきたいクルマがもう1台だけあった。それが、このクルマだ。
わかる人にはすぐにわかるはず。現在は内外装に手を入れている最中で、仕上り後には「名車と暮らせば」の主役が交代することになる。春は別れと出会いのシーズン。124とこのクルマは卒業生と新入生(年齢は写真のクルマの方が124よりも上なのだが)という感じか。ちょっと寂しくなるけれども、124は今後も身内が乗ることになったので、時たま登場することになるかもしれない。
原アキラ はらあきら 1983年、某通信社写真部に入社。カメラマン、デスクを経験後、デジタル部門で自動車を担当。週1本、年間50本の試乗記を約5年間執筆。現在フリーで各メディアに記事を発表中。試乗会、発表会に関わらず、自ら写真を撮影することを信条とする。 この著者の記事一覧はこちら

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