陽気で楽しそうなイタリア人。しかしその実態は、時間は守らず、空気も読まない。それでもなんとか回ってしまう、彼らの二つの口癖は

2025年4月10日(木)12時30分 婦人公論.jp


美しいイメージのイタリア(『イタリア流。』より/撮影:中山久美子)

歴史ある街並みや数々の芸術、食が豊かで、陽気なアモーレの国イタリア。イタリア人はなぜ、あんなに生きていることを謳歌できるのでしょうか?イタリア在住20年、現地で通訳・コーディネーターとして活躍する中山久美子さんによると、彼らは本当にマイペースで、移住した最初の数年は驚きととまどいの連続だったそう。そんな世界一楽しそうに生きているイタリア人の根底にある「流儀」を明かす『イタリア流。』から一部を抜粋して紹介します。

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「陽気で楽しそう!」の根底にあるもの


歴史ある街並みや数々の芸術、そしてライフスタイルへの憧れなど、全世界から人気があるイタリア。

アモーレの国、食が豊かな国、陽気でとても楽しそうな国……そんなイメージを持つ方も多いと思います。

では実際に暮らしてみると、本当にそうなのでしょうか?

かく言う私も、以前はそんなイメージを持っていた一人。

歴史好きであることからイタリアに興味を持ち、大学の卒業旅行で訪れた時に一気にその魅力に引き込まれました。

美しい街並み、とびきり美味しい食べ物、何よりも面白い人々。「一度でいいから、イタリアで暮らしてみたい!」とまで思うようになったのです。

しかし当然ながら、リアルなイタリア生活は、旅行とはまったく別のものです。電車は時間通りに来ない。空気を読まず、言いたいことを言うストレートな会話。

決められた時間も単なる目安。客にも患者にもフランクな対応などなど、例を挙げるときりがありません。

日本での常識が見事に覆され、最初の数年は驚きと、とまどいの連続でした。そんな私をよそにイタリア人は当然ながらマイペース。

いったいどうして、こんな風にいられるんだろう? と、日々翻弄されていたある日のこと、私は、彼らがよく使うフレーズに気づきました。

それは、「Vediamo(見てみよう)」と「Lascia perdere(忘れてしまえ)」というもの。

なんとかうまく回るようになっている「フレーズ」


前者は何かを決めきれない時にお茶を濁したり、何かがうまくいかない時に、これから何があるかわからないよ、と先に希望を持たせるようにするために使われます。

最初は「なんで今決められないの」「今なんとかしたいのに」とイライラすることもありましたが、結局は丸く収まることがほとんど。

ですからこのフレーズを聞くと、せっかちにならなくてもなんとかなるか、うまくいくかも、と思わせてくれます。

後者は嫌なことがあった時、どうしようもない時に使います。これを言ったり言われたりすると、それでモヤモヤした感情がどっかに吹っ飛んだ気にも……。

今では私も頻繁に使うこれらのフレーズは、いろいろなことがあってもなんとかうまく回るようになっている、イタリアン・マインドを象徴しているように感じています。

ここでは、そういったイタリアン・マインドを踏まえながら、イタリアの日常や食生活、その中で気づいたイタリア人の愛情の深さや大事にしているもの、実際に身の回りにいる面白い人物などを紹介しています。

日本の方からは、「それ、ネタでしょ?」「盛ってるでしょ?」と疑われそうなエピソードも多々ありますが、そんな経験を通して身に着けざるを得なかったイタリア社会でうまく生き抜く術、心が楽になる考え方や気の持ち方も綴りました。

イタリア人の流儀


ところで、イタリア人というと、「陽気で適当で楽しそう」と思われる方も多いことでしょう。

でもそこには実は、
・自分にも他人にも寛容であり、キチキチしない「ゆとり」の精神
・大事なものにかける愛情と、そうでないものへの割り切り
・遠い先の心配よりも、その時々で行動する物腰の柔らかさ
・ありのままでいられる家族や友人を大切にする心

こういった「流儀」がイタリア人の根底に流れている——。移住から20年以上の暮らしの中で、だんだんとそう思うようになりました。

それらがひいては、味があって憎めないユニークな人や、うまくいかなくても上手に流してしまう人、心がほっこり温かくなる人たちや、なんだかんだあっても飽きない楽しい毎日につながっているのではないかと感じています。


イタリア人は「陽気で楽しそう」(『イタリア流。』より/撮影:中山久美子)

日本人とは、習慣や国民性は違うが…


日本とイタリアは地理も歴史も違いますし、習慣や国民性も違います。ここに記したことも、私の個人的な経験と個人的に感じていることにすぎません。

また、統一されてからまだ歴史の浅いこの国では、地方によって異なることも往々にしてあります。

さらには、私がイタリアに来てからの20数年でイタリアも変わったように、日本も私がいた頃とは変化しているでしょう。

今の私が知る日本は、数年に1回の帰省や家族や友人とのやり取り、SNSなどから入ってくる情報だけです。

しかし今も、昔の私のように仕事のストレスと毎日向き合っていたり、他者からの評価に精神を削られたり、人間関係がうまくいかずに気が沈みがちな方がいるのなら、少なくとも「楽しそうに見える」イタリア人から何かヒントを得られるかもしれません。

これを読んで、イタリアで暮らしてみたいと思うか、絶対に行きたくないと思うかは人それぞれ。

それでもぷっと笑いがふき出たり、共感したり、ほっこりしたり、「イタリアって面白いな」と思ったり。

イタリアン・マインドを通してあなたの毎日が、心軽やかにワクワクするものに変化したらとても嬉しく思います。

※本稿は『イタリア流。』(大和出版)の一部を再編集したものです。

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