イヌとネコとヤギと人間の異種ファミリーで子犬を育てる

2024年4月11日(木)11時30分 ソトコト


使える風呂なし、トイレなし、キッチンなしの無い無い古民家に、ヤギのひじきとともに引っ越したのが2016年。犬のあわが加わり、2020年にあわが仔犬を出産したときには、猫のワラワラも加わっていた。あわとひじき、ワラワラと人間の私。種族は違えど、無い無い古民家に暮らすファミリーだ。そんな異種ファミリーでの、仔犬育てを紹介する。


整った家は無いけれど、すばらしい環境はある


季節の変化を感じられる庭を、あわと一緒に毎日お散歩。ときにはヤギのひじきと猫のワラワラも加わって、みんなそれぞれマイペースに散歩を楽しむ。



私が暮らす家は、一般的な家とくらべたら無いものが多いのだが、ここには美しい自然環境があり、都会には無いものがたくさん詰まった、“有る有る”暮らしだと私は思っている。そんな暮らしのなかで、あわが3匹の仔犬を出産した。


<そのときの様子はこちら>
犬、猫、ヤギ、そして人間。“無い無い”古民家で迎えた愛犬あわ、はじめての出産


目も開いていない、小さな小さな仔犬たちに私ができることはほぼ無い。あわにとって初めての出産だったが、出産の手順やその後の子育てについてちゃんと自分で分っていて、母乳を飲ませ、仔犬たちの排泄物をちゃんと処理していた。そんなあわを、私とワラワラは見守るか、ちょこっとだけ手助けすることしかできなかったが、ヤギのひじきだけは違っていた。


母乳をあげるあわと、それを見守るワラワラ。

聖なるヤギ、ひじきさま


ひじきは昔出産したことはあるが、その後妊娠はしていない。それなのに、ミルクを出すのだ。人間も動物も出産して、わが子のために母乳を出すようになるのが一般的なのに。


ひじきから毎日1リットルほどのミルクを搾乳し、ワラワラもあわも、仔犬たちも、ひじきミルクが大好きで、心待ちにする日々。


柵の外でミルクを待つあわと、柵の中で待つワラワラ。

すくすく育つ三匹の仔犬たちにミルクを与え続けるあわは、ご飯の量を増やしてもみるからに痩せこけてしまった。それでも、ミルクをせがまれればちゃんと与える。痩せたあわへの栄養補給と、成長期の仔犬たちにひじきミルクは大活躍し、ただ単にひじきミルクが好きなワラワラと私にも、ひじきは喜びを与えてくれた。妊娠していないのに私たちにミルクを与えてくれるひじきを、私は“聖なるヤギ”と呼んだ。


月に照らされて散歩する聖なるヤギと仔犬たち。

猫のワラワラは教育係


仔犬たちが動き回れるようになると、ワラワラに興味を示す。ある程度距離を保ちながらワラワラに接近。勇気を出してちょっかいを出す子、全く近づかない子、ただ見ているだけの子とさまざまだ。



ちょっかいを出そうとする子に対し、ワラワラは「やめなさい」と、猫パンチのポーズをとる。一旦引き下がる仔犬。ワラワラが背を向けてまた歩き始めると、ちょっかいを出そうとする。何度目かに、仔犬に猫パンチをくらわすが、爪はしまったままだ。



本気でパンチされないので、仔犬たちはちょっと体が大きいワラワラを姉のように慕い、遊んで〜と近づいていく。みんなで散歩に行くと、ワラワラは草に隠れて仔犬が通過するのを待ち伏せし、仔犬がくるとハントの真似をしてとびかかる。


草に隠れながら様子を伺うワラワラ。

ワラワラは、ネズミやウサギ、鳥も仕留める優秀なハンターなので、ハントの仕方を教えようとしているのかもしれない。


仔犬育てに役立たずな人間は、散歩とエサ係


ひじきはミルクを提供し、ワラワラは遊び相手兼教育係、人間の私はというと、みんなでお散歩してご飯をあげるくらいだ。大切な任務は、仔犬たちの新しい家族を見つけること。


あわの小さなお友だちが、仔犬たちに幼少ネームを付けてくれた。比較的茶色っぽいのが夏ちゃん。両手が白いのが秋ちゃん。片手が白くて、わが家で唯一の男の子が、冬くん。



女の子の方が成長が早くて、男の子は甘えん坊だとよく耳にしていたけれど、人間だけでなく犬にも該当するようで、夏ちゃんと秋ちゃんが越えられる柵を、冬くんはなかなか越えられなかった。散歩についてこられるようになったのも、冬くんが最後だ。


犬ファミリー


わが家の犬ファミリーになってくれたのは、あわの出産に立ち合ってくれた友だちと、仔犬たちのお父さん犬つながりの家族。お父さん犬の近くには、男同士ということで冬くんが、友だち宅には、お互いに預け合えるようにメス犬が引き取られることになった。


犬ファミリーの集いに参加するため、車に乗り込むあわファミリー。

わが家で産まれ、一緒に三カ月も暮らせば湧きあがってくるのが情である。ちょっとドジで、すっとぼけたような性格の秋ちゃんがかわいくて、ほっとけなくなってしまったのだ。


3匹の中で身体は一番小さいけれどとても活発で、好奇心旺盛。 つぶらな瞳と、鼻に皺を寄せる姿が特にかわいい。


あわと秋ちゃん

冬くんと夏ちゃんが新しい家族のもとに迎えられ、わが家ではあわと秋ちゃん、ワラワラとひじきという新しい家族での暮らしが始まることになった。


写真・文:鍋田ゆかり


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