ローソンの新商品の「のり弁を詰め込んだおにぎり」には、カオスを越えた感動がある / 白身フライや磯辺揚げ、たまご焼きなどが織りなす狂騒

2024年4月12日(金)14時55分 ロケットニュース24

2024年4月2日に、ローソンから「具! おにぎり まるで明太のり弁」なる商品がしれっと発売されていたことに、かなり遅れて気付いた。

最初の「具!」の時点で「何事か、落ち着いて話せ」という気分にさせられ、「おにぎり」で一旦「なるほど、おにぎりのことか」と油断したところで、「まるで明太のり弁」によって困惑以外の感情を剥奪される。

何とも心のざわつく商品名に釣られて公式サイトの画像を見てみると、磯辺揚げやたまご焼き、白身魚のフライといった、まさしくのり弁の具材たちがおにぎりの中に一緒くたに詰め込まれていた。こんなものをレビューせずにいたら、一生寝覚めが悪くなるに違いない。
そういうわけでローソンへ足早に向かったところ、それは確かに商品棚に存在した。

ローソンの公式サイトで見られるタイプの白昼夢ではなかったことに、驚愕と、記事のネタがボツにならずによかったという安堵が半分ずつ湧いた。ライターというのは他人が思っているよりも複雑な人種なのである。

さておき、そそくさと購入して持ち帰った。価格は322円だった。さすがに普通のおにぎりよりもボリューミーなだけあって少々値が張る。この価格が適正なのかどうかは、まもなくわかることだ。

パッケージに「温めると美味しい」と書いてあったので、少しだけ開封して500W45秒ほどレンジアップした。熱を帯びたパッケージから、ずっしりと重い中身を取り出すと、商品画像と一切違わぬ姿がお出ましした。

おかかのまぶされたご飯にくわえ込まれるような形で、溢れんばかりの大ぶりの具材たちが挟まれている。「おにぎり」と言うより最早「おはさみ」である。

何かに似ているなと思っていたら、かつて筆者が小学生だった頃、終業式の日に机の中の荷物を持ち帰らされた時の手提げ袋に似ている。これくらい荷物をぎゅうぎゅうに詰め込んでいた記憶がある。

好奇心に押されてご飯を開いてみたところ、何なら「めくられた本」にも似ている。そしてこれはおそらく世界初の「おにぎりの開き」である。珍妙さの底が知れない。

ついでにご飯を開いたことによって明太子やタルタルソースが入っているのもよく見えて、筆者は緊張の唾をのんだ。何故このようなおにぎりが生まれ落ちてしまったのか。

公式サイト曰く、タイパを意識した、つまり短時間で高い満足度が得られることを狙った商品らしい。確かに忙しい時には適しているのかもしれない。しかしだからといって、のり弁を丸ごと頬張ることを望んだ覚えはない。

部位ごとに小さく食べればそれぞれの具材を味わえるだろうが、その食べ方は微妙にタイパと逆行している気がするし、おにぎりである以上は具材をまとめて口に含むことが想定されているはずだ。

ゆえに筆者は大口を開けてかぶりついたわけだが、待ち受けていたのは案の定カオスであった。ソースの染み込んだ白身魚のフライが、青のりの風味豊かな磯辺揚げが、柔らかでほんのりと甘いたまご焼きが、我先にと味覚に飛び込んでくる。

思っていたよりはそれらの味付けは薄めであったものの、その周囲を固める明太子とタルタルソースが鮮烈に舌を刺激してくるし、そこへ旨味を携えたおかか混じりのご飯も加わってくるから手に負えない。

正直、何を食べているのかよくわからない。口の中で喧嘩しているどころか、もはや「戦」である。あちこちで具材たちの叫びが上がっている。法螺貝も銅鑼も鳴っている。

しかし、しかしである。何故かと聞かれれば筆者が一番困るのだが、何故か、不思議と美味しいのである。

例えば学校や仕事場での食事休憩中、のんびり食べていたら終了時刻が間際になってしまい、慌てて弁当の残りをかき込んだ時。あの時の口の中の味わいが不味いかというとそうではなく、意外にも何だか美味しい。そんな感覚に極めて近い。

一時期、映画の映像を無断で使用し、10分程度に要約してアップロードする「ファスト映画」という違法コンテンツが話題になったが、このおにぎりは「合法のファスト弁当」だと言える。食べ終わってみると、口の中で一つのドラマが完結したような満足感さえある。

筆者はこれまでそこそこ色々な料理を食べてきた自負があるし、それらをレビューする上で具材のハーモニーを重視してきたつもりだ。しかし、そのハーモニーというものは、実は大して重要ではなかったのかもしれない。

これまで構築してきたグルメ観を、手当たり次第に爆薬を詰め込んだ爆弾で爆破されたような、そんな気分である。ぎゅっと濃縮されようが、美味しいものは美味しい。そういうことなのかもしれない。

美味しいし、胃袋もだいぶ埋まる。欠点を挙げるとするなら、やはり価格面だと思われる。これに300円強を支払うのであれば、「握られていないのり弁」を買うという人もいるだろう。だが、あえて書こう。このおにぎりからでしか得られない感動は、間違いなく存在する

認めたくはないが、認めざるを得ない。勧めたくはないが、広く知られずに終わるなど我慢ならない。ライターというのは複雑な人種である。そしてこのおにぎりは、あまりに単純明快である。皆さんも寝覚めが悪くならないうちに、是非手に取ってみてほしい。

参考リンク:ローソン 公式サイト
執筆:西本大紀
Photo:Rocketnews24.

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