【著者に訊け】のむらしんぼ氏『コロコロ創刊伝説』

4月14日(木)7時0分 NEWSポストセブン

のむらしんぼ氏が明かすコロコロ創刊伝説

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【著者に訊け】のむらしんぼ氏/『コロコロ創刊伝説』/小学館/583円+税


 男の子なら、誰もが一度はあの分厚く、やや小ぶりな漫画誌を手にしたことがあるのではないか。創刊39年を迎えた伝説の少年誌『コロコロコミック』だ。この漫画に関わった人たちのドキュメンタリー漫画『コロコロ創刊伝説』の第一巻が発売になった。作者は創刊時から今まで唯一、『コロコロコミック』で少年漫画を描き続けているのむらしんぼ。主人公は著者本人だが、登場人物は『コロコロコミック』に関わった人たちすべてだ。


 のむらの作品を読んだ編集者が、こんなセリフを突きつけるシーンがある。


〈「ハッキリ言って…、古いんですよね〜!!」〉


 創作活動に携わる人間にとって、実際にナイフで刺されるより怖い言葉である。しかし、のむらは何でもないことのように語る。


「遠回し、遠回しに言われて、翻訳すると、そういう風に頭の中に入ってきた」


──傷つきませんか?


「ネット社会になって、のむらしんぼはもう終わったとか、散々書かれたから免疫できちゃった。自覚もしてたし」


 じつは30年以上前にも、すでに「古い」と言われたことがあった。


「何でもいいから、四コマのギャグ漫画を描いてって頼まれて、何となく、ハゲ丸ってタイトルが浮かんだの。そうしたら担当編集者に『古くない?』って。もう、おもしろいもん描けないし、漫画家として終わりかなと思ってたときでね」


 しかし、当時、俳優の鶴田浩二が『傷だらけの人生』の中で歌っていた言葉に勇気を得た。


「古いものほど、新しいじゃござせんか(実際は微妙に違うがのむらの中ではこう記憶されている)、って言うんだよね。それで初めて編集者に言い返したの」


 企画会議で「つるピカ」が付いて『つるピカハゲ丸』になったが、そこは譲歩した。するとこれが大ヒット。29歳のときである。


 年収200万が900万になり、900万が3500万になり、3年後にアニメ化されたことで翌年は6000万までいった。ここがピークで、アニメが終わり、連載が終わりと、そこからは緩やかに下降していく。1000万を切ったあたりで生活が困窮し始め、気づくと40代半ばで消費者金融に手を出していた。


「ギャンブルで大金を使ったとか、銀座で遊びまくったとか、ぜんぜんないのに、お金って、知らないうちになくなるんですよね」


 お金が去り、やがては妻と三人の子も去った。そのことは漫画の中でも描いた。


「離婚のことなんて描きたくなかったんですけど、編集者に描け描け言われるんですもん。自分をさらしてこそ漫画家なんだ、って。基本的に素直なんで」


 借金を背負っていることも描写した。作品中では、借金はいくらあるのかと問われ、〈「ざっとこんなもん!!」〉と指を3本立てる。ケタは読者の想像に委ねているが、率直に、いくらなのか訊いてみた。


「720万です。でも三本指が絵的によかった。二本指だとピースしているみたいで変だし。この本が10万部売れれば何とかなるんですが……」


◆今も描き続けている人はわずか


『コロコロ創刊伝説』連載の話が持ち上がったのは、一昨年の7月。書き溜めていたギャグ漫画は全部ボツになり、ストーリー漫画を描いて欲しいと頼まれる。担当編集者は、コロコロの生き字引であるのむらが適任だと考えたのだ。


「えっ、描かせてくれるの、って思いましたよ。しかも、僕が主人公で、僕の大事な思い出を描かせてもらえる。後は、誰かが描いておかないとコロコロの歴史が消えてしまうという思いもあった。コロコロのことを後世に残したいですから」


 第四話で明かされるヒット作『ゲームセンターあらし』の誕生秘話などは、当時のファンが読めばきっと胸が熱くなるに違いない。『コロコロ創刊伝説』は、2014年10月に創刊した『コロコロアニキ』に連載。第一回作品は、読者アンケートで第二位になった。


 他にも、さまざまな漫画家や編集者のエピソードがふんだんに盛り込まれているが、当事者に掲載の確認を取ると、ほとんどの人が「しんぼちゃんのためなら」と快諾したという。


 のむらと同時期に『コロコロコミック』で描き始めた同業者たちは今、どうしているのだろう。


「名前は言えませんけど、自己破産した人とか、一人や二人じゃないですよ。今も描き続けている人は、ほんのわずかです」


 フリーランスで何十年と生きてきた人たちは、最低限何か一つ、武器を持っているものだ。漫画家でいえば、絵が圧倒的にうまいとか、ストーリーが抜群だとか。そこへいくとのむらの武器はなんだったのか。


「絵は下手だしね……。三つの直じゃないですか。素直、愚直、正直。アシスタントに嘘もつかないですもん。税金はこれだけだよ、って(笑い)」


 この作品をきっかけにテレビなどにも出演したことで、音信不通になっていた娘から久々に食事の誘いのメールが届いた。


「五年前に結婚したんだけど、結婚式、出てないんです。包むお金がなくて……。あんとき、ごめんね、って言いたいね」


 作中で、映画監督のヒッチコックが代表作はと聞かれ「ネクストワン」と答えたエピソードが紹介されている。数十年ぶりの話題作に恵まれたのむらだが、代表作はもちろん「ネクストワン」だ。


【プロフィール】のむら・しんぼ:1955年9月24日、北海道生まれ。函館ラ・サール高卒、立教大文学部は漫画家を志し中退。1978年、『ケンカばんばん』で小学館新人コミック大賞入賞、同時にデビューを飾る(このときに本文中にあるように、担当編集者に「ネクストワン」の話を聞かされる)。1980年に『とどろけ! 一番』がスマッシュヒットし、1985年連載開始の四コマギャグ漫画『つるピカハゲ丸』はアニメ化されるなど大ヒット作に。174cm、72kg、AB型。


■構成/中村計 ■撮影/国府田利光


※週刊ポスト2016年4月22日号

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