日本の現状に即した無駄な医療5つがリスト化、今後増加

4月15日(土)16時0分 NEWSポストセブン

リスト化された5つの無駄な医療とは?

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 現役医師が自らの手で、現代医療に蔓延る「過剰診療」、「無駄な医療」の内部告発に乗り出した。それがチュージング・ワイズリー(賢い選択)だ。2012年に米国の内科専門医認定機構(ABIM)財団が「不要かもしれない過剰な検診や、無駄であるばかりか有害な医療を啓発していこう」と呼びかけたキャンペーンだ。


 その活動は拡大し、現在は全米74の医学・医療の専門学会が協力し、400以上の「無駄な医療」を指摘している。例えば、「前立腺肥大の検査をするのはほとんど無意味」、「心筋梗塞などの予防のための冠動脈CT検査は無駄」などだ。


 この活動は今やカナダ、ドイツ、イタリアなど17か国に広がり昨年10月には日本でも『チュージング・ワイズリー・ジャパン(以下、CWJ)』が立ち上がった。発起人となった七条診療所所長で佐賀大学医学部名誉教授の小泉俊三氏のほか、約20人の現役医師や医療専門家が名を連ねている。


 これまで世界に公表されてきた「無駄な医療」は、米国の学術団体によるものだけだったが、CWJ発足を契機に“日本発の項目”も出始めている。


 CWJメンバーの徳田安春医師が世話人を務める日本の総合診療指導医の勉強会「ジェネラリスト教育コンソーシアム」が、米国やカナダの学会がまとめた提言を検証し、日本の現状に即した5つの「無駄な医療」を指摘した。


【1】無症状の健康な人にPET(陽電子放射断層撮影)検診は勧めない

【2】無症状の健康な人に腫瘍マーカー検査は勧めない

【3】無症状の健康な人に脳MRI検査は勧めない

【4】自然に治る腹痛(非特異的腹痛)に腹部CT検査は勧めない

【5】医学的適応のない尿路カテーテル留置は勧めない


【1】〜【4】は健康診断や人間ドックにも含まれており、まさに“健康な人”が受けている検査だ。CWJメンバーで、総合診療医の岸田直樹氏が指摘する。


「【1】〜【3】は誤って陽性だと診断してしまう“偽陽性”のケースが多数報告されており、過剰診療に繋がってしまう。PET検診や腫瘍マーカーはそれ自体では、がんを明確に発見することができず、“がんの可能性がある”と診断した結果、胃カメラや造影剤を用いたCT検査を受けたが、結局何もなかったというような事態が少なくない。これらの検査は症状が出たり、無症状でも家族歴がある人が行なうものです。


 同じく脳MRI検査で、数ミリ単位の小さな脳動脈瘤を発見したとする。無症状なら通常は放置しておくサイズだが、存在を知った患者が治療を懇願し、結果的に『コイル塞栓術』などリスクの高い手術を選ぶケースもある」


 コイル塞栓術とは、動脈瘤にコイルなどの人工的な物質を詰めることで破裂を防ぐ治療法。その過程で医療ミスによる脳内出血を招くなどのリスクが伴う。


【4】のCT検査は医療被曝リスクを考慮して摘示された。世界のCTスキャン保有台数の国別ランキングを見ると、日本は人口100万人当たりのCTスキャン保有台数が1万3636台でトップになっている。【5】の尿路カテーテル留置だが、患者は感染症リスクを負うことになる。「医学的適応のない」とは、治療目的ではなく、「看護しやすくなる」など“医療サイドの都合”を指すもの。


 そうした検査は病気の早期発見に繋がる可能性もあるが、それ以上に過剰診療、医療ミスや合併症などのリスクの方が高いとCWJは判断し、「無駄な医療」と指摘した。


「現在は5項目しかありませんが、日本に約120あるすべての学会に『無駄な医療リスト』の作成を要請していくつもりです。6月に開かれる日本医学会のシンポジウムでも、CWJについて議論されます。日本独自のリストは、今後確実に増えていくと思います」(前出・小泉氏)


 CWJでは、日本独自項目の啓発を行なうと同時に、すでに米国で報告されている項目の中から日本人にも有益だと思われるものを翻訳し、ホームページ上で公開している。


※週刊ポスト2017年4月21日号

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