宮本亜門さんも 前立腺がんを疑ったら知っておきたい「最新治療」と「決断すべき3つのこと」

4月16日(火)6時0分 文春オンライン

 演出家の宮本亜門さん(61)が「前立腺がん」であることを公表しました。各紙の報道によると、2月下旬に人間ドックを受診した際に前立腺に約1センチの腫瘍が見つかり、3月上旬に受けた精密検査で前立腺がんと判明したそうです。


「全摘出をお願いします!」



宮本亜門さん ©文藝春秋


 幸い、骨や他臓器への転移は見つからず、進行度は「ステージII」と診断されたそうです。4月8日に出演した医療バラエティ番組「名医のTHE太鼓判! 3時間SP」(TBS系)で、宮本さんは、「全摘出をお願いします!」と医師に伝えていました。


 ところで、宮本さんはどんな手術を受けることになるのでしょうか。前立腺は男性にしかない臓器で、膀胱の下あたりに、尿道を取り巻くように存在しています。そのため、前立腺がんの手術は、前立腺や精嚢、リンパ節など周囲の組織を切除した後、膀胱と尿道をつなぎ直す必要があります。


【決断1】手術をロボットに任せられるか


 その方法として、以前はお腹を開けて行う「開腹手術」が一般的でしたが、現在は「腹腔鏡下手術」や「ミニマム創内視鏡下手術」の他、「ロボット支援下手術(以下、ロボット手術)」の選択肢もあります。


 腹腔鏡下手術は、お腹に数センチの穴を数ヵ所開け、細長い内視鏡カメラと手術器具を挿入し、モニターに映った術野を見ながら行う方法です。もう一つのミニマム創内視鏡下手術は、腹部に3〜4センチの穴を一つだけ開けて、細長い専用の内視鏡や手術器具を入れて行う手術です。


 これらに加えて、2012年に前立腺がんに保険適用となってから、ロボット手術を導入する病院が急速に増えました。お腹の中に細長い内視鏡や手術器具を挿入するのは腹腔鏡下手術と同じですが、器具は人の代わりにロボットアームが行います。術者は手術台から離れた操作ボックスに座り、顕微鏡のようなレンズに映る立体画像を覗きながら指や足を使ってロボットアームを遠隔操作します。



 このロボット手術は前立腺がんの手術に向いていると言われています。なぜなら、前立腺が骨盤の奥深いところにあるからです。腹腔鏡下手術は器具の動かせる角度に制限がありますが、ロボット手術なら器具を自由な角度に動かすことができます。また、手ぶれ防止機能がついているので、腹腔鏡下手術より繊細な動きができるとされています。


 もしかすると宮本さんも、ロボット手術を勧められるかもしれません。ただ、メリットばかりに目を奪われてはいけません。ロボット手術にも思わぬ落とし穴がありうるからです。



ロボット手術のもっとも大きな問題点


 ロボット手術のもっとも大きな問題点と専門医から指摘されているのが、動脈を傷つけて大出血を起したときの止血に時間がかかることです。腹腔鏡下手術やミニマム創内視鏡下手術なら、すぐに開腹をして止血することができます。しかし、ロボット手術はアームを抜いたり、装置自体を動かしたりするのに少し時間がかかります。いざと言うとき、このタイムラグのために、重大事故につながりかねないのです。


 今のところ、国内の前立腺がん手術でこのような重大事故は報告されていないようです。しかし、ロボット手術の先進国である米国では、 2000〜2013年の14年間で144人の死亡事例、1391人の負傷事例があったと論文で報告 されています。日本でもロボット手術の件数が増えてくると、このような問題が顕在化しないとも限りません。


 ロボット手術は、腹腔鏡下手術に熟練した外科医なら習得が速いと言われています。ですからロボット手術を受けるとしても、前立腺がんの腹腔鏡下手術などの経験も豊富な泌尿器科医のいる医療機関で受けることをお勧めしたいと思います。


【決断2】術後に尿失禁、勃起障害のリスクも


 前立腺がんの手術を受ける際に、もう一つ覚悟しておかなければならないことがあります。それは、術後に後遺症が起こるかもしれないことです。


 代表的なのが「排尿障害」、すなわち「尿失禁」。2016年1月に前立腺がんのロボット手術を受けた、タレントの西川きよしさんも、術後に尿失禁の後遺症が残ったことを告白しています。西川さんは、読売新聞の記事で、次のように話しています。


「チョロチョロと出ていた尿が、前立腺を取ってしまうと、蛇口全開みたいに、ザーッと出てしまうんです」(読売新聞ヨミドクター「 [タレント 西川きよしさん]前立腺がん(2)「まだまだ大黒柱」手術即断 」2017年3月22日)



 当初はおむつが必要なほどで、その後も、くしゃみなどをするとちょろっと漏れることがあるそうで、尿パッドをつけておられるそうです。



「垂れ流しになっては、少なくとも社長業は廃業しなければならない」


 もう一つが、性機能障害(勃起障害)です。同じく、98年に前立腺がんの開腹手術を受けた読売新聞グループ本社代表取締役主筆の渡邉恒雄氏(ナベツネさん)が、著書『わが人生記 青春・政治・野球・大病』(中公新書ラクレ)で次のように書いています。


「一方私も『前立腺のかたわらを走る2本の性神経は切断して構いませんが、尿道括約筋だけは温存してください』とお願いしていた。性神経を取るとインポになる。が、私は70歳を過ぎ、本心、セックスなどというものは厄介で不必要だが、垂れ流しになっては、少なくとも社長業は廃業しなければならない」



 宮本さんはまだ60代です。果たして、ナベツネさんのように「セックスなどというものは厄介で不必要」という境地になれるでしょうか。命と引き換えかもしれないとはいえ、男性にとっては大きな決断を迫られる問題だと言えるでしょう。


【決断3】「放射線治療」を行うかどうか


 こうした後遺症を避けられるかもしれない治療法として、前立腺がんでは手術のほかに根治が期待できる治療法として、「放射線治療」があります。それには、体内に埋め込んだ針のような線源から放射線を当てる「小線源治療」(組織内照射)と、体外から放射線をあてる「外照射」があります。


 とくに近年では、IMRT(強度変調放射線治療)という、コンピューターを駆使することで腫瘍の形に合わせて精密に放射線を当てることができる技術が普及しました。これによって、かつては多かった放射線治療による直腸や膀胱からの出血といった副作用が減ったとされています。


 ただし、放射線治療にも前述の出血の他、頻尿、排尿痛が起こったり、数年後に性機能障害が起こったりする副作用があります。また、再発した場合は、放射線の影響で組織が固くなり、出血しやすくなるため、手術のリスクが高くなるとされています。



 いずれにせよ、こうしたメリット・デメリットも考慮したうえで、治療法を選択する必要があると言えるでしょう。ちなみに、9日に全国がんセンター協議会が公表した 「全がん協生存率調査」のデータ(2002〜05年診断症例) を見ると、前立腺がんはステージIIでも10年生存率100%でした。


 宮本さんが納得のうえで最善の治療を受けられ、これからも素晴らしいミュージカルの演出を続けられることを心から期待しています。



(鳥集 徹)

文春オンライン

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