【職場のハラスメント】「逆ハラ」「ホワハラ」とは?
2025年4月17日(木)15時52分 マイナビニュース
A&Sフィナンシャルアドバイザリーは4月17日、「職場のハラスメントに関するアンケート調査」の結果を発表した。調査は2024年12月19日、回答時在籍している会社で勤続1年以上の会社員(正社員)800名を対象にインターネットで行われた。
「あなたの会社ではハラスメントの対策を行っていますか?」と質問したところ、「対策をしているが不十分」が最も多く約4割(37.8%)、次いで「全く対策をしていない」約3割(27.4%)となった。「十分な対策をしている」という回答は、約2割(20.3%)に留まり、約8割の会社が、ハラスメントの対策を強化するか新たに始める必要があることがわかった。
「職場でハラスメントが起きている」(「よく起きている」と「たまに起きている」の合計)と答えた人が6割強(63.7%)、「全く起きていない」は4割弱(36.4%)となった。
Q1で「十分な対策をしている」と回答した人の職場では、ハラスメントが起きている率が46.9%だったが、「対策はしているが不十分」または「全く対策をしていない」と回答した人の職場では、75.4%に達した。また、Q1で「十分な対策をしている」と回答した人の職場では、「ハラスメントが全く起きていない」という回答が53.1%と半数を超えたが、「対策はしているが不十分」または「全く対策をしていない」と回答した人の職場では、24.6%に留まった。
ハラスメント対策を十分に行っているかどうかによってハラスメントが起きている率には大きな差が出た。しかしながら一方で、対策が十分と回答した人の職場でも、約5割でハラスメントが起きているという結果になった。このことから、対策をしていても十分に機能していない、あるいは現場に浸透していない可能性があると考えられる。
Q2で、「ハラスメントが起きている」と回答した人に、「ハラスメントをした当事者がどのような状況になったか」を聞いたところ、「当事者はハラスメントをした認識がなくそのままとなっている」が突出して多く約6割(57.8%)に達した。2位の「被害者(または周囲)が会社に相談し、指導を受けた」(21.0%)との差は36.8ptにもなった。
Q2で、「ハラスメントが起きている」と回答した人に、「起きたハラスメントに対して、会社(または上司)が対応しているか」を聞いたところ、「把握はしているが適切な対応をしていない」(44.6%)、「会社(上司)は、そもそもハラスメントが起きたことを把握していない」(35.4%)、「ハラスメントを把握し、適切に対応している」(19.1%)という順位となった。起きたハラスメントに適切に対応している会社は、2割にも満たないことがわかった。
Q2で、「ハラスメントが起きている」と回答した人に、「ハラスメントが職場に与えた影響」を聞いたところ、「仕事へのモチベーションが下がった」(49.5%)と「職場の雰囲気が悪くなった」(48.5%)が、ともに約半数となった。また、「会社への不信感が募った」も3割(31.0%)に達した。「会社が対応してくれない」と感じることは従業員のモチベーション低下や、組織への信頼の喪失につながる。会社としてハラスメントにどう向き合うかは、従業員の心理的安全性に大きな影響を与え、ひいては企業の生産性や業績をも左右することになる。
「自分自身がハラスメントを受けた場合にどうするか」を聞いたところ、1位は「会社の上司・先輩・同僚などに相談する」で約4割(38.3%)となった。当事者(被害者)からハラスメントの相談を受けた際、適切な対応をできるかどうかが重要なポイントになりそうだ。また、「会社で設置しているハラスメントの相談窓口に相談する」は26.3%で、割にも満たない数値となった。
Q6で、「会社で設置している相談窓口」を選択しなかった人(73.7%)に、「なぜ相談しないか」を聞いたところ、「求めるような対応が期待できないから」という回答が最も多く約3割(28.8%)となった。「秘密が守られないと思うから」「大ごとになると思うから」もそれぞれ2割を超えており、会社の相談窓口を信頼し安心して活用できないと感じる人が少なくないことがわかった。また、そもそも「会社に相談窓口が設けられていないから」も26.1%となった。
ハラスメントが起きない職場にするためには、「社内のコミュニケーションを円滑にし、風通しのよい組織にする」という回答が最も多く約5割(49.4%)に達した。次いで「ハラスメントをした人への対応をする」(34.1%)、「方針を明確化し周知する」(32.4%)という結果となった。
職場で起きているハラスメントは、「パワハラ」が圧倒的に多く約8割(79.6%)で、次いで「セクハラ」(35.6%)、「カスハラ」(23.2%)となった。
近年、パワハラ対策が進むにつれ、部下から上司に対して行われる「逆パワハラ(逆ハラ)」も増加傾向にあると言われている。
「逆ハラは全く起きていない」という回答は、Q1で「十分な対策をしている」と回答した人の職場では58.6%、「対策はしているが不十分」または「全く対策をしていない」と回答した人の職場では46.4%となった。この数字を見る限り、十分な対策をしている職場でも4割以上(41.4%)、十分な対策をしていない職場では5割以上(53.6%)で、既に「逆ハラ」が起きていることになる。
注目すべき点として、「適切な指導に対しても『パワハラだ』と大げさに言う社員がいる」という回答は、ハラスメント対策を十分に行っている企業の方が高い傾向が見られた。これは、従来のハラスメント対策が、かえってハラスメントへの過剰な意識を生みだしている可能性を示している。適切な対策を行うには、正しい知識と、ハラスメントの境界線の理解が不可欠といえる。
近年、「逆ハラ」だけでなく、「ホワイトハラスメント(ホワハラ)」も増加していると言われている。ホワハラとは、上司が部下に対して、パワハラになることを恐れるあまり、過剰に気を遣って仕事の適切な指示や機会を与えず、結果的に部下のモチベーションや成長の機会を奪うことを指すという。
「ホワハラ」が起きる理由を聞いたところ、1位は「『パワハラ』と『適切な指導』の境界線が曖昧なため」約4割(36.9%)、2位は「部下・後輩からパワハラと言われることへの恐怖心が強いため」約3割(29.9%)という結果になった。