地震予知能力を持つ人がいる!? 磁気を受信する第6感とは?
2023年4月16日(日)7時0分 tocana
「絶対音感」や「共感覚」などと並んで、地震を予知する能力を持っていると主張する人々が一定数存在する。彼らに言わせると、突然耳鳴りが始まったり頭が痛くなったりと、体調に変化を感じた後、数日以内に大きな地震が起こるというのが最も代表的なパターンだという。
しかしながら、地震の前兆を”体感”したことがない人にとっては、少々現実味に欠ける話であるため、地震予知には疑念の目が向けられてきたが、近年の研究によって、どうやら本当にわれわれの脳には、地殻変動を感知する働きがあるらしいことがわかってきている。
2019年に報告された研究によると、人間の脳に地磁気を模した磁気を流す実験を行ったところ、人類に第六感が具わっている可能性が示唆されたという。この衝撃的な発表について、当時の記事を再掲する。
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※こちらの記事は2019年4月16日の記事を再掲しています。
渡り鳥やサメ、ミツバチなどの生物は、磁気を感知して正確な方角を把握することで知られている。そして今、なんと同様の能力が人間にも具わっている可能性が東大などの研究によって判明した。これが事実であれば、「体感」で地震を予知できると主張してきた人々の存在も電磁波によって説明できるようになるかもしれない。
研究でわかった衝撃の事実!
これまで、ヒトが有する感覚は5種類(視覚・聴覚・触覚・嗅覚・味覚)であり、磁気を感知する能力はないと考えられてきた。だが、東京大学と米カリフォルニア工科大学の地球科学者や神経生物学者らによる共同研究の結果、それが誤りだった可能性が示唆され、3月18日にインターネット上の専門誌『eNeuro』で発表された。
同研究では、地磁気を遮断した室内で、日米の18〜68歳の男女計34人を実験対象にして、その頭部を地磁気と同程度の強さの磁気で刺激した。すると、被験者たちの脳波が、磁気の向きに応じて無意識のうちに異なる反応を示していることがわかった。この結果から、ヒトは大まかではあるが、地磁気を感じ取る能力を持つと判断されたのだ。
研究チームの眞溪歩(またに・あゆむ)東大准教授は、「人間に未知の第六感があることが確認された。これを意識的に利用することは非常に難しいが、今後さらに詳しく調べて探っていきたい」(産経新聞、2019年3月19日)と語った。「第六感」と言っても、いわゆる日本でいうところの超感覚的知覚とは区別しなければならないだろう。実際に磁気を感じる感覚があるとするならば、それが正式な「第六感」とされ、科学的に未知の領域である超感覚については「第七感」と呼ばれるようになるかもしれない。
地震の前に異常を示す動物たち
1995年の阪神・淡路大震災の前兆証言を集めた『前兆証言1519!』(東京出版)では、記された前兆現象1711件のうち約半数近くが、動物の異常行動に関する報告だった。筆者は地震前兆研究家として数多くの事例を研究してきたが、そのなかでも、最も力を入れてデータ収集してきたのが動物の異常行動である。報告の多さはもとより、人間が日常生活の中で身近に観察できるため、大地震から身を守るためのノウハウになり得ると判断するからだ。
地震前兆現象の大家である故・池谷元伺大阪大学名誉教授によると、このような動物の異常行動のほとんどは「パルス電磁波」で説明できるという。地震の前に地下で発生する岩石破壊によってパルス電磁波が発生し、それが地上に伝搬して動物たちに異常行動を引き起こすというのだ。
「体感」してしまう人々
動物たちが電磁波を感知することで地震を予知するなら、今回の研究結果を踏まえて、地震前兆を捉える人間がいてもおかしくないはずだ。実際、これまで筆者が何度も紹介してきたように、地震前に体調に異変が現れる、いわゆる「体感」する人々は意外なほど多いのだ。
その症状は十人十色なのだが、もっとも多いのは地震前に耳鳴りや頭痛に襲われるというケースだ。何を隠そう筆者(東京都在住)もその一人で、強い頭痛があると、その3〜4日後に関東近辺で地震が発生することが多い。もっとも、筆者の場合は低気圧が接近しても頭痛が起きやすくなるため、判断に迷うこともある。経験上、低気圧と地震前兆が重なったときは特にひどい頭痛になるようだ。
耳鳴りの場合、セミが鳴くような音が耳の奥で常に響いている場合もあるが、それよりも突然耳が閉塞して音が聞こえづらくなり、それに続いて数秒間「ピー」または「ポー」という強い耳鳴りが生じる場合、その2日以内に地震が発生する確率が非常に高い。
このような「体感」は、やはり人間が磁気を感じ取る能力を潜在的に持っていることの証左ではないだろうか。さらに興味深いことに、筆者の超常現象の研究経験から言えるのは、霊感や超感覚がある人の多くは、電磁波にも敏感だということだ。地震を「体感」すると主張する人も多い。このことから推測すると、超感覚的知覚と磁気の知覚には何らかの関係があるのかもしれない。
脳が地震を予知する原理も解明されるか?
『日本人の脳』(大修館書店)といえば、1980年代に日本人の脳の特異性について画期的な発見をしたと一世を風靡した。過去の記事でも紹介したが、著者の角田忠信・日本医科歯科大学名誉教授によると、日本人だけは大脳左右半球の働きが異なり、虫の音などを本来は言語を司る左半球で処理しているという。さらに驚くべきことには、氏が1987年に発表した著書『脳センサー — 地震の可能性をさぐる』(丸善)では、人間の脳は地殻変動も捉えており、なんと無意識的に「地震予知」を行っているとする説まで発表した。大脳左右半球の優位脳を判別する実験で、地震の前になると実験結果に異常が生じることから、人間の脳は地殻変動を感知しているとしか考えられないというのだ。
角田氏がこの研究を公にした当時は、結果を科学的に説明できる原理はないと思われた。だが、今回の研究で人間も動物同様に「地震予知」を行っている可能性が見えてきたということだ。少なくともこれまで一部の科学者しか関心を示さなかったであろう「人間の地震予知能力」に陽が当たる時が、ついにやって来たのだ。研究のさらなる進展が待たれる。
参考:「eNeuro」「ScienceDaily」『地震の前、なぜ動物は騒ぐのか』(日本放送出版協会)、ほか