「決まらないと教室に行けません」体育館に軟禁…“PTA免除の儀式”に泣き出す母親も

2025年4月18日(金)21時15分 All About

PTAの経験談について保護者にアンケートを取った結果、PTAには“理不尽な慣習”がいろいろあることが分かりました。ここでは、『さよなら、理不尽PTA!』(大塚玲子 著)から抜粋し、PTAでよく見られる摩訶不思議な「役員決め」を取り上げます。

PTAには“理不尽な慣習”があります。PTAの経験談について保護者にアンケートを取ったところ、次のような「役員決め」のエピソードが挙がりました。
※本記事は『さよなら、理不尽PTA!』(大塚玲子 著)を一部抜粋したものです。
「入学式の後に体育館に軟禁状態でクラス役員決め。「決まらないとお子さんの教室に行けませんよ!」と言われた。(コアラさん)」
「夫婦とも残業休出アリのフルタイム正社員。本当に無理なのに「共働きは、できない理由にならない」と言われた。(ぷにさん)」
「委員に選ばれたが「下の子が小さいのでできない」と話すと、自分で代わりを見つけるよう言われ、結局見つけられず、やらざるを得なくなった。(冬子さん)」
「シングルマザーで仕事が忙しく学校行事にも出られないが、一部の保護者から怒った口調で「係はみんな1度はやるんです!」と突然話しかけられた。(新しい下水道さん)」
「転入したてのお母さんが役に当たって泣いてしまい、「代わりにやる」と手を挙げたが「あなたはもう何度もやってるから」と他の人たちに止められた。(Nさん)」

沈黙のクラス役員決め

PTAが嫌われる最大の要因、それは「活動を強制すること」でしょう。強制の対象はなぜか母親のみ。「自分も我慢してやったんだから、他の人もやらないのはズルい」という怨念から生じる強制力は、ある種、呪いのようです。多くのPTAでは、活動の強制があることも知らされないまま、加入を強制されるという状況が続いています。
活動強制が一番目立つのは、入学式の後や、4月の保護者会の後に行われる「クラス役員決め」(委員決め)のときです。多くのPTAには「6年間に必ず1度(か2度)は委員をやる」「各クラス(または各学年・各地区)から必ず○人の委員を出す」などの謎ルールがあるため、長い沈黙が続いた末、じゃんけんやクジ引きで役を決めたり、休んだ人に役を押し付けたりすることになりがちです。
なかには役員を「できない理由」をみんなの前で言わせ、他の保護者たちがその理由を認めるか否かを挙手で決めたり(「免除の儀式」と呼ばれることも)、病気の人に医者の診断書を提出させたりするPTAもあり、泣く人が出ることも珍しくありません。保護者同士のつながりをつくるどころか、関係を悪化させている面も少なからずあるのです。
また、毎年全員が何らかの役につく「一人一役」のルールを採用しているPTAでは、全員に役が行き渡るよう、必要以上に「仕事」をつくり出していることもあります。
PTA全体の取りまとめ役、本部役員を決めるときや、委員長(部長)を選ぶときも、クラス役員決めと同様、またはもっとシビアな状況になりがちです。
もちろん、こんなのは間違ったことです。PTA活動は任意ですから、無理をして役員や委員をやる必要もなければ、「できない理由」を人に言う必要も、本当はありません。でも保護者たち、特に母親たちは活動に参加しないと他の保護者から陰口を叩かれることを恐れ、自ら活動強制に従い、且つ他の人たちに活動を強制し続けてきました。
活動の現場でも、強制は起きます。委員長さんが「必ずこの日に来てください」というタイプの人だと、ヒラの委員は従わざるを得ません。「未就学児を連れてきてはいけない」と言われ、小さい子を家に留守番させて参加するようなケースも見られます。

活動は強制するのに本部役員の「立候補」は冷遇の怪

現状、本部役員のなり手(引き受け手)が出ずに困っているPTAのほうが 多いので、あまり問題視されていませんが、立候補を受け付けないPTAや、 立候補が出ても現・役員さんや管理職の先生の判断で排除してしまうケースは、実はよくあります。
「なり手がいない」と言いながら立候補を冷遇するのはおかしな話です。役員になるのを強制するのも、逆に立候補を排除するのも、どちらもつまり、会員の意思を尊重していません。
役員さんが「自分たちと近い考えの人と活動したい、そうじゃない人はお断りしたい」と思うのもわかるのですが、断られる側を想像したら、どうでしょうか。筆者も経験がありますが、フェアではありません。
よく役員さんや管理職の先生は「立候補する人は危険」と真顔で言いますが、聞くたびに複雑な気持ちになります(それ私……)。「立候補すれば誰でもOK」とまではいかなくても、選挙なり、推薦を集めることを条件にするなり、もう少し民主的な選出方法があるのではないでしょうか。

PTAを「やめたい」「変えたい」——そう思っている方へ

拙著『さよなら、理不尽PTA!』は、「PTA改革の手引き」となることを目指して書いたものです。
「PTA改革」とは、PTAの仕組みを、泣く人が出ないように変えること。つまり、加入から会費徴収、活動まで、強制をやめて任意にすることです。本質的には「会員の意思を尊重した運営にすること」だと、私は思っています。
是非、この本を参考にしてもらえたら幸いです。
大塚 玲子 プロフィール
ノンフィクションライター。主なテーマは「PTAなど保護者と学校の関係」と「いろんな形の家族」。著書は『さよなら、理不尽PTA!』『ルポ 定形外家族』『PTAをけっこうラクにたのしくする本』『オトナ婚です、わたしたち』『PTAでもPTAでなくてもいいんだけど、保護者と学校がこれから何をしたらいいか考えた』ほか。ひとり親。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。
(文:大塚 玲子)

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