聖地と化した人気店、話題の「北朝鮮が見えるスタバ」も……いま韓国のスターバックスが面白い理由

2025年4月18日(金)10時35分 All About

特色ある店舗が多く、店舗数でも日本を抜いた韓国のスターバックス。日本人客が大半を占める店舗もあるほど、日本人旅行者に人気のスポットとして知られる。

世界中で展開するコーヒーチェーン大手「スターバックス」は韓国にも店舗が多くあり、特に近年その進化ぶりが目覚ましい。店舗数はすでに日本を上回り、ブランドや映画などとコラボレーションしたドリンクやフード、グッズなどの販売も盛んで、特徴的な店舗も韓国全土で増えている。
そのスターバックスは、日本と韓国で比べると、さまざまな点で違いがある。そのため、SNSなどで「ソウルで行くべきスタバ○選」と紹介されることも多く、実際に店舗を訪れると日本人客が大半ということも少なくない。

日本の3年遅れで進出、今も営業中の1号店は日本人客多め

実は、韓国におけるスターバックスの店舗数は、日本(1917店舗、2025年3月末現在)よりも多い。韓国・聯合ニュースによると、韓国のスターバックス店舗数は2000店を超え(2025年1月30日時点)、アメリカ、中国に次いで世界3位に浮上。ちなみに日本と比べ、韓国の国土は4分の1ほど、人口が半分以下である。
日本にスターバックスが初進出したのは1996年8月の銀座松屋通り店で、韓国は日本から遅れること約3年後の1999年7月だった。
韓国1号店は、ソウルの「梨大(イデ)R店」で、開業当時に使われていた陶板ロゴや手書きの黒板メニューなどが今もあるほか、タンブラーに自分の名前などを刻印できるサービス、韓国限定「ピョルタバンブレンド」の豆でドリップコーヒーが提供される。そのためか、店内の大半が日本人客で、特に刻印サービスには行列ができることも。
また、ソウルの東大門(トンデムン)近くに2024年9月にオープンした「奨忠(チャンチュン)ラウンジR店」は、1960年に建てられた邸宅をリノベーションした店舗。暖炉やガレージ、広い庭もあるなど、まるで韓国ドラマに出てきそうな雰囲気で過ごせる。筆者が平日の朝9時過ぎに訪れると、まだ空席はあるものの客の9割以上が日本人客で驚いた。しかも、3フロアある座席数の多い店舗にもかかわらず、休日は「満席だった」という人もいるほど。レジには日本語が話せる韓国人スタッフもいた。

韓国のスタバは特徴のある店舗が特に楽しい

韓国国内には他にも、特徴的な店舗がいくつかある。
ソウルでは、市場にある劇場跡をリノベーションした「京東(キョンドン)1960店」、店内の大きなガラス窓越しや屋上からソウルで一番高い山を望む「ザ・北漢山(プッカンサン)店」のほか、BTS「Butter」の撮影地としてファンの聖地となった漢江(ハンガン)の「ソウル・ウェーブ・アート・センター店」、明洞(ミョンドン)や南大門(ナンデムン)市場に近い「ピョルタバン店」など。ちなみに、「ピョルタバン」は、スターバックスを象徴する「ピョル」(星)に韓国の伝統的なお茶を楽しむ空間「タバン」(茶房)を組み合わせた言葉。韓国人がスターバックス・コリアを呼ぶ際の愛称だ。
また韓国第2の都市、釜山(プサン)にある「海雲台(ヘウンデ)X THE SKY店」は“世界一高い場所にあるスタバ”として知られる。高さ411.6mの100階建ての展望台「BUSAN X the SKY」の99階に店舗があり、ドリンク片手に絶景が楽しめる。韓国南部の別の都市・大邱(テグ)にある「大邱鐘路(テグ・チョンノ)古宅店」は1919年に建てられた韓屋(伝統的な木造建築様式の家屋)の店舗で、ここも日本人に人気が高い。

話題の「北朝鮮が見えるスタバ」に日本人客が少ない理由

韓国のスターバックスで最も話題になっているのが、ソウルの北西部に位置する「愛妓峰(エギボン)生態公園店」だ。北朝鮮を眺めることができるスタバとして、2024年11月末のオープン以来、日本人YouTuberらが早速訪れて動画配信している。ところが、他のソウル中心部にある店舗ほど現地で日本人を見かけることは少ない。その理由は、アクセスの難しさだ。
2025年1月上旬に現地を訪れた筆者も、ソウル中心部から片道2時間半ほどかかった。地下鉄の最寄り駅から行きはタクシーを利用し、帰りはタクシーが来ないため現地の韓国人に教えてもらったバス停まで約2km歩き、たまたま来た路線バスでソウルに戻ることができた。
しかも、この店舗は韓国海兵隊が管理する公園内にあるため入場チケットが必要。公園の公式Webサイトで予約して決済できるが、韓国の住所や電話番号、さらに韓国発行のクレジットカードも必要なため、外国人旅行者にとってはハードルが高い。
この店舗からは北朝鮮の領土を漢江越しに見渡すことができる。実際、無料の双眼鏡をのぞくと畑の周りを歩く人や自転車に乗る人らもはっきり見えた。平日にもかかわらず、店内は韓国人でずっと満席だった。

アジアの他国でも特徴ある店舗が続々とオープン

スターバックス・コリアは2025年1月、“必ず訪れたい目的地”として「60 STARBUCKS STORES」を発行した。韓国全土から選ばれた60店舗が紹介されている。先に紹介した店舗はほぼ含まれる他、野球場にあるリザーブ店、目の前のビーチや夕日が美しい店、ロボットが接客する店、仁川(インチョン)空港の第1ターミナル国際線出国エリアにある書店付きのスターバックスも載っている。
日本のスターバックスにも、特徴ある店舗として「リージョナル ランドマーク ストア」が、全国に30店舗ほどある。例えば、「新宿御苑店」「二子玉川公園店」「京都二寧坂ヤサカ茶屋店」「神戸北野異人館店」など。これに加え、韓国にはない「スターバックス リザーブ ロースタリー 東京」も有名だ。
ただ近年、日本においては、店舗数こそ増えているものの、郊外のドライブスルー付き店舗は外観も店内もほぼまったく同じ作りであることが多く、昔ほどの目新しさはあまりない。ドリンクやフードも、季節限定のフラペチーノはその都度話題になるものの、他国と比べて充実しているとは正直言い難い。

「海外旅行先でまで?」スタバに行く価値はあるのか

韓国だけでなく、台湾やタイなどアジアの他国にあるスターバックスも、歴史ある建物をリノベーションしたり、内装がとても豪華だったりと、店舗ごとに外観から特徴がはっきり見られることが近年増えている。また、パンやスープなどフードの種類が多彩で、グッズも折り畳み傘やペット用の食器まであることも。売れ残った限定タンブラーなどを割引セールでワゴン販売する国もある。
日本では、スターバックスというブランド、丁寧な接客などが重視される一方、アジアの他国では商魂たくましいマーケティング戦略が利用客の側からも垣間見える。
「海外旅行先でまでスターバックスなんて」と思うかもしれない。しかし、スターバックスが好きであればあるほど、利用する価値は大いにある。特に日本と異なる体験ができる韓国のスターバックスは、実際、日本人旅行者の関心度も高い。
<参考>
・「韓国のスタバ店舗数2千店突破 日本を初めて上回る=世界3位に」(聯合ニュース)
この記事の筆者:シカマ アキ
大阪市出身。関西学院大学社会学部卒業後、読売新聞の記者として約7年、さまざまな取材活動に携わる。その後、国内外で雑誌やWebなど向けに取材、執筆、撮影。主なジャンルは、旅行、飛行機・空港、お土産、グルメなど。ニコンカレッジ講師をはじめ、空港や旅行会社などでのセミナーで講演活動も行う。(文:シカマ アキ)

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