白鵬の「日本国籍取得」は批判されるべきことなのか

4月18日(木)9時42分 JBpress

2019年4月12日、大相撲川崎場所での横綱・白鵬(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

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 大相撲の横綱白鵬が日本国籍取得に向け、動き出した。モンゴル国籍からの離脱を同国政府に申請。「日本人」になるための準備を進めていることを横綱自身もメディアに対して認めた。

 これまで白鵬は日本国籍を取得しないまま、引退後も現役の四股名を名乗ることができる「一代年寄」の授与を強く希望していた。前人未到の史上最多優勝42回を誇るなど過去の功績を考えれば、大鵬北の湖貴乃花に続く史上4人目の授与に異論を唱える人はまずいまい。だが、どうしてもネックとなっていたのが外国人力士である点だった。伝統的に定められているように外国籍のままでは引退後、日本相撲協会に残れず親方になることもできない。これまで前例のない「外国人年寄」の誕生については協会側が頑なに否定していた。

 それでも引退後、白鵬は親方になることを強く望んでいただけに、日本国籍取得の道を歩み始めたのは熟慮した末の結論だったのだろう。


「モンゴル国籍離脱」のニュースでもバッシング

 法的に認められれば、近々にも帰化した白鵬が日本人横綱として土俵に立つことになる。自身が熱望する2020年・東京五輪での土俵入りも、関係者から容認されれば本当に実現することになるかもしれない。そして引退後は幕内優勝20度以上が目安とされる「一代年寄」も晴れて授与され、白鵬親方として後進の指導にあたる可能性が高くなった。

 だが、相変わらず世の中の白鵬バッシングは凄まじい。このモンゴル国籍離脱申請のニュースに関しても、ネット上では「品格のない外国人横綱が日本人になるなんて、おかしい」「あんな下劣な横綱はモンゴル人のままでいい」などといった罵詈雑言が溢れている。これらはあまりにも暴論であり、行き過ぎた意見だと痛切に感じざるを得ない。

 国籍を取得することにまで他人がとやかく言うのは明らかに誤った行為だ。当人の一身上の都合にもかかわらず、どういう状況なのかよく分かっていない見ず知らずの第三者がケチをつけるのは人権侵害にもつながりかねない。だから率直に言わせてもらえば、白鵬が日本に対して帰化申請することに異議を唱えるのは間違っていると思う。

 むやみやたらと白鵬バッシングを続けている人たちに多く共通するのは「白鵬は単に強いだけで、品格が足りない」という指摘を繰り返していることだ。そういう人たちに逆に問いたいが「品格」とは果たして何なのだろうか。そして、その「品格」とやらがないと日本人になってはいけないのだろうか——。


「三本締め」で盛り上がった観客たち

 これまで確かに白鵬は〝スタンドプレー〟と称され、世間から叩かれることが何かと多かった。それは紛れもない事実だ。最近で言えば、今年3月24日の春場所千秋楽で優勝インタビューの最後に観客とともに行った三本締めが問題視され、協会側から何らかの処分が下されることが濃厚になっている。

 とはいえ、三本締めを行ったことについて白鵬自身が「観客を盛り上げるためにやった」と釈明しているように、悪意があったわけではない。正しい三本締めのやり方を知らずに〝暴走〟してしまったことは確かに問題だが、まるで鬼の首をとったかのように「だから品格がない」「つまりは悪党横綱だ」とシュプレヒコールを唱えるのは短絡的な考え方だ。そもそも「あの場で三本締めをやるなんておかしい」と指摘している世の中の人たちが、正しいやり方を本当に知っているのだろうか。とてもそうとは思えないし、おそらく世の大半が正しい三本締めについて細かいことまで知らないと思う。現に、あの千秋楽で白鵬が三本締めを行った際、場内の観客のほとんどが大盛り上がりだったことも、それを物語っている。

 この〝三本締め問題〟以外にも、白鵬には何かと協会側から処分を受けるようなルール違反とされる行為が目立っていた。しかし、もともと外国人であるがゆえに日本人独特の真心や配慮に関しては乏しい部分も多く、それが数多くの問題発生につながっていたのは否めない。加えて白鵬には相撲界の頂点に立つ横綱という立場上、一般社会に生きる日本人以上の品格も求められている。その上「モンゴル人横綱」ということで世間からの目も必然的に厳しくなり、何かと揚げ足をとられることも少なくなかった。そういう環境下に腐心しながらも日々背負い込まなければならなかった重圧は、相当なものだったと考える。


メディアに「白鵬批判」を懇願する関係者

 つい最近、封建的体質に嫌気が差して日本相撲協会を退職したばかりの〝白鵬派〟である元協会関係者が次のように白鵬を擁護する。

「言わせてもらうが、白鵬はとても研究熱心。他の力士より日本文化への探究心も実は旺盛で『日本人以上の日本人』になることをむしろ心がけていた。自らが携わる大相撲の歴史についても、むしろ他の力士たちよりかなり勉強している。

 彼は角界を支える大横綱として『自分が引っ張らなければいけない』という考えがあるからこそ、より積極的になることで必要以上に自らの行動がクローズアップされてしまい、分かっているようで完ぺきには分かっていない相撲界及び日本人の常識からズレが生じている部分ばかりが浮き彫りになってしまっていた。そこを面白おかしくメディアから取り上げられ〝ヒール横綱〟に仕立て上げられている流れが、彼の悲劇と言える。

 少々乱暴な言い方かもしれないが、そうなるように仕向けているのが横綱審議委員会や日本相撲協会幹部の一部面々だ。何であえてそんなことをするのか? 簡単に言えば、外国出身力士が頂点に立つことが彼らにとって面白くないからだ。

 それでも白鵬は試行錯誤しながら何とかして日本人の心を身につけ、自らを育ててくれた相撲界に対して恩義には恩義で応えようとしている。『一代年寄』になろうと帰化の道を選んだのも、まさにその一環。

 とはいえ、やっぱり横審や一部の協会幹部たちは白鵬の日本国籍取得がどうしても面白くないようで、メディアコントロールをしながら横槍を入れようとする関係者もいると聞く。『〝三本締め問題〟に関して処罰が下された際には、極力大きく扱ってくれ』と各主要メディアに懇願し、白鵬の悪いイメージをさらに増長させて煽ろうとしている人間までいるらしい」

 横審や日本相撲協会側はこれまで白鵬が帰化しないことに関して再三に渡り苦言を呈していた。ところが、いざ日本国籍取得の道を選ぶことを決めると、また何だかんだと言いながら強引なイチャモンをつけようとする関係者が現れ始めたというのである。開いた口が塞がらない。

「このままでは白鵬があまりにも不びん。でも一部の協会幹部や横審のアジテーションに屈することなく身も心も日本人になって相撲道を追求する覚悟を決めたのだから立派だ。逆風にさいなまれながらも自分の夢に向かって耐え忍びながら突き進もうとする姿勢は、横綱に日本人の心がどんどん強まっている証拠。われわれ日本人は歓迎してあげなければいけないと思う」とは前出の元協会関係者の弁である。

 いずれにしても繰り返すが、白鵬の国籍取得に関してまで明確な理由も一切なく「NO」ばかりを唱える人には、もう一度冷静になって物事を考え、正しい視点も持ってもらいたい。

 日本への帰化が現実味を帯びてきた白鵬には〝和の心〟をあらためて追求してほしいし、これまでモンゴル人であったことで、どうしても感覚的にズレが生じていたところも修復していけると信じている。そしていつも文句を言うだけで具体的な改善策を講じず、あえて自らに風当たりを強めようとする一部の協会幹部や横審のメンバーたちと対峙し、旧態依然とした組織に一石を投じてくれる行動力にもぜひ期待したい。

筆者:臼北 信行

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