世界遺産じゃなくて「世間遺産」 栃木県益子町の知られざる名所
2018年4月19日(木)6時0分 Jタウンネット
栃木県益子町(ましこまち)には、「世界遺産」ならぬ「世間遺産」がある。益子町のホームページを見ると、2017年度からスタートした認定事業のようだが、いったいどんなものなのか、Jタウンネットは益子町に問い合わせてみた。
風土や風景、風習、食文化を募集
取材に応えてくれたのは、世間遺産を担当している生涯学習課の方。
「町内の身近な存在で生活にとけ込み、将来にわたり守り伝え、育成していきたい風土や風景、風習、食文化を『ましこ世間遺産』として登録し、町内外に広め、町を活性化しようと始まりました。2017年春から募集を開始し、2020年度までの取り組みを予定しています」
2018年4月1日時点で、「ましこ世間遺産」として認定されているのは20件。その一部をご紹介しよう。
まずは、装飾が見事な「新町彫刻屋台」。毎年行われる益子町の祇園祭は、この屋台の引き回しがメインイベント。屋台の歴史は古く、江戸時代後期に宇都宮市で作られたものを明治時代に新町の有志たちが購入した。20年ほど前に焼損したが自治会員の熱意により復元されたものだ。今年は7月23日から25日まで行われる。
次に、「北中八幡宮と大けやき」。八幡宮由緒書によると、治承年間(1177年から1180年)に益子城主の子孫が平家征討の後、京都石清水八幡宮に参詣した際、分霊を勧進して社殿の両側にけやきを2本植えたと伝えられている。現在、大けやきは1本しか残っていないが、推定樹齢800年といわれる大木は存在感があり、全国から巨樹好きが訪れる場所でもある。
そして、地域の子どもたちが受け継ぐ神楽も「世間遺産」に登録されている。綱神社太々神楽(つなじんじゃだいだいかぐら)は、幕末に村人たちが茨城県の小栗内外大神宮伝承の神楽を習得し伝えた。毎年、秋の例大祭などで舞を披露している。今年は、11月11日に行われる予定だ。
誰でも申請できるのか聞いてみると、「自治会や育成会といった、団体単位での申請のみ受け付けています」とのこと。これまでに地域の自治会、歴史愛好会、同士会、保存会などが申請し、認定されている。
益子町のホームページでは、世間遺産の動画が見られる。芳賀富士や真岡鐵道小貝川橋りょうなどは、ドローンで撮影されたこだわりの動画だ。ちょっぴり地味な感じはするが、一つひとつに歴史や人々の思いが詰まっていて、見ているうちにだんだん行きたくなってきた。
担当者でも知らなかった場所もあった
申請を受けた中には、担当者でも知らなかった場所もあったと言う。
「山の中の神社(竜神様)は、申請を受けて初めて知りました。私たちにとっても地域の魅力を再発見になりました」
2020年度までに55件認定登録することが目標だ。
「現在は、食文化に関する申請はまだありませんが、益子町には『ビルマ汁』など近年注目を集めつつあるご当地グルメもあります。まだ『ましこ世間遺産』にふさわしいものは、あちらこちらに眠っていると思います」
益子町では、いずれ「ましこ世間遺産」をマップにして、町をめぐる健康ウォーキングのコースづくりにも活用したいと考えている。2020年までに、どのような場所やグルメが登録されるのか、いまから楽しみだ。