【岩瀬達哉氏書評】岡口基一判事が綴る裁判所の統制と萎縮

4月20日(土)16時0分 NEWSポストセブン

『裁判官は劣化しているのか』/岡口基一・著

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【書評】『裁判官は劣化しているのか』/岡口基一・著/羽鳥書店/1800円+税

【評者】岩瀬達哉(ノンフィクション作家)


 東京高裁の岡口基一判事は、法律問題から時事問題、時には性の話題までをツイートしてきた。タブーなきつぶやきに対し、これまで東京高裁長官から二度の口頭厳重注意と、最高裁の戒告処分を受けている。


 そしていまや、国会の裁判官訴追委員会からも事情聴取を受け、裁判官弾劾裁判所へ訴追されそうな雰囲気だ。訴追となれば、裁判官の身分を奪われる可能性が高い。何が、こうまで最高裁をいきり立たせ、政治家たちも黙っていないのか。


 処分を受けてもなお、岡口判事は「内部から情報発信」をやめないどころか、対決姿勢を打ち出しているからだろう。裁判所がいかに封建的な組織であり、政治に弱く、「少数者の権利や自由を守る」ことに消極的かを、本書でも赤裸々に綴っている。


 ある若手判事補が、都心に家を建てたところ、裁判所当局に知れた途端、「まだ子供が2歳であるにもかかわらず関東から大阪へと異動」させられた。地方への異動を考慮せず、いつまでも都心にいられると思い上がっている。そんな誤解と反感を買ったようだ。


「超エリート裁判官として若い頃から要職を歴任」していても、「行政側(国、都等)を負かせ、弱い立場にある国民や都民を勝たせる判決を連発したところ、わかりやすすぎる『左遷人事』」で飛ばされる。


「みせしめ」をつくることで、誰もが国を負けさせるとヤバイとわかり、「司法の出番であるといった事件」でも「タブー視」することに。結果として、政治に好都合な環境を作り出していたのである。


 統制と委縮によって、「裁判実務の『智』」の伝承も途絶えているという。まともな判決が書けない裁判官が増え、「裁判所のパソコンの中にある、過去の判決を検索」し、「コピペ」しているのだそうだ。司法は、権力の暴走をチェックする最後の砦のはずが、裁判官の「劣化」で、三権分立の理念は幻想と化しつつある。岡口判事は、だからこそ果敢に発言するのである。


※週刊ポスト2019年4月26日号

NEWSポストセブン

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