eスポーツを通じてデジタル人材を育成 - 「NTTe-Sports高等学院」、第1期生の入学式を開催
2025年4月22日(火)17時0分 マイナビニュース
NTTe-Sportsは、eスポーツを通して社会で活躍する人材を育てる実践型通信制サポート校「NTTe-Sports高等学院」を2025年4月より開校。その第1期生の入学式が2025年4月20日に開催された。
NTT東日本グループは、「地域循環型社会の共創」というパーパスのもと、地域のミライを支える価値創造事業を中心とした事業構造への転換を図り、地域社会とともに、夢や希望を感じられる持続可能な循環型社会の共創をめざしている。
こうした取り組みを進める中、NTTe-Sportsは「地域の未来を担う人材づくり」に焦点を当てた事業を推進。eスポーツをきっかけに学生たちがひとつになる姿や、デジタルスキルを楽しく吸収している光景から、教育分野におけるeスポーツの可能性や価値を再認識。このような背景を踏まえて、これまでの支援からより踏み込んだ教育事業として、「NTTe-Sports高等学院」を2025年4月に開校した。
○■第1期生の入学式を開催
NTTe-Sports高等学院の第1期生は19名(当日2名欠席)。入学許可宣言に続いて、新入生代表の渡邉朗勝さんによる「新入生誓いの言葉」が述べられた。
「ゲームへの情熱が、eスポーツという舞台で、競い合い、高め合い、社会に貢献する力へと進化しています」という渡邉さん。NTTe-Sports高等学院において、戦術やスキルを磨くだけでなく、映像編集や映像配信、生成AIの活用など、デジタル社会を動かす技術と創造力を身につけ、「デジタル時代のリーダーとして、多様な価値観を尊重しながら、課題解決にも挑む力を身につけます」との抱負を語り、「勝利の喜びも敗北も悔しさもすべてを学びに変え、フェアプレイとリスペクトを胸に、歩み続けること」を誓う。また、「eスポーツを通じて、デジタル人材として、社会で活躍し、新しい文化と価値を創造していきます」と宣言した。
続いて、「学院長 式辞」として、NTTe-Sports高等学院長の原田元晴氏が登壇。昨年7月に開校をリリースした際、校舎もなく、カリキュラムも作成中であったにも関わらず、「我々メンバーの説明、言葉を信じて、決めていただき本当に感謝いたします」とあらためて列席する保護者に感謝の意を伝える。
「自画自賛になりますが」と前置きしつつ、「私も受けたくなるようなすばらしいカリキュラム、そして、魅力ある先生、スタッフが揃いました」という原田学院長は「これからも期待に応えられるように頑張っていく」と力を込める。
そして、「これをやりたい、こういう風になりたいという気持ち、思いを大切にしてください」と新入生に伝える原田学院長は、「その思いを実現するために、一歩踏み出しましょう。動かないと何も始まらない」と語りかける。さらに、「動き出してもすべては上手くいかず、悩んだり失敗したりのほうが多い」としつつも、「この学校は、みんなのチャレンジを助けるための学校です。これから一緒にチャレンジし、頑張っていきましょう」と締めくくった。
NTTe-Sports高等学院と連携する中央国際高等学校長の大屋雅由氏は、ビデオメッセージにて、「現代はグローバル化が進み、AIが社会を変えようとしています。今後ますますそうした流れは加速していくことでしょう」と現状を伝え、「eスポーツを学ぼうとする皆さんには、そうした社会の進歩に寄与する人材として、活躍が期待されます」との言葉を贈る。
そして、「江戸時代にもっとも多くの人が読んだ本はどんな本だと思いますか」と問いかけ、日本独自の数学である和算について書かれた「塵劫記」について言及する。江戸時代の人が和算に夢中だった理由について、「受験や出世のためではなく、考えることが楽しかったから」という大屋校長は、明治になり、近代化に不可欠な西洋の数学がスムーズに導入できたのは、塵劫記に学んだ多くの人々の力であり、新入生に対しても「eスポーツはもちろんですが、考えることが楽しくなる学び、面白い学びに出会い、一人ひとりの個性をより開花してくれること」に期待を寄せた。
続く「来賓祝辞」では、まず千葉市長の神谷俊一氏が登壇。eスポーツを通じて段階的にデジタルスキルを身に着けていける独自のプログラム、高性能のゲーミングPCや大型LEDモニター、音響・照明設備などの充実した環境、さらに、中央高等学院との連携による学習支援体制などを取り上げ、「千葉市中心部の千葉駅近くに、このような素晴らしい学びの場を開校いただきまして、本当に感謝を申し上げます」と感謝の言葉を述べる。
そして、新入生に対しても、「こういう環境を、ご自身のものとして存分に活かしていただき、それぞれの目標に向かって、着実に歩みを進めていただければ」との思いを告げる。千葉市では、テクノロジーを活用して、市民の生活の質の向上を図り、持続的なまちづくりを進めていくための「千葉市スマートシティ推進ビジョン」を策定しているが、「NTTe-Sports高等学院での学びを通じて、将来こうした取り組みをリードしていただき、そしてこの千葉市から未来を切り開く、人材となっていただくことを心から願っています」と大きな期待をかけた。
続いて、千葉興業銀行 取締役会長の青柳俊一氏が登壇。「明るく豊かな社会への貢献」を重点項目としている千葉興業銀行は、「地域社会の発展に寄与すること」を使命としており、その中でも、特に地域の教育機関との連携を深め、地域の次世代を担う若者たちの育成に力を注いできているという。
さらに今後は、「デジタルを通じた金融経済教育も大きなテーマ」であり、「NTTe-Sports高等学院の教育理念も、私どもの使命と深く共鳴している」という青柳会長。「eスポーツを通じて、社会が求めるDX推進の担い手として必要とされるデジタルスキルを育成し、様々な分野で活躍できる人材の輩出を目指していることは、地域社会の発展に大きく貢献することが期待される」と続ける。
新入生に対しては、「これからの学びを通して、デジタル社会で活躍できる人材として成長し、ひいては地域社会や産業界に貢献できること」を期待。「NTTe-Sports高等学院での学びは、単なる知識の習得にとどまらず、チームプレイや論理的思考、問題解決力など、社会で必要とされるスキルを身につける絶好の機会」との見解を示し、「これらのスキルは、皆さんが将来、地域社会や産業界で活躍するための大きな武器になる」との言葉を贈った。
NTT東日本 代表取締役副社長の熊谷敏昌氏は、少子高齢化に伴う労働力不足への対応や市場競争力の向上を目的として、DXの推進が国や企業を中心に進められている現状において、「国際的に見ると、日本ではデジタル人材が著しく不足している」との危惧を示し、「日本においてデジタル人材の育成は極めて重要な喫緊の課題」だと指摘する。
こういった背景において、「NTTe-Sports高等学院は、高等教育の段階から社会で通用するデジタルスキルの育成に力を入れている数少ない学校」という熊谷副社長は、「NTT東日本グループでは、高校3年時にはグループ会社にて、生徒の皆さんを実際に受け入れ、学校で身につけたデジタルスキルがどのように社会で役立つのかを実感、検証していただけるよう努めてまいります」と約束。「これにより、机上の学びを社会で活躍できる実践的なスキルへと進化させてまいりたい」との考えを示した。
そして、熊谷副社長は「努力は実力を生み、実力は自信を生む。自信は幸運を呼び、幸運は勝利を掴む」との言葉を贈り、「NTTe-Sports高等学院での学びは、皆さんが未来を切り開くための大きな力になるはずです。仲間と協力しながら、ぜひ楽しんで、デジタルスキルを磨いていってください」と締めくくった。
来賓による挨拶の後は、あらためて来賓者を紹介し、続いてNTTe-Sports高等学院の職員を紹介。入学式の最後には、新しい校舎の開校と、新入生の今後の学校生活の充実を祈念したテープカットが実施された。
○■NTTe-Sports高等学院の概要
生徒が「通いやすい」「通いたくなる」環境づくりとして、千葉駅徒歩5分のネクストサイト千葉ビル内に校舎を構える「NTTe-Sports高等学院」では、eスポーツをきっかけにデジタルスキルや社会体験など将来役立つ多様な学びを提供。eスポーツ・デジタルスキル向上に打ち込め、仲間との友情を育む校舎は、大型LEDモニターや、1人1台のゲーミングPCなど充実した学習環境が用意されている。
カリキュラムについては、特に1年生は「eスポーツのスキルアップ」を中心とした時間割が設定されている。そこから広がった興味・関心をもとに、eスポーツと関連性の高いデジタルスキル講座として、eスポーツに欠かせないICT技術やPCスキルの基礎、最新技術動向、Unreal Engineによるゲーム開発、動画編集などの授業を予定。さらに、eスポーツに連動するビジネス講座も実施される。なお、2年生・3年生においては、より進路を意識した時間割に変更されるという。
NTTe-Sports高等学院では、eスポーツ関連の授業を月・水・金に実施し、火・木は「一般学習」を、同じくネクストサイト千葉ビル内に校舎を構える「中央高等学院」にて受講する。「中央高等学院」は「中央国際高等学校」の指定サポート校であり、中央国際高等学校の認定によって高校卒業資格を得ることが可能。中央高等学院所属の先生がNTTe-Sports高等学院の生徒へ勉学指導を行うことで、大学受験に必要な学力向上をサポートする。
また、NTTe-Sports高等学院においても、大学進学方法のひとつである「総合型選抜(旧AO入試)」において、大学側が提示する「求める学生像」にあわせた経験やスキル習得を生徒ごとにカスタマイズして提供。NTTe-Sportsが展開するイベントやPR業務、NTTアグリテクノロジーによるICTを活用した最先端農業、NTTe-Drone Technologyが手掛けるドローンの活用など、NTT東日本グループのアセットを活用した探究的かつ実践的な経験を得ることができるのも大きな特徴となっている。
さらに、社会で役立つスキルを授業で習得できるため、進路はeスポーツプロに限らず、幅広い道を目指すことが可能。プロゲーマー以外でもイベント運営や配信スキルによってeスポーツ業界で活躍することができる一方で、動画編集やWebデザインスキルなどのデジタルスキルを活かすことにより、まったく異なる業界で働くこともできる。さらに、NTT東日本グループの求人対象校への認定も予定。
NTTe-Sports高等学院は、eスポーツを高校生活の中心に据えつつ、社会で必要なスキルを提供し、地域で活躍できる人材を育成を図ることで、持続的な地域の発展に貢献していくとしており、今後の展開にも注目したい。