社内恋愛「セクハラ」にならないアプローチは?専門家に聞く距離の縮め方

2025年4月22日(火)11時0分 大手小町(読売新聞)

職場でのセクハラに厳しい目が注がれる今の時代は、思いを寄せる相手にアプローチしたくても、慎重にならざるを得ないのかもしれません。読売新聞が運営するユーザー投稿サイト「発言小町」には、「職場の10歳年下女性が好みのタイプで食事に誘いたいが、なかなか行動に移せない」という男性から相談が寄せられています。「社内恋愛」と「セクハラ」の違いとは何か、ハラスメント防止コンサルタントの石川弘子さんに聞きました。

写真はイメージです

トピ主は、36歳の独身男性「DDD」さん。1年ほど前、同じ部に異動してきた、10歳年下の女性社員に好意を抱いています。

チームが異なるため、仕事での関わりは「ほとんどない」とのこと。すれ違うと、旅行や好きなキャラクターなどについて、たまに会話をする程度だといいます。単なる顔見知りから抜け出したいものの、彼女は部の飲み会などに参加せず、チャンスがありません。トピ主は「食事に誘いたい」と願いつつ、年が離れていることがネックとなり、ためらっています。

「女性目線だと、関係の薄い職場の年上男性から食事に誘われたら迷惑でしょうか?」と、発言小町に意見を求めました。

このトピには90件以上のレス(反響)がありました。

トピ主さんの背中を押すのは、「nene」さん。「男性からのストレートな申し出を受けて、心を動かされる女性は多いと思いますよ。私もそうでした」と励まします。ただ、「もし断られたら、きれいに忘れることですね」と釘を刺すことも忘れません。「社内恋愛はアリ」という「ホームランの星の下」さんも、「気になる相手にアプローチするのはダメではないでしょう」。一方で、セクハラやパワハラだと訴えられる可能性もあり、「慎重に進める必要があるのでは」とコメントしました。

これに対し、「やめておきましょう」と断言するのは、「ゆかたん」さんです。トピ主さんがつづった、「彼女は同期の飲み会には参加している」という情報に注目し、「若い人同士の飲み会には顔を出すけれど、そうでなければ現れない。完全に脈なし」とした上で「ハラスメントで訴えられるかもしれません」と警告します。「わーまま」さんも、「社内での世間話は100%リップサービス」と“勘違い”をいさめ、「プライベートな領域に誘うのはダメです。ハラスメントで訴えられますよ」と厳しく意見しました。

トピ主さんが女性を食事に誘うのは、社内恋愛の範囲内なのか、それともセクハラになる可能性があるのでしょうか?

職場でセクハラとみなされるケースは、男女雇用機会均等法で、「労働者の意に反する性的な言動によって、その労働者に直接的な不利益が生じる場合」と、「その労働者の就労環境が害される場合」とされています。

石川さんによると、「『食事やデートへの執拗(しつよう)な誘い』は、性的な言動」に当たります。重要なのは「執拗な」の部分。「一度食事に誘っただけであれば、セクハラにはなりにくいでしょう。セクハラに当たるか否かは、『相手の意に反しているか』が大きなポイントになります」と指摘します。

食事に誘われても、行きたくないなら「ごめんなさい」と断わればいいのでは、という見方も一部にはあるでしょう。しかし、職場では、その一言が言えないケースがあるといいます。「10歳年上のトピ主さんが、もし役職者であれば、誘われた女性は『本当は嫌だけど、断ることで関係が悪化するのは良くない』と考えて、本音を伝えられない可能性があります」。そのため、今のように関係性が薄いままいきなり2人きりの食事に誘うのは、「トピ主さんにとってリスクがある」と見ます。

石川さんによると、セクハラの加害者の多くは、「嫌がられていると思わなかった」「話しかけたらニコニコして聞いてくれていた」などと主張するそう。現実には、「被害者は立場上『嫌です』とは言えないので、そうせざるを得なかったのです。実際の裁判でも、『相手がニコニコしていたらセクハラに当たらない』とはなりません。断れなかった被害者の気持ちのほうが認められるのです」

とはいえ、社内恋愛を諦める必要はありません。「まず、女性から信頼を得ることから始めるのがいい」と石川さん。「休憩時間に雑談をする、旅行のお土産を女性がいるチームにも配る、他の人も交えたグループの飲み会に誘う」など、具体的なアプローチ方法を挙げ、「少しずつ距離を詰めて、まずは自分のことを理解してもらいましょう」とアドバイスします。

石川さんは、「セクハラになるか否かは、自分の言動に対して相手がどう思うのかが重要になる」と改めて強調。「人の本心は、本人以外は誰にもわかりません。相手がどう思っているかを決めつけず、断れる選択肢も用意してあげながらアプローチすること。そうすれば、大きなトラブルにはならないはずです」と話していました。

(読売新聞メディア局 長縄由実)

【紹介したトピ】▽職場の10歳年下の女性を食事に誘いたいです。

プロフィル石川 弘子(いしかわ・ひろこ)青山学院大学経済学部経済学科卒業。社会保険労務士資格を取得し、2016年に石川社労士事務所(現・フェリタス社会保険労務士法人)を開業、代表社員に就任。労働・社会保険手続き代行などを行う他、様々な企業から労務相談を受けている。著書に、「あなたの隣のモンスター社員」(文春新書)など。

大手小町(読売新聞)

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