埼玉県で1番奥地にある町中華を食べてみた【秩父地元グルメ探訪記3】
2025年4月22日(火)12時0分 食楽web
食楽web
●池袋から特急で約80分。近年観光地としての知名度が上昇中の埼玉県秩父地域。古くから栄え、山に囲まれたこの地域は独自の食文化が色濃く残る街。そんな秩父の地元グルメを紹介するシリーズです。
秩父地域は秩父市を中心に横瀬町、皆野町、小鹿野町、長瀞町の1市4町を合わせた文化圏が広がっています。
そんな秩父地域の町の一つである小鹿野町は古くから養蚕などで栄えた町です。現在に至るまで町に鉄道は無く、自然豊かで古い街並みが残されていて、小鹿野歌舞伎などの伝統芸能が残り、山を越えると向こう側は群馬県、といった地域です。
今回は小鹿野町にある町中華の名店「春雷」に行ってきました。電車が無いので都心部から行くとすると中々難易度は高く、ある意味で埼玉県で1番奥地にある町中華と言えると思います。
とは言え小鹿野町の中心からほど近いところにあるので山奥の鬱蒼とした森の中にポツンとある、といったロケーションではありません。普通に町の中です。
ここがまた、美味いのです。
何を食べても美味しい親子で営む町中華
歴史を感じつつも可愛い店構え。駐車場もあります
埼玉県で1番奥地といってもここは小鹿野の町ナカ。地元客がひっきりなしに来店し、店内は活気があります。
店主の丸山喜一さん、そして息子の健太さんは揃いの黒いユニフォームがカッコいい。そしてホールにはマスターの妻・映美(てるみ)さん。
昔ながらの中華料理屋さんでありがちな頑固親父で床ベトベトみたいなことは一切無く、家庭的で清潔な店内、カウンター、テーブル席、そして奥には大人数の宴会も可能な座敷席が広がっています。
家族で来たのでテーブル席に座り、後の運転をノンアルビールの妻に任せ(決して一方的な訳ではなく日頃から諸々の調整済み)、私は満を持して瓶ビールをチョイスします。娘はコーラ。
そして今日ばかりは食べたいものを食べたいだけ注文してささやかな我が家の宴がスタートです。
マスターの喜一さんが都内で修行後にお店を始め、4月で創業40年を迎えた春雷。今や小鹿野町の飲食店組合をまとめる立場になっているマスター。そして同じく都内で本格的に修行をした健太さんが10数年前に戻ってきて厨房内をウデ利き料理人2人で捌いているのですが、この親子の連携がまた素晴らしいのです。
まとめて一気に注文してしまったのですがほどなくして次々に料理がやってきます。
生レバーの唐揚げ!?
お酒のアテにもご飯のお供にもバッチリな「生レバー唐揚げ」。必ず注文します
まずはビールのアテに頼んだのが「生レバー唐揚げ」と「砂肝キュウリ」。
生レバー?唐揚げ?と思うでしょう。ホルモン文化が醸成された秩父においてもコレは!と唸る新鮮なレバーがしっとりジューシーな唐揚げになっていてこの手が合ったか!と驚く美味しさなのです。食べるほどにビールが進みます。
「砂肝キュウリ」もさっぱりしていて美味しいです。
仕込むのに数日かかるという砂肝キュウリ。これもお酒に最高
お願いして厨房の様子を写真に撮らせていただきました。マスターに1番の得意料理は?と聞くと
「広東料理が得意なんだけど炒飯はやっぱ好きだねぇ」
とのこと。熟練の素早い手捌きであっという間に出来上がった炒飯はもはや芸術で、まさに王道。ツヤツヤしっとりの炒飯は小学生の娘がほとんど1人で食べてしまいました。
手仕込みの餃子も大ぶりで食べ応え抜群です。
中華といえば炒飯。シンプルながらお店の特徴が全部出ますよね
美し過ぎて食べるのがもったいない、と一瞬思っても食べ始めたら止まらないやつ
皮から手作りで大ぶりな餃子。これもまた王道
次々とやってくる料理たち。分けるのを見越して取り皿も用意してくれました
お店の看板メニュー「トツゲキラーメン」は餃子の餡を卵でとじた他には中々ないラーメンです。
見た目のインパクトとは裏腹に塩ベースのスープと相まって優しくスルスルといけちゃうお味。これに卓上のラー油が相性抜群でちょっと足すとパンチが効いて段々と箸が止まらなくなってきます。
餃子の餡が具になったラーメンにラー油を入れるのだから合わない訳がない
全体的に町中華で有りがちな油っぽさが抑えられているような気がします。
「あー、他のお客さんにも言われたことがあるね」
とのことですが、胃もたれ感を感じることが無く、ガツガツと食べ進めてしまいます。
そして登場したのが、待っていました「小籠包」です。
点心系の料理は息子の健太さんが得意としています。有名店にも負けないような本格的な小籠包は、出来立てをレンゲにとって黒酢をかけて頬張り、中から飛び出すスープを「アチッアチッ」と言いながらハフハフ食べるのが正しいスタイルです。
口の中の火傷に充分注意して、それでも熱々をいきたい
点心の他にも四川麻婆などを得意としながら、
「あ、でも自分も炒飯が得意ですよ」
と笑う健太さん。
親子であり同僚でありライバルである。そんな緊張感がこの厨房にはちゃんとあるような気がします。
動きに連携がとれていて無駄がないから自然と絵になる2人
休日は山歩きが趣味の健太さん
「春雷」というちょっと変わった店名の由来を聞きました。
この名は四川料理の「春雷驚龍(しゅんらいきょうりゅう)」から。
おこげ料理に餡をかけるとバチバチ、ジュジュジュー!と音が鳴り、その迫力から名付けられた料理だそうです。かの劉備が雷に驚いたという三国志の逸話にも通じるとか。
お店を開く時にテレビでこの料理を知り、その時期が春だったこともあってコレだ!と直感したマスターが命名したとのこと。
長年その料理自体はメニューに無かったのですが、現在は息子の健太さんが作る「海鮮おこげ」としていただくことが出来ます。
目の前でジュジュー!とやってくれるそうで、あぁそれは次回、絶対注文しよう!と心に誓いました。
作るのが本気なら食べるのも本気
何を食べても間違いなく美味しくて、ちょっと頼みすぎたかな?と思っても心配なし。食欲が勝ります。
家族3人で結局残すことなく完食してしまいました。
豊富なメニューはまだまだ食べたいものが沢山あって次回絶対コレ食べようという目星を付けてしまいます。
甥っ子が書いたという書き初めのおすすめメニュー
各種定食はもちろん、地元特産の漬物・しゃくし菜を使った「おがの餃子」や、「ホルモン炒め」、「わらじカツ丼」まで中華の枠を超えたラインナップ。
ランチから夕食、地元の宴会や地域のお祭の出店までこなして胃袋を満たし続ける春雷、まだ食べてないお気に入りを見つけるためにすぐまた来ようと思います。ごちそうさまでした。
料理で元気を与え続ける春雷ファミリー
●SHOP INFO
春雷
住:埼玉県秩父郡小鹿野町小鹿野814−1
tel:0494-75-2280
営:昼 11:00〜14:00
夜 17:00〜22:00
休:毎週水曜(祝日の場合はその翌日)と第三火曜
その他地域行事等で臨時休業あり
駐:有
●著者プロフィール
水野晋太郎
1979年生まれ岡山出身。酒好きの歌うたい。2019年に妻の地元・秩父に移住。遠回りを楽しんでいるうちに元々の道が分からなくなりがちな人生。知り合ってすぐ昔から知っていた気にさせるのが得意。
(水野晋太郎 編集★ヨネダ商店)