古代コンピュータ「アンティキティラ島の機械」にまつわる11の事実!

2023年4月21日(金)11時5分 tocana

 古代ギリシア時代のアナログコンピュータといわれているのが「アンティキティラ島の機械」だ。この2000年前の驚異のガジェットについて現状でわかっている11の事実があるという——。


アンティキティラ島の機械

 1901年にギリシャのアンティキティラ島の海岸沖で難破船の残骸から発見された「アンティキティラ島の機械(Antikythera Mechanism)」は、古代ギリシアの手動式天球儀(太陽系の時計仕掛けモデル)で、天体の位置を予測し、発生の何十年も前に日食を予測するために使われていた。


 時代を考慮すれば驚異的なまでに精巧で複雑なメカニズムで動作するアンティキティラ島の機械は高さ34センチ、幅18センチ、奥行き9センチほどの木箱の筐体に納められている。


 作られたのは紀元前70〜60年頃とされているが、紀元前200年以上前のものだとする見解もあるようだ。


 まるで時代を超越しているかのような驚異のギミックが施されたアンティキティラ島の機械なのだが、いわゆる“オーパーツ”※ではない。「Interesting Engineering」の記事によればアンティキティラ島の機械について現在でわかっている11の事実があるということだ。


※ オーパーツとは英語の「out-of-place artifacts」を略して「OOPARTS」とした語である。直訳すれば場違いな工芸品である。主に出土品などが、考古学上その成立や製造法などが不明とされたり、当時の文明の加工技術や知見では製造が困難あるいは不可能に見える場合にオーパーツと見なされることが多い。しかし、学問上の研究対象になることは少なく、多くのオーパーツやそれにまつわる超古代文明の存在や古代の地球に宇宙人が飛来し技術をもたらしたとする「古代宇宙飛行士説」はオカルトとみなされる。代表的なオーパーツは、アステカ遺跡で発掘されたとされる「水晶髑髏」、バグダードで製造されたとされる土器「バグダッド電池」、未知の文字で書かれた古文書「ヴォイニッチ手稿」、工芸品以外ではペルーの「ナスカの地上絵」、イギリスの「ストーンヘンジ」などがある。


1. アナログコンピュータである


 アンティキティラ島の機械は、アナログコンピュータと考えることができる。


 この紀元前のデバイスは宇宙の地球中心の見方に基づく一種の時計として使用されていて、天体時間を表示するための太陽、月、および肉眼で見える5つの惑星(水星、金星、火星、木星、土星)のそれぞれに別々の針が備わっている。


 回転するボールが月の満ち欠けを示し、背面の文字盤はカレンダーとして機能し、月食と日食のタイミングを示す。碑文には特定の日付にどの星が昇り沈むかが説明されている。まさに小型のアナログコンピュータなのである。


2. ローマ時代の難破船から発見された


 アンティキティラ島の機械はギリシャ本土とクレタ島の間に位置するアンティキティラ島近くの沈没したローマ時代の難破船で発見された。


 この古代の難破船は保存状態を良好に保った古代遺物の宝庫であったのだ。


3. 最初の発見者は命がけであった


 1901年当時のダイビングは命がけであった。銅製の水中ヘルメットにキャンバス製の潜水スーツのダイバーが水面下45メートルの難破船に到達してこの機器をはじめ数々の遺物を回収したのだが、その過程で潜水士1人が死亡し、2人が減圧症による全身麻痺に苦しめられた。


4. 装置のメカニズムを解読するのに75年かかった


 研究者は当初、このデバイスが何を目的としているのか、どのように機能するものであるのかまったく見当がつかなかった。


 1951年頃から物理学者で歴史家のデレク・デ・ソーラ・プライスがこの装置を詳細に研究し始めたが、残念なことに彼は装置がどのように機能するかを解明することなく1983年に亡くなった。


 アンティキティラ島の機械のメカニズムは、1990年代後半から2000年代前半までは意味のある検証ができていなかったのだ。



5. 人類初のコンピュータである


 前述したようにアンティキティラ島の機械はアナログコンピュータなのだが、天文学的な出来事について日付を割り出し、予測するために作られたため、これまでに発見された人類史上初のアナログコンピュータと見なすことができる。


6. 著名な専門家を魅了した


 フランスの海洋学者、ジャック・クストーは1978年にアンティキティラ島の難破船を訪れ、紀元前1世紀のコインとアンティキティラ島の機械の小さなブロンズ製の部品を発見した。


 加えて有名な物理学者のリチャード・ファインマンはいたく好奇心を刺激され、アテネの国立博物館にアンティキティラ島の機械を見物に訪れている。


7.三角法の発明者が関与していた可能性


 古代ギリシアの天文学者で三角法による測量を初めて行ったとされているヒッパルコス(B.C.190頃-B.C.120頃)は、アンティキティラ島の機械の作成に関与した可能性があるという。


 デバイスに表示される日食周期はバビロニア起源であり、ヒッパルコスはバビロニアの天文学的計算をギリシャ語とブレンドしたことで知られている。ひょっとすると装置の背後にある計算を行ったのは、ヒッパルコスかその教え子である可能性もあるという。


8. 天体の予測以外にも使われていた


 アンティキティラ島の機械は太陰暦を追跡し、日食や月食といった天体の運行、太陽、月、水星、金星、火星、木星、土星の位置を手動で割り出す道具であったのだが、季節や古代オリンピックのような歴史的なイベントを追跡するためにも使用されていた可能性もある。


 特定の文字盤によりユーザーは季節を可視化することができ、農業にとって有益であった。


 古代バビロニア人は日食の仕組みを知っていたので、アンティキティラ島の機械を作った人は、日食と月食の両方を表示するために回転する2つの文字盤を装備した。しかしこの機構ができる最も複雑なことは、ある時点での月の周期の長さを割り出し、その楕円軌道をモデル化することだったかもしれないのだ。


9. 取扱説明書が付いていた


 筐体の背面にある青銅のパネルが取扱説明書として機能していたことが示唆されている。


 ギリシャ語(コイネー)で書かれたこの記述には、デバイスの動作方法に関する指示と、表示に関する説明が含まれていた可能性がある。しかしユーザーがそれを理解するには天文学と天文デバイスに関する広範な予備知識が求められていたと考えられている。


10. 難破船にもう一つあるかもしれない


 クストーが1970年代半ばに水中の考古学的遺跡を調べて以来、本格的な追加の調査が行われていない。


 しかし2012年にはウッズホール海洋学研究所をはじめとする海洋考古学者チームが、高度なスキューバ装備を使用して再び難破船に潜入し新たな遺物を次々と発見している。


 おそらく難破船には発見されるのを待っている別の同様のデバイスが存在する可能性がある。


11. 驚くほどの正確さ


 前述したように機械には水星、金星、火星、木星、土星の針またはポインターがあり、これらはすべて肉眼で見ることができ、月の満ち欠けを示す回転ボールも付いている。


 研究者は機械のフロントプレートのテキストは、惑星の動きが多くの複雑な歯車を使って数学的にモデル化されており、非常に正確であったことを示唆している。


 20世紀のスタート時に発見されて以来、この謎めいたアンティキティラ島の機械は、それを見たり研究したりしたすべての人を困惑させ、畏敬の念を起こさせてきた。それがどのようなものであったか、または正確にどのように機能したかを正確に知ることはできないが、当時のエンジニアリングの驚異的な偉業であることは明らかだ。



参考:「Interesting Engineering」ほか

tocana

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