神の啓示で建てられた謎のビル「東京媽祖廟」に潜入=新大久保

2023年4月22日(土)7時0分 tocana

 今夜21時からの『世界ふしぎ発見!』(TBS系)は、国内テレビ初取材となる台湾の”媽祖祭”に密着! 参加者11万人が9日間、往復400Kmの距離を媽祖を乗せた神輿とともに大移動。さらに、神輿がいつどの道を選び、どこで休憩するのかはすべて媽祖の気分次第? 前代未聞、予測不能の祭りの全貌に迫る。


 媽祖とは、もとは海の守護神として中国沿海部で祀られた道教の女神であった。しかし、文化大革命期に規制対象となり、媽祖廟と信者は台湾へ移ることに。その複雑な歴史背景から、日本ではなかなか馴染みのない信仰だが、実は東京・大久保にも「東京媽祖廟」があるのをご存じだろうか。2020年、ルポライターの村田らむ氏による潜入レポートを掲載した際の記事を再掲する。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


※こちらの記事は2020年12月29日の記事を再掲しています。


——B級スポット、樹海や禁断の土地、ホームレス取材を得意とするルポライター村田らむが寄稿!


 JR大久保駅の南口を降りるとごちゃごちゃっとした通りに出る。


 焼き鳥屋さん、焼き鳥屋、ホテル、教会などが並んでいる。空を見上げると『性病科・婦人科』と書かれたでっかい電光看板が出ていた。ブレードランナー的なディストピア感あってわくわくする。




 そんなカオスな通りを歩いていると、どんでもなく鮮やかなビルが現れる。赤と金がギラギラとまばゆい、いかにも中国のお寺っぽいビルだ。



『東京 媽祖廟』


 と書かれている。


 媽祖(まそ)は中国で信じられている道教の女神だ。中国南部の湾岸部で信じられたようだが、文化大革命の時期に多くの施設は破壊され、信者は虐げられたという。


 信者と媽祖廟は台湾に渡り、信仰は残った。この施設も台湾人の手によって2013年に建てられた施設だそうだ。


 一階のドアは開けっ放しになっていて、ウエルカムなようだが、なかなか入りづらい。恐る恐る入ってみるが、中には人はいなかった。



 一階のショーケースには、お守り、線香、数珠など、なかなか興味深いグッズを売っていた。しばし見学しながら誰か来るのを待っていると、清掃道具を持った男性が奥から出てきた。見学していいですか? と尋ねると、


「どぞどぞ〜!!」


 と笑顔で言われた。


 2階に登ると、室内にはでかでかと祭壇があった。というか祭壇しかない。



 ただ、祀られているのは男性だった。媽祖は女神だから違うだろう。説明書きを読むと『関帝殿』と書かれていた。なるほど、三国志の劉備玄徳に仕えた武将の関羽を神様として祀っているのだ。他にも道教の神様、月下老人が祀られている。月下老人は「赤い糸の伝説」のモデルになったと言われる逸話を持つ神様だ。男女の足を赤い糸で結ぶ、と言われている。後で聞いた話だが、月下老人をお祈りするために来る人も少なくないという。彼氏彼女が欲しいと思う人は来たらいいかもしれない。



 かなり大きい金色の像も飾られていたのだが、なぜか赤いテープで目隠しされていた。壊れてしまったための応急処置なのかもしれないが、顔に赤いテープが巻いてあるのはかなりこわい。そしてテープからはみ出るかたちで『佛』と書いてある。むちゃくちゃヤバい能力を使えそうな像である。


 3階に進むとやはり同じレイアウトで、今度は女性の神様が祀られていた。



 やっと媽祖か、と思ったが3体祀られている。豪華な服を来た女性だ。左側は金色、真ん中はピンク色、右側は黒色をしている。


 どれが媽祖なんだ? と思ったら、3体とも媽祖だった。



 中国の媽祖、台湾の北の媽祖、台湾の南の媽祖が祀られているのだ。地域ごとにカラーバリエーションが変わるのか。


 壁には小さい媽祖がズラーッとならんで、明かりがついていた。どうやら寄付をすれば名前を入れて並べることができるようだ。ただ、あんまり商売っ気はないらしく、案内などはあまり書いていなかった。



 とても豪華に装飾されている。


 周りには果物やお菓子、蘭などの花も飾られていた。


 窓から外を見ると、対面のビルの屋上も、同じく中国寺仕様になっていた。オレンジと金が眩しく、武将の人形や竜などが飾られている。



 媽祖も拝んだし、帰ろうか? と思ったら、さらに上があった。媽祖廟なのに、さらに上があるんだ……と思いながら登ると、やっぱり室内は同じレイアウトだった。


 ちょっと天国っぽい雰囲気が出ている。




 真ん中にあるのは観音様で、孔雀明王や薬師如来も祀られている。日本人にとっては、媽祖よりも観音様の方が馴染み深いが、媽祖廟を建てた人にとってもそうだったらしい。


 媽祖廟を建てた経緯が書いてあったのだが、20年前に子供を寝かしつけながらうとうとしていると、目の前に巨大な女神が現れたそうだ。最初は観音様かと思ったそうだ。やっぱり女神といえば、観音様が思い浮かぶのは一緒か。ただその女神は『冠』をかぶっていたので、観音様ではないと気づき、


「媽祖様ですか?」


 と尋ねると、


「そうだ」


 と答えられたそうだ。媽祖様は


「あなたは日本で事業を始めて成功するでしょう。そして十分富を蓄えた暁には、道場を建てて衆生を助けなさい」


 と言ったそうだ。


 それから20年経って、廟を建てたそうだ。なかなか強烈なエピソードである。


 一旦外に出ると、小さい中庭があって東屋があった。東屋と言ってもやっぱり赤と金でなかなか派手だ。池には龍の首がズラ〜っと並んで水を吐いている。



 大久保はそもそも異国情緒あふれる街だけど、東京媽祖廟はことさら異世界感があってとても楽しかった。コリアンタウンを観光するついでに足を運んではいかがだろう?

tocana

「新大久保」をもっと詳しく

タグ

「新大久保」のニュース

「新大久保」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ