「発見された時は下半身の皮膚がタダレて…」法医学者が解説する、65歳以上はこたつでうっかり寝てはいけない“おそろしい理由”

2025年4月24日(木)18時0分 文春オンライン

〈 「えっと…旦那さんは性行為中に亡くなりました」若い相手との行為、バイアグラの服用が死に繋がる? 65歳以上の高齢者が“腹上死”する意外な理由 〉から続く


「え!? こんなことで?」


 これまで5000体以上の遺体を解剖してきたという法医学者の高木徹也さん。近年「まさか」と驚くような原因で亡くなる高齢者の遺体に出会う回数が増えてきているという。


 ここでは、高木さんの著書『 こんなことで、死にたくなかった: 法医学者だけが知っている高齢者の「意外な死因」 』(三笠書房)より一部を抜粋。高齢者が「こたつに入る」ことで死に至る可能性を解説する。(全6回の3回目/ 続き を読む)


◆◆◆


こたつで死ぬ


 寒い季節、こたつに入ってぬくぬく過ごす至福のひととき……。


 ついウトウトと寝落ちしてしまうのも仕方ありませんよね。家族から「風邪をひくよ」「やけどするよ」と声をかけられても、なかなか起きられないものです。


 それもそのはず。実はこのとき、下半身が温められていることで身体の血管は拡張し、相対的に脳血流が低下するため、「気絶」に近い状態になっているのです。


 そして、「そのまま寝ていると風邪をひく」というのも決して大げさな話ではありませんし、なんと、こたつに入ったまま亡くなってしまうこともあります。



※写真はイメージ ©piamun/イメージマート


 よくある事例は、寒い冬の夜、外食や飲酒をして帰宅し、部屋の暖房をつけずにこたつに入る……。そして翌朝、寝ているような体勢で死亡しているのを発見されるケースです。突然死と同じ扱いなので、現場に到着した救急隊から警察に連絡が入ります。そこで、やけどのように下半身の皮膚がタダレていることが発見され、「火傷死」が疑われて解剖になる機会も少なくありません。


 このようなケースの大半は、やけどは長時間こたつに入っていたためにできたものであって、死因は「脳梗塞」や「心筋梗塞」と判断されます。


こたつが「凶器」に変わるとき


 一体なぜ、「こたつでの寝落ち」が死につながるのでしょうか。


 まず、こたつに長時間入っていると、発汗と呼吸によって脱水状態になりやすくなります。この脱水状態が続くと、血液がドロドロになってしまうのです。前述してきたように、高齢者には動脈硬化症が進行している人が多いため、ドロドロになった血液は血流を悪くしたり、血管を詰まらせたりします。


 そして、脳の血流が悪くなると「脳梗塞」に、心臓の血流が悪くなると「心筋梗塞」になってしまうわけです。


 また、室温が低いことも死の危険性を高める一因と考えられます。


 下半身はこたつで温まって血管が拡張しているのに、頭や上半身は冷えて血管が縮こまっている……。いわゆる「ヒートショック」の状態になるのです。こたつの中と外の温度差が激しければ激しいほど、死ぬ危険性は高まります。


 さらに、血流が悪くなる以外にも、冒頭でお話ししたように、こたつに長時間入ることで「風邪をひく」「やけどする」ことも、重症化すれば死につながります。


 ひとたび脱水症状になると、粘膜などの水分も少なくなるため免疫力が低下し、風邪をひきやすくなります。また、こたつによるやけどは、自覚症状の乏しい「低温やけど」であるため、気づいたときには深い傷を負っている可能性があるのです。


 いずれにしても、こたつによって身体に支障が出るときは「重症化するまで自覚症状がない」ことが特徴です。


 間違った使い方をしてしまうと、身体にさまざまな悪影響を与えることを知っていただき、ぜひ安全に利用してください。



・こまめに水分を摂る。


・こたつの設定温度を下げる。


・部屋自体も暖めて温度差をなくす。



(高木 徹也/Webオリジナル(外部転載))

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