川崎初のどぶろく醸造所で造られる「クラフト」な酒!その魅力、誕生秘話とは? 『日本酒×和食 和み酒房げん 川崎店』【酒屋と飲食店のおいしい関係8】

2025年4月24日(木)12時0分 食楽web


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●こだわりの酒屋とそこからお酒を仕入れる飲食店、2つの視点から紐解くお酒、料理の魅力に迫ります。

 川崎においしいお酒を扱う酒屋があります。蔵元の情熱とこだわりを深く理解し、酒一滴一滴に込められた物語を感じ取る。味と風味を熟知し、来店する地元の人や飲食店の好みに合わせたお酒を提供する酒屋、『地酒や たけくま酒店』。川崎で日本酒を扱う飲食店界隈では有名な、こだわりの酒屋です。

“こだわりの酒屋はおいしいお酒を知っている、おいしい飲食店はこだわりの酒屋からお酒を仕入れているはず”という仮説から『地酒や たけくま酒店』の2号店となる元住吉店店長・佐藤温志さんに相談して実現した、地域に根付いた酒屋と飲食店のおいしい関係を発掘する本企画。

 第8回は『日本酒×和食 和み酒房げん 川崎店』からお届けします。

 紹介するお酒は「KAWASAKI どぶろくメゾフォルテ」。なんと、飲食店である『日本酒×和食 和み酒房げん 川崎店』店舗内に設置された畳6畳に満たない小さな醸造所『DOBUROKU★STUDIO 川崎醸造所』で造られる「どぶろく」なのです。

「どぶろく」は肌の保湿やコラーゲン生成を促進する効果が期待できる「α-EG」、肥満などの生活習慣病の抑制、免疫力の向上が期待できる「レジスタントプロテイン」などが含まれ腸活・美肌・脂質対策が期待できる、特に女性に注目されているお酒です。

おいしいだけじゃない、コミュニケーションツールとしてのお酒


左・『地酒や たけくま酒店』元住吉店店長・佐藤さん 右・『日本酒×和食 和み酒房げん 川崎店』オーナー・松枝幸司さん

 20年前、取引先として川崎の酒屋を探していた時に『地酒や たけくま酒店』本店と出会ったと松枝さんは言います。

 ところが当時の松枝さんは実はお酒について無知に近かったそうです。特に日本酒は飲まず嫌い。世の中は焼酎ブームで、そもそも『たけくま酒店』には焼酎を探しに訪ねたくらいで、日本酒を積極的に仕入れようとは思わなかったそうです。しかし松枝さんは料理とお酒を提供しながら、刺身と合わせるのに焼酎でいいのだろうかと、どこか心にしこりがあったようです。

 そんな松枝さんの“日本酒人生”を決定づけたのは、ある日ふらりとお店に現れた一人の“日本酒好き”のお客様でした。

松枝さん:オーダーをいただき日本酒の大吟醸をお出しすると、すぐにひとこと「ダメだ」と。意味が分かりませんでした。「なんでですか、大吟醸ですよ!?」と食い下がっても、「日本酒は管理で味が変わる。大吟醸でも扱いが杜撰なら台無しだ」と言われてしまい。さらには「今度美味い酒を飲ませてやる」と言って帰られました。

 松枝さんは、こんな厳しい指摘を受けたことが衝撃だったと振り返ります。


和食と日本酒のペアリングにこだわる松枝さん

松枝さん:二か月ほど経ちそのお客様はもう来ないだろうと思っていた頃、また突然お店に来てくれて、「この酒を飲んでみろ」と言った通り日本酒を持ってこられました。言われるがまま一口飲むと、「えっ…」って。華やかな香りで甘みもきれいで、当時はこんな日本酒があるんだとあまりの美味しさに驚きました。そこからかなり日本酒を勉強して素晴らしさにのめり込んでいったんです。和食と合わせるなら日本酒がいいんだと気づく頃には、心のしこりもなくなっていました。
 そのお客様との出会いがなければ、日本酒をここまで愛することはなかったかもしれません。飲ませてくれた日本酒は、山形の出羽桜酒造が醸す「出羽桜 桜花 吟醸酒」でした(1980年代、世の中に香り良い吟醸酒が普及する火付け役となった日本酒)。
 それからは『たけくま酒店』に日本酒の相談をするようにもなり、日本酒と和食中心のお店に方向転換しました。当時、川崎で日本酒と和食を出すお店は少なかったんです。売り方も半合売りを始めました。すると、だんだんとその魅力がお客様に伝わっていくのを感じられて至福の時でした。

「至福」と言えば、松枝さんは前回の記事の『シフク』さんと親交があり、出会ったのも日本酒にのめり込んでいった縁だと言います。

松枝さん:たけくまさんのお酒の説明は端的でとっても助かります。飲んで分かることって味の感想だけになってしまうので、蔵とつながる特約店だからこそ知り得る“生きた情報”はありがたい。ネットに載らない貴重な話や細かな情報を教えてくれて、こちらとしても正しく伝えたい。するとお客様は日本酒にぐっと興味をもってくれる。一緒に料理のペアリングを考えたり、次はどんな味を試してみようかと盛り上がったり、それって良い広がりですよね。お客様には有名な銘柄を提供するメリットもありますが、無名でもストーリーを面白がってもらえれば充分なんです。酒屋さんとつながることの大事さはそこにあると思います。
 もともと接客も苦手で…、でもお酒を介するとなんか会話が弾んじゃうことってないですか? 良いコミュニケーションツールだなぁと笑

佐藤さん:松枝さんのおっしゃることは、飲食店と酒屋の理想的な関係性ですね。そんなお付き合いができると、こちらも姿勢を崩せないので励みになります。お酒が好きな人は美味しい料理も好きだと思うので、「日本酒も飲めて料理も美味しいお店ある?」なんて聞かれたら喜んで紹介しちゃいます。そういうダイレクトな関係が日本酒の循環の一助にもきっとなりますよね。
 でも、接客については同じタイプでしたか! 僕も店に立っていながら、お酒がなかったらあまり人と話せることがないかも…。 “生きた情報”に生かされています笑


「海老のしんじょう揚」740円。海老の食感を残しつつ、驚くほどふわっふわに仕上げられたお店の名物メニュー。日本酒とのペアリングも抜群。食べ止まらず一人で8個平らげる女性もいるそうです

栄養満点! 女性にも注目される「KAWASAKI どぶろく メゾフォルテ」の誕生


店舗の一角にある醸造所。ここで「KAWASAKI どぶろく メゾフォルテ」が造られている

 日本酒にのめり込んだ松枝さんは料理と日本酒のペアリングを追求し、酒蔵見学などをする中で、自ら日本酒を作りたい、という想いを持つようになったといいます。コロナ禍の2,3年前くらいに「どぶろく」作りの体験をし、「どぶろく」ならば店舗でも作れることがわかり、その想いは更に強くなりました。しかし、資金、免許、水、麹など、様々なハードルがあり一旦棚上げ。いつか「どぶろく」を作りたい、そんな夢だけが残りました。

 コロナ禍になり、お客様がお店に来られなくなり、松枝さんは夢に向かって動き出しました。

松枝さん:既にあるお酒を提供する仕事を長年続けて、もっと「地酒」に対してできることはないかと考えると、この街で自分で造りたいと思いはじめました。周りのみんなには止められたんですけどね笑。飲食店だけ一生懸命にやっていてもコロナのような事態が起こった時になくなっちゃうかもしれないし、従業員も抱えてるし、やっぱり怖かったんです。それにこの歳までになんとなく蓋をしてしまったやり残したこともある。
 自分で「どぶろく」を造ったら、お客様にも渡せるし、こだわり、味を商品としてカタチに残せると思った時に、「どぶろく」造りで経営問題も解決するんじゃないかと思ったんです。川崎で新たな酒文化を生み出そうと挑戦しました。街に「文化」を残せるって、ロマンじゃないですか。


感心しながら松枝さんの話を聞く佐藤さん。後ろに見えるのが6畳にも満たない店内の醸造所

佐藤さん:「KAWASAKI どぶろく メゾフォルテ」は本店と元住吉店両店で取り扱わせていただいています。店内でアピールはしていても一人一人に声をかけるわけではないのですが、ふいにレジに持ってこられる方も多くて。ご存じか聞くと、見て気になったから、と。見た目のインパクトと、やはり「川崎の」という地域性に興味を持たれているようです。男女問わずリピートされて、お酒好きがハマるんですね。
「どぶろく」は濃厚な甘口もアルコール度数の高い辛口もありますが、松枝さんのどぶろくはアルコール度数10度ほどで、優しい甘みと酸による後に引かない余韻が食中にちょうど良いですよね。生のどぶろくにいたっては、ガス感もあり醸造所直結ならではのフレッシュさで、飲むとハッとします。

松枝さん:うれしいです。

佐藤さん:当店との関係性も、飲食店としての松枝さんには日本酒をお届けして、蔵元としての松枝さんからは「KAWASAKI どぶろく メゾフォルテ」を仕入れさせていただくという、なかなかユニークです。近隣にも仕入れてくれる飲食店が数軒あります。同業他店から発売されているものを取り扱うことはある部分リスキーですが、その上で地域性の底上げに共感があるようで、ありがたいことですよね。

松枝さん:そうなんですか、うれしいなぁ。酒蔵と肩を並べると言ったら生意気ですが、そうなりたいですね。酒造りは麹造りが大事で、それをしないと本当に酒造りをしているとは言えない。「麹は買ってるんだろ?」なんて言われちゃうと悔しくて。なので麹造りはもちろん川崎の農地化も関心があって、いずれは米作りから酒造りまで一貫してできるようにと考えています。
 今はどうしても“飲食店が趣味でどぶろくを造ってる”と見られてしまいますが、 “酒蔵に美味しい食事を出す飲食店がある”と逆にしたいんです。外観にももっと酒蔵然としたものに変えていきたい。

「どぶろく」に合う、こだわりの料理を2品紹介します。


「銀鱈の柚庵焼」1380円

 ゆず風味の醤油だれにつけ込んでから焼く柚庵焼にすることで味がしっかりとついた身と、銀鱈のおいしい油が、適度な酸味と米の旨みをダイレクトに味わえる「どぶろく」との相性が抜群!


「豚の角煮」880円

 控えめな甘さのタレと豚肉のコクに、山椒の爽やかな辛みをちょっとだけ効かせるのがポイント。発酵由来のクリーミーさと微発泡感をあわせ持つ「どぶろく」が、角煮のまったりとした余韻をきれいに流してくれます。

「川崎で生まれた『どぶろく』が、もっとたくさんの人に親しまれて、“川崎の酒文化”になる可能性だって十分あるはず。そして、それが誰かの夢や意欲を刺激するきっかけになってくれたら、こんなに嬉しいことはないですね。」

 松枝さんはそう語りながら、最後にこう付け加えました。

「飲食店をやって様々な人と出会い人生が変わり、今はドブロクを造る酒蔵のはしっこみたいな存在にもなれた。“やってみたい”と思ったことを行動に移すのは、どのタイミングからでも遅くないですよ。」

まとめ

 おいしい出会いはその先の人生までをも動かす。『日本酒×和食 和み酒房げん 川崎店』と『地酒や たけくま酒店』の間には、そんな物語が詰まっていました。お店に一歩足を踏み入れれば、和食と日本酒、そしてドブロクが織り成す“おいしい関係”のトリコになること間違いなし。ぜひ足を運んで、店主の夢がたっぷり詰まった一杯と一皿に出会い、これから先のあなたの物語も広がっていくのを楽しんでみてはいかがでしょうか。

 ローカルから生まれるおいしい関係性。食があり、酒があり、きっと今日もどこかの街の誰かが満たされて、その輪が広がっていくのでしょう。では、またどこかで。

無くなり次第終了!「KAWASAKI どぶろく メゾフォルテ」一杯サービス企画

『日本酒×和食 和み酒房げん 川崎店』のご協力のもと、お店で「食楽webのinstagram」をフォロー、フォローしている画面を見せると「KAWASAKI どぶろく メゾフォルテ」一杯サービス!

 無くなり次第終了です!

●SHOP INFO

日本酒×和食 和み酒房げん 川崎店

住:神奈川県川崎市川崎区東田町8 パレール1F
Tel:044-200-7538
営:月〜木曜 16:00〜23:00(FOOD L.O.22:00/DRINK L.O.22:30)
  金・土曜 16:00〜23:30(FOOD L.O.22:30/DRINK L.O.23:00)
定休日:日曜
https://www.gen-kawasaki.jp/

●SHOP INFO
地酒や たけくま酒店
https://www.takekuma.co.jp
本店
https://www.instagram.com/takekuma_saketen/
住:神奈川県川崎市幸区紺屋町92
TEL:044-522-0022

元住吉店
住:神奈川県川崎市中原区木月3丁目10-17
TEL:044-789-5561
https://www.instagram.com/motosumi_takekuma/

オンラインストア
https://takekuma.co.jp/store/

(企画・取材◎ヨネダ商店)

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