平成のお笑いブームとは何だったのか? 「ブーム終焉はバブル崩壊と同じだった…」当時者とお笑い研究家が振り返る!

4月22日(月)16時0分 tocana

画像はゲッティイメージより

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 お笑い評論家のラリー遠田の新刊『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)が発売された。この本では、14の事件を題材に、平成のお笑いの歴史を振り返っている。本の発売を記念して、著者であるラリー遠田とサイキック芸人のキックの特別対談が行われた。第4回では、『エンタの神様』にも出演していたキックが当事者として平成のお笑いブームを振り返る。


ラリー この本に出てくる人の中で、キックさんが一緒にお仕事をしたり、かかわりがある人っていますか?


キック (笑福亭)鶴瓶さんとはライブでご一緒させていただいたことがあるんですけど、やっぱりすごかったですね。ラ・ママっていう小さいライブハウスでリーダー(渡辺正行)とトークをされていたんですけど、巻き起こる笑いの質が違うんですよ。お客さんを味方につけるスピードが異常に早い。これが九星気学で言うところの四緑木星の「風」の要素なんですよね。ふわっと入ってきて、一瞬にして全員を自分のワールドに巻き込んじゃうから、自然と親近感がわくんですよね。


 ビートたけしさんも、ネタ番組や飲みの席でご一緒させていただいたこともあって。そういうときにご挨拶をすると「あのネタをやっている芸人だろ」って、全部覚えていてくれるんですよね。いま僕がレギュラー出演している『超ムーの世界』っていうCSの番組も見たことがあるらしくて。一緒に出ている島田秀平さんがたけしさんに「お前、面白いのやってるな」って言われたことがあるらしいんですよ。


ラリー たけしさんとかさんまさんってそういう伝説がありますよね。若手芸人が出ているようなちょっとしたネタ番組まで見ていて、会ったときにそれを言ってくれる、っていう。言われると嬉しいですよね。


キック もちろん嬉しいですし、常に全部を把握しておきたいっていうトップとしての責任を果たしているのかな、とも思います。


ラリー でも、本当に「いつ寝てるんだろう」って思いません? 『超ムーの世界』まで見ているっておかしいですよ(笑)。せめて地上波だけでいいよ、って思っちゃいますよ。恐ろしいですね。


キック たぶん、お酒を飲んでメシ食ってお腹いっぱいになって寝る、とかそういうことを一切していないんでしょうね。萩本欽一さんもお酒は飲まないっていうし。やしきたかじんさんなんかも家にテレビがたくさん置いてあって、全部見ていたって言いますもんね。


ラリー キックさんってデビューしたのは何年ですか?


キック 2005年です。


ラリー じゃあ、平成の後半を芸人として生きてこられたわけですね。2007年から2009年くらいがお笑いブームの時期で、キックさんも『エンタの神様』によく出られていましたよね。あのブームっていうのはいま振り返るとどういう感じでしたか?


キック 今思えばおかしいというか、時代がたまたまめぐってきたからそこに出られていたんだな、って思いますね。時代が来てないとか、運が来てないときに何をやってもあそこまでガツンと行くことはないわけですから。


ラリー 『エンタの神様』には何回くらい出ていたんですか?


キック 61回ですね。2007年から2008年ぐらいに出ていました。


ラリー 毎週のように出ていたんですね。それはすごい。


キック あの頃はお笑いブームでしたよね。いま思えば、どこの会場もパンパンだったし。その中で『エンタの神様』のスタッフさんがライブをチェックしに来ていて、カメラを回していた。


 そのあといろいろやっていて、サイキック芸人みたいになって、時代がたまたまちょっとオカルトブームになってきているから、それで呼ばれることもあるっていう不思議な状態です。ここで全部を注いでオカルトの人になっちゃうと、オカルトブームが去ったらまた呼ばれなくなるんですよ。


 たけしさんはそういうのを全部やっているじゃないですか。年末にはオカルト番組もあるし、健康番組もやっているし。広く網をかけているから、どれか1つの人になっていないんですよね。


ラリー ブームの終焉みたいなのを感じたことはありましたか?


キック なんか、唐突じゃないんですよね。バブル崩壊と同じで、じわじわ進んでいって、ある日気付いたら事務所ライブのお客さんが半分以下になっていた。あ、これか、みたいな。そこでもう戻らないんだなっていうことにやっと気付くっていう感じでした。


 ブームのときって周りの芸人たちもみんな威勢がいいんですよ。でも、いつのまにか楽屋でも声のトーンとかがちょっと落ち着いたりしていて。「あれ? 元気なくなったな」みたいな。出ていたオーラが消えていくんですよ。


 あと、ブームが陰ってくると、礼儀正しい人が増えてくるっていうのもありますね。落ちてくるとみんな偉そうなことを言えなくなるから、ちょっと謙虚になるんですよ。僕もそうだったと思うんですけど、ブームのときはみんな天狗だから、楽屋がちょっとギスギスしているんですよね。


ラリー 一人一人が天狗になっているとなかなか大変そうですね。


キック 自分でも気付かないうちにそうなっているんです。だから、他の芸人を見ていて「なんか感じ悪いな」とか「こいつ、調子乗ってんな」っていうのをすごい感じるときって、業界としては元気が良くて、活性化しているんですよね。みんなが丁寧に挨拶するようになってくると「あれ?」って。


ラリー 最近バカリズムさんがテレビで言っていたのが「一発屋芸人はかわいそうという風潮に疑問がある」と。全員ではないけれど、ブームの頃に調子に乗っていた一発屋芸人を見てきているから、いま人気が落ちていてかわいそうだと言われても同情できない、っていう話をしていて。やっぱりそういうことが実際にあったんですね。


キック それで僕は、明らかにテレビにあまり呼ばれなくなってきてるなっていうときに、たまたま超能力がテーマの特番に出ることになって、そこでピンときて「あ、こっちだ」ってチャンネルを切り替えたんですよね。これも「人生映画理論」で言うと、ちょっと面白いかなとは思ったりするんです。明らかにやっていることが違いますから。


『エンタの神様』でやっていたムエタイ選手のネタでは、ツッコミ目線で「いろいろなことを分かってますよ」っていう形でやっていたのに、オカルト路線でツッコまれる側に行きましたからね。でも、そうやって変わっていかないと、1つの物語になっていかないんです。ずっと活躍している人も、表に出ていないところで本人の中ではいろいろチェンジしていると思うんですよ。


ラリー そういう意味では、人前に出ていると常にいろいろな人と接して新しい空気に触れられるというのはありますよね。タモリさんなんて『笑っていいとも!』をやっているだけで、その時代ごとの旬の人と絡むことができていたわけじゃないですか。


キック 売れている先輩芸人が言っていたんですけど、大御所の人って旬の人のことがすごく好きらしいんですよ。旬の人が持っている気力とかエネルギーをもらえるっていうのがあるから。和田アキ子さんとかもすごいミーハーなところがあって、「今キテる人」が好きなんです。


ラリー Mr.シャチホコさんが和田アキ子さんのものまねをしているじゃないですか。アッコさんは自分が知らない若いアイドルとかと共演すると「君は何をされてる方なの?」って聞くんですよね。それも好奇心の現れなんでしょうね。新しく出てきたタレントがどういう人なのか知りたい、っていう。自分が上の立場になってきたら、そういうのって流してしまいがちじゃないですか。別に私がこんな人のことを知らなくてもいいや、って思ってしまいそうなのに、そうならないんですね。


キック 「何をされてる方なの?」っていうのは「私がエネルギーを取れる方なの?」っていう意味なのかもしれないですね(笑)。

tocana

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