<認知症>で怒っている時は「動画撮影」を。認知症専門医「患者さんは家で傍若無人でも、診察室ではよそ行きの顔に。動画から適切な診断をくだせる場合も」
2025年4月25日(金)12時30分 婦人公論.jp
(写真提供:Photo AC)
厚生労働省が発表した「認知症及び軽度認知障害(MCI)の高齢者数と有病率の将来推計(令和4年度調査)」によると、65歳以上の高齢者の中で、認知症の人の割合は約12%となっています。認知症の人の介護をする家族も増えるなか、「認知症とは、患者家族に『決断』を強いる病気」と話すのは、認知症専門医の長谷川嘉哉先生です。今回は長谷川先生の著書『認知症は決断が10割』から、先生と、本の編集者である編集Tさんとの対談を一部抜粋しお届けします。
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患者さんに気になる症状が出たら、動画を撮る!
長谷川先生(以下、先生) そうそう、患者さんに気になる症状が出ているときは、動画を撮っておいていただけると、すごくいいと思います。
編集T 動画ですか?
先生 そう、受診の際に、それを医師に見せてほしいんです。
そうすることで、医師が適切な診断をくだせる場合があるんですね。
たとえば、患者さんの付き添いできたご家族が「最近、うちのおじいちゃんがやたらと怒りっぽくて、家族は困っているんです」と医師に教えてくれたとします。でも「やたらと怒りっぽい」というのが、どの程度のものなのか、やっぱり言葉だけでは伝わりづらいわけです。
編集T 怒っているところを実際に見てみないと、わからない。
先生 そうなんですよ。
診察室ではよそ行きの顔に…
先生 自宅では傍若無人にふるまう患者さんも、診察室ではよそ行きの顔になって、たいてい大人しくなっちゃいますしね。だから、患者さんが怒っているところを医師が見ようと思っても、なかなか見られないわけです。
この点、動画で患者さんが怒っているところを見せてもらえれば、「この方は、誰が見てもギョッとするぐらい激しい怒りを表しているから、血管性の認知症の可能性が高いな」とわかります。
あるいは、アルツハイマーの方の場合、初期はそうでもなくても、中等度ぐらいまで進行すると激高しやすくなることがあるんですね。
なので、アルツハイマーの方が、激高しているところを見せてもらえれば、「ちょっと進行してきたな」ということがわかるわけです。
「失神」や「徘徊」も、余裕があったら撮影を
編集T 怒っているところの他に、撮っておいたほうがいいところってありますか?
先生 最近、患者さんのご家族に撮っていただいて診断にすごく役立ったのが、患者さんが「失神」したときの動画ですね。
(写真提供:Photo AC)
実は、認知症の患者さんって、アルツハイマーであろうが、血管性であろうが、突然、フッと意識を失うことがあるんです。たとえば、ごはんを食べている最中に倒れちゃうとか。それで、そのときの状況によっては薬をお出ししたほうがいい場合があるんですけれども。
ただ、あとで医師が「患者さんがどんなふうに倒れたか、教えてください」と聞いても、ご家族は急なことでビックリして覚えていないことも多くて。
編集T なるほど、動画があれば、そのへん、一目瞭然ですね。
先生 そうなんです。
百聞は一見に如かずで…
先生 あるいは、患者さんが「徘徊」しているところを撮っていただくのも助かりますね。
患者さんがしっかりした足取りでどこまでも歩いていくのか、それとも足元をフラつかせてヨロヨロ歩くのかで、処方するお薬が変わってきます。
百聞は一見に如かずで、実際に歩いている様子を見せていただければ、医師がどうすべきかがすぐにわかることも多いんです。
なので、動画の撮影、ぜひお願いいたします。
スマホという武器を使いこなして、認知症介護をラクにしましょう!
※本稿は、『認知症は決断が10割』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
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