インターンシップで学生を支える担任たち - NTT東日本のインターンシップが人気の秘密を探る

2025年4月25日(金)10時0分 マイナビニュース


前回記事ではインターンシップの定義の変化に伴い、具体的にNTT東日本がどのようなカリキュラムを展開してきたのか、2人の人事担当者が解説。
その中で「ダブルワーク社員が担任をもって、7〜8名の学生を受け持って指導する」というユニークな試みについて言及がありました。
NTT東日本のダブルワーク制度では、社内の別部署を兼務するのはもちろん、副業として社外でもキャリアを積むことが可能。
カレーを作って販売したり、バレエやテニスのコーチをしたり、別会社を経営してみたりしながら、多くの社員たちが自分の可能性を追求しています。
さて、インターンシップに参加したダブルワーク社員たちは、通常業務と並行してインターンシップを担任しました。
ここではシステムエンジニア(SE)、ネットワークエンジニア(NE)として、NTT東日本らしい業務を担当する3人の先輩社員に、インターンシップを通して学生を支えた経験、反応などについて語ってもらいました。
学生同士がお互いを教えあう場作りを意識
今回、集まってくれたのは、入社5年目のSEとして自治体システムを設計・構築している出江(いずみ)真由子さん、同じく3年目のSEで教育ICTにかかわる美藤杏佳さん、NTTビル内のネットワーク装置に携わっている4年目のNEの天谷鈴華さんの3名です。
このうち美藤さんと天谷さんは入社前にインターンシップへ参加し、特に美藤さんはリニューアル初年度の2021年のプログラムに参加しています。
美藤「私は環境系学部出身なのですが、インターンシップに参加したとき自分以外のメンバーは院生ばかり。正直、初日は発言内容すらわからない状態が続いて焦ってしまって経験がありました」
自身の体験を活かした美藤さんは、担任として「ICTについてわかっている学生が、迷っている学生を教えやすく後押しできる環境づくり」に尽力したと言います。
美藤「夏の回では全員院生の中に一人学部生というまさに私と同じ状況の参加者がいました。最初は不安そうでしたが、参加者同士が教え合うことで、最後の方では自信ありげに振る舞う成長した姿が印象に残りました」
ちなみにNTT東日本の技術系インターンシップというと、ゴリゴリの情報系の学生の独壇場だと思われがちですが、参加者の背景はまさに十人十色で、文系出身者も少なくないそうです。
最終的に採用に至る学生も学部学科の枠を超えているとのこと。多様な背景を持つ学生に可能性が広がる会社だというのがうかがい知られます。
学生が試行錯誤できるテーマに挑んでもらっている
同じくSEの出江さんも、経験がないままチャレンジした学生を受け持ったそうです。
大学院では化学を専攻しており、出江さんもICTは未知なる分野でした。それだけに自身と同じように経験のない学生が悩みながら、関門を乗り越えて成長する様子に頼もしさを覚えたと明かします。
出江「他社のインターンシップですとアイディア出しで留まっているケースも多いようですが、当社では事前に非常に多くの情報をインプットした上で、それをもとに自分たちで根拠を考え、アイディアを一つの形としてアウトプットするまでを行います。学生には"脳に汗をかく"ような非常に難しい経験をしてもらっているからこそ、乗り越えたときに得られる自信が大きいのだと思います」
学生には事前に分厚い資料が渡され、それを読み込んでから1日目に臨んでいます。受動的な姿勢では何も得られないこと、真剣に学び続ける姿勢が問われることは、大量の資料を見れば一目瞭然。
覚悟を決めて参加している学生たちの思いに報いるためにも、出江さんたちもまた"脳に汗をかく"サポートに臨んだのです。
担任制だから1on1面談を通してキメ細かく支援できる
昨年度、SEは教育ICTをテーマにした課題が提供されましたが、天谷さんが参加したNEの回では、NTTの所内・所外のネットワーク設備を学びつつ、災害でも安定して提供できる通信設備について考えるワークに取り組みました。
SEに比べて専門性が高い分、学生の戸惑いも大きかったようです。
天谷「最初にテーマを与えたとき、学生たちは『え? 何をするの?』といった表情で固まっていました。NTTのネットワーク設備はあまりにも規模が大きいだけに想像もつかないでしょうから無理もありません。その中でも担任が先導して、少しずつ学生たちに委ねていったのですが、どこまで助けるべきか、さじ加減が難しかったですね」
ネットワークとなると、ある程度知っている学生と、そうではない学生の温度差も非常に大きなものとなりがち。
天谷さんが受け持ったチームでは、知っている学生が、遅れている学生に対してどうやってサポートしていくべきか、悩んでいる様子が見て取れました。
そこで1on1で面談を重ね、それぞれの悩みにしっかりと寄り添ってサポート。一人に向き合える時間も長いのは、少人数の担任制を取っているメリットの一つだといえるようです。
学生が主体的に未来を考えられるインターンシップでありたい
2025年度のインターンシップも同様の形での開催が決定しています。ただし、従来はオンライン開催だったのが、今年からは職場に入り込んでの体験も網羅していく計画となっています。
例えば、会社として注力しているアグリ領域やデジタルマーケティング、ネットワークの超大型設備を垣間見るチャンスも設けていく予定で、学生にとってはより実りある時間になりそうです。
もちろん、担任制度も継続していくことになります。前回記事にも登場してくれた人事担当の佐近さんは解説します。
佐近「毎年、ダブルワーク社員が進化しており、担任を経験した先輩が後輩に教えてあげるサイクルの中でナレッジもかなり蓄積されました。とはいえ、翌年も同じことを踏襲するのでないのが面白いところ。過去のナレッジを参考にしつつも、よりいいモノを本気で導入していく文化も醸成されています」
同じく人事担当の田邊さんは「学生にひたすら寄り添い、一人ひとりの人生を親身になって考えるというところを、これからも続けていきたいですね」と決意を新たにしています。
会社の業務内容を伝えるだけのインターンシップを、人生や仕事に対してのイメージを具現化するプログラムへと進化させたNTT東日本。
良質のカリキュラムの構築と丁寧な学生とのコミュニケーションを重ねたことが、成功の何よりの鍵となったというのが、同社の"担任"制度から垣間見られます。
佐藤明生 企業の採用や広報・広告、SPツールにかかわる制作物でのライティングを得意とする。『マイナビ』では新卒の企業取材が主戦場。出版・広告・webを問わずに活動しており、旅行、地域情報、ライフスタイル情報誌、進学、週刊誌なども手がける。福島県会津若松市出身。 この著者の記事一覧はこちら

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