人間ドックの必要性 ― 年代別の検査項目

2025年4月25日(金)10時0分 マイナビニュース


「毎年職場の健康診断を受けているのに病気が見つかった」「毎日元気な人が急に倒れた」といった話を聞いたことはありませんか?
病気の予防、早期治療をするためには、定期的に詳しい検査をすることが大切です。中でも人間ドックを定期的に受けるのがおすすめです。
ここでは、人間ドックでやることや必要性、検査項目などをお伝えします。
○<健康診断と人間ドックの違い>
人間ドックは受けたことがないけれど、健康診断なら経験があるという人は多いと思います。健康診断と人間ドックは、似ているようで下の通り少し違います。
●健康診断
基本的な健康診査を受けることができます。
会社勤めをしている場合は、労働安全衛生法に基づいて年1回、定期健康診断が義務となっています。また、自営業や主婦の場合は、自治体などが主催する健康診断を受診できます。
●人間ドック
健康診断よりも他項目に渡る詳しい検査を行います。そのため、通常の健康診断では見つけられなかった病気や異常も発見されることがあります。
早期発見のためには健康診断以上に効果があると言えます。
○<がんは健康診断でも見つけにくい病気>
通常の健康診断では見つけにくい代表的な病気は「がん」です。
日本では、がんの死亡者数は38万2,504人(厚生労働省「2023年人口動態統計(確定数)」)となっており、日本人の死亡原因の1位を占めています。
がんの中には自覚症状が出た頃には進行しているものもあるため、がんで亡くなるのを防ぐためには、検診を受けて早期発見・早期治療する必要があります。なお健康診断のがん検診と、人間ドックのがん検診は次のように異なります。
●健康診断のがん検診
「集団全体の死亡率を下げる」のが目的のため、有効とわかっている検査方法を使う「対策型検診」。検査費用は無料または少額です。胃の状態を調べるX線検査、便に血が混じっているかどうかを調べる大腸がん検査、肺を調べる胸部X線検査などがあります。
ただし、初期段階のがんは見つからないがんや、膵臓がんや膀胱がん、食道がんのように健康診断の検査では見つけられないがんもあります。
●人間ドックのがん検診
医療機関などが任意で行う「任意型検診」。検査費用は全額自己負担です。
「個人の死亡リスクを下げる」のが目的のため、健康診断で行う検査以外にも自分で検診内容を選んで受診できます。がんの中でも見つけにくい食道がん、腎がん、甲状腺がん、膀胱がん、膵臓がんなども、腹部超音波検査や上腹部MRI検査で調べることができます。
ただし、有効性が確認されていない検査もあるため注意が必要です。
○■追加したい検査項目
人間ドックでは、コースで用意された検査の他に自分で検査を追加できます。
特に、次の場合は検査を追加しておくと安心です。
●親族に病気になった人がいる
親族で心筋梗塞や脳梗塞、狭心症などの心臓疾患・脳血管疾患、がんなど気になる病気になった人がいたら、その関連の検査を受けておきましょう。
たとえば親族に大腸がんになった人がいる場合は、「便潜血検査」とともに「大腸内視鏡検査」も選んでおくとより安心です。
●自分の年代がかかりやすい病気に合わせて項目を追加する
年代ごとになりやすい病気は異なります。詳しくは以下をチェックしましょう。
○■年代別・受けておきたい検査項目
年代によって次のようにかかりやすい病気は異なります。
人間ドックを受ける時には、年代に合った検査項目を追加しておくのがおすすめです。
○<30歳代で受けておきたい検査項目>
女性:定期的な乳がん検診
30代は病気になる可能性が低い年代です。ただし、女性系のがんは早い年齢から発症することがあるため、定期的な乳がん検診がおすすめです。
○<40歳代で受けておきたい検査項目>
男女ともに:胸部CT検査、大腸内視鏡検査、喀痰細胞診検査
女性:マンモグラフィ、乳房超音波検査、子宮頚部細胞診、骨密度測定
40歳代からは生活習慣病や慢性病が徐々に増えてきます。特に飲酒や喫煙の習慣があると、肝臓や肺の病気が起こりやすくなります。
また女性が閉経を迎えると、女性ホルモンが低下して骨密度が低くなっていくので注意が必要です。
○<50歳代以上で受けておきたい検査項目>
男女ともに:大腸内視鏡検査、胸部CT、喀痰細胞診、心臓ドック、脳ドック(MR検査)
男性:PSA検査(前立腺がん検査としての腫瘍マーカー検査)
女性:マンモグラフィ、乳房超音波検査、子宮頚部細胞診、骨密度測定
50歳代以上になるとさまざまな病気になる人が増えてきます。予防のため、定期的に検査を受けましょう。特に「がん」「脳卒中」「心臓病」に関する検査は重要です。
なお男性の場合、前立腺がん患者が増えていきます。PSA(腫瘍マーカー)検査も受けるといいでしょう。
最後に人間ドックの重要性について、呼吸器内科の専門医に聞いてみました。
人間ドックの目的は病気を早期に発見して治療すること、生活習慣病を予防することの2点になります。生活習慣病やがんなどの罹患率が高く、症状が出現しにくい病気の発見に有用とされています。生活習慣である糖尿病、高血圧、高脂血症などは心血管脳血管系疾患の危険因子であり、多くの場合、生活習慣を正しく管理することで十分に予防できる可能性もあります。がんに関しても早期に発見して適切な治療をおこなうことでがんによる死亡率を低下させることが期待できますし、また早期に発見することで身体への負担が少ない治療をうけることも可能になります。さらに、人間ドックで自分の体に問題ないことがわかると精神的に安心感を得ることができます。
デメリットは費用が高いこと、時間がかかること、過剰に診断してしまう可能性があること、すべての病気を発見できるわけでないことなどが挙げられますが、人間ドックにはオプション検査が豊富で、年齢・性別・既往歴などに合わせて組み合わせることで、自分に合った健康管理ができることも大きなメリットです。
より広い範囲で詳細に検査できる人間ドックで自分の健康状態を把握することは、未来の健康の維持や改善につなげられるほか、体の不安を解消し健康で豊かな人生を歩むことができます。
○竹下 正文(たけした まさふみ)先生
一宮西病院 呼吸器内科/副院長、呼吸器内科部長
資格:日本呼吸器学会 呼吸器専門医、日本内科学会 総合内科専門医、日本呼吸器内視鏡学会 気管支鏡専門医

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