栗山監督、サッカー界の知将に学んだ「選手との距離」

4月27日(土)6時0分 JBpress

写真:AP/アフロ

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 北海道日本ハムファイターズが復調してきた。1試合平均得点が2点台(4月24日まで)だった打撃陣にようやくエンジンがかかり、試合で23得点をあげ、首位・楽天に連勝、貯金も1とした。

 それにしても、「オープナー」や「守備シフト」など、ファイターズが試みる戦術には驚きがある。その賛否はあれど、選手と首脳陣の間によほど強い信頼関係がないと、こうした「今までにない戦術」は遂行できないはずだ。

 この選手との関係を指揮官・栗山英樹は、自らの新刊『稚心を去る 一流とそれ以外の差はどこにあるのか』で綴っている。(JBpress)

(※)本稿は『稚心を去る』栗山英樹・著、ワニブックス、2019)の一部を抜粋・再編集したものです


「寄り」と「引き」のバランス 

 ある程度、選手と距離を取って、離れたところから見ていると、そのほうがかえってコンディションを感じ取れたりすることがある。全然笑顔がなかったり、とてもイライラしている感じがしたり、いま悩んでいるんだなということが伝わってきたり、そういうのが不思議と見えてくる。

 よく見えるから、不安そうにしているなら背中を押してやろうと思う。それは言葉なのか、起用法なのか、逆に本人を怒らせるくらいの使い方をして、吹っ切らせてみてはどうかとか、いろいろ考える。

 それも監督の仕事だ。
 
 近くにいると、どうしても声をかけたくなる。そして声をかけると、どうしても余計なことまで言いたくなってしまう。

 世間話で、緊張がほぐれることもある。ただ、その緊張のほぐれが、大切にしてほしい危機感まで薄れさせてしまうこともある。そうさせてしまうことは、できれば避けたい。

 だから、そばに行くのは必要なときだけと心掛けている。
 
 いま思うと、監督1年目はその距離が相当近かった。ちょっとイヤな顔をされたり、あいさつの言葉が雑だったりすると、すぐに近寄って話しかけていた。それだけ不安だったんだと思う。

 それが変わるきっかけとなったのは、サッカーの名門クラブ、マンチェスター・ユナイテッドで、 27年もの長きにわたって指揮を執ったアレックス・ファーガソン元監督のことが書かれた、小さな記事だ。

「すべて指示していたものを、コーチに任せて一歩引くようにしたら、それまで見えなかったものがいろいろ見え始めた」という内容だった。

 それに感化され、少し選手と距離を取ってみようと試してみるようになった。

 それからだ。

 ただ、「引き」と「俯瞰」だけだと、どうしても客観的になり過ぎてしまうので、「寄り」で接してみようとするときは、できるだけ思い切って選手の中に入ってみるようにしている。

 この選手はどうしてこんなに苦しんでいるんだろうと思ったとき、その選手になり切るくらいのつもりで考えてみないと、わからないこともあるような気がするからだ。

 客観的に見ると、そんなことで苦しんでいないで、さっさとその悩みの種を捨ててしまえばいいのにと思う。たとえば、それはプライドや、自信からくるものだったりする。

 でも、彼にはそれを捨てられない理由が何かある。それを理解してあげられないと、接し方も頭ごなしになりがちだ。それが「引き」や「俯瞰」のデメリットだと思う。

 だからこそ、いつもバランスが必要なのだ。(栗山英樹・著『稚心を去る』より再編集)

筆者:栗山 英樹

JBpress

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