山田詠美のこだわり 無音の仕事部屋、原稿はサインペンで

4月27日(金)16時0分 NEWSポストセブン

執筆時のこだわりを明かした山田詠美さん

写真を拡大

 女優・杏と旅人・大倉眞一郎さんがナビゲーターを務め、11年目を迎えた人気ラジオ番組『BOOK BAR』(J-WAVE。土曜22時〜)。杏と大倉眞一郎さんがそれぞれ1冊好きな本を持ち寄って四方山話を繰り広げる同番組に4月12日、スペシャルゲストとして作家・山田詠美さんが招かれた。


 滅多にゲストを呼ばないという番組に詠美さんが招かれたのは、読書の嗜好が全く違う2人が、過去にどちらも詠美さんの小説(杏は直木賞受賞作『ソウルミュージックラバーズオンリー』、大倉さんは『賢者の愛』)を挙げた人だから。2人は詠美さんに興味津々。話は大いに盛り上がった。日経新聞では小説「つみびと」を、そして本誌・女性セブンではエッセイ「日々甘露苦露」を連載し、同連載を『吉祥寺デイズ』として単行本化した詠美さんが、知られざる“創作デイズin吉祥寺”を明かした。


◆小説を書くのは楽しくない


 頭の中の抽出を整理できていないから自分は小説が書けないと嘆く大倉さんに、詠美さんが言う。


山田詠美(以下、詠美):書かなくたっていいじゃないですか。そんな面倒くさいから。書かない人種の方がエレガントで素敵だと思いますけど。


大倉:いや〜、それ言われちゃうともう、なんか、何も言えねぇって感じになりますけど(笑い)。小説って書いていて楽しいですか?


詠美:楽しくないです! もう全然。


大倉:楽しくないんですか!?


詠美:うん(キッパリと)。楽しくないですけど、それを書かないと自分の国に入れないって感じがして。なんかパスポートの更新のように書いているような感じがしますね。自分国の滞在許可を得るために、次の新しい更新をしなくちゃいけないんで、小説を書くという。


大倉:でも、苦しくはないんですよね?


詠美:う〜〜ん、苦しいんですけど、そういう時は、自分をマゾヒストに改造して、これが快楽なんだって脳内に思いこませて書くという感じです。実際には、全然楽しくないんですよね。


◆執筆は1日3時間くらい


大倉:執筆態勢について、ちょっと伺いたいんですが。


詠美:私、近所の西荻窪という所に仕事場を借りているんですね。そこに午前中に行って、それでダラダラしながらようやく机に座って、それで大体、午後の3時くらいには終えて家に帰るという感じです。


大倉:大体何時間ですか?


詠美:3時間くらいですかね、書いているのは。


杏:どんな部屋なんですか?


詠美:電話もないし食べものもない。なんにもないって感じですね。


杏:テレビとかはあるんですか?


詠美:ないです。


杏:もうじゃあ、例えば机と…。


詠美:うん。でも私、気が散るので、気が散った時のために雑誌とかをいっぱい用意しています。


大倉:書き始めるまでに多少時間を要するタイプですか?


詠美:私、ものすごく時間がいるタイプです。


大倉:それは雑誌か何かで時間を?


詠美:そうですね。作家によっていろいろあるみたいですが。



 詠美さんは本誌インタビューでも「端から端まで週刊誌を読みます」と公言している。『吉祥寺デイズ』には、世間を騒がせたゴシップやスキャンダルの話題が度々登場するが、それだけではない。「だって、経験なんてもちろんないのに、時には殺人事件について書かなきゃいけないんだから」と語ってもいた。日経新聞夕刊で連載中の小説「つみびと」は、親による虐待、育児放棄をテーマにしていることを考えても、雑誌を読む時間が「気が散った時のため」だけではないのがわかる。


◆原稿はサインペンで綴る


 そして話は原稿用紙に直筆で綴った『吉祥寺デイズ』のあとがきへ。


杏:ビックリしたのが、手書きなんですよね。


詠美:そうです。今は結構珍しいって感じで。編集者は大変かなって思うんですけど(笑い)。


大倉:枡目い〜っぱいに書くんですよね。


詠美:そうなんです。だから割と読みやすいかなと思うんですけど。


杏:すごい読みやすいです!


大倉:ぼくが最初に感じたのは、コピーライターの字に似ているなと。と同時に、ぼくが大好きな中上健次の字に似ているなと思って。


詠美:あー、あの人は集計用紙にびっしり書いていますよね。


大倉:書いていますよね。そこにいろいろ校正する時に、めちゃくちゃな入れ方をしているので。


詠美:私のはほとんど直しもないので、読みやすいと思います(笑い)。


大倉:えっ!? 一度書くと、もう直しを入れないタイプなんですか。


詠美:だから机に座るまで時間がかかるんですよ。


杏:これはペンですか?


詠美:サインペンです。


杏:サインペンなんだ。すごーい!!


詠美:だから水をこぼしたら終わりなんです(笑い)。


杏&大倉:うわー!!(笑い)


杏:原稿用紙はこれ、みたいなのはあるんですか?


詠美:編集者に持ち回りでプレゼントしてもらっています。色がついていて、400字詰めのA4サイズのものなんですけど。端っこに「ヘイ、ブラザー」か「ラブ&ピース」のどっちかが書いてあります。


大倉:(笑い)そうでないと、気が乗らないってことなんですか?


詠美:まあ…そうでもないんですけど、忖度(笑い)。


◆執筆中に音楽は聴かない


大倉:先程、(執筆は)何もない部屋でとおっしゃっていましたが、音楽も聴かないんですか?


詠美:全く聴かないですね。むしろ音楽とか音とかが全然ダメなので。水道の水が垂れる音でもダメですね。特に音楽が嫌かもしれない。自分で文章のリズムとかで、書いている時に作曲するような感じが来る時があるんですけど、そういう時、音楽は本当に邪魔なので。


杏:(執筆は)3時間くらいとおっしゃっていたんですけど、乗りに乗っちゃって、ずっといたということもあるんですか?



詠美:ないんです。私が先生とお呼びしていた宇野千代先生の教えで、筆が乗ったら筆を置きなさい、そうしないと滑ってしまうと。夜書いた手紙みたいになってしまう恐れがあるので。あ、興が乗ってきたな、あたし結構いいじゃん、天才、みたいに思い始めたら絶対に止めるようにしています。


◆〆切に追われるのは嫌


大倉:初めてエッセイを読ませていただいたんですが、丁寧に丁寧に書かれるんですね。ちょっとイメージが違っていました。ただ、その中に次々と毒が盛り込まれていてですね。


詠美:もう全方位射撃ですね。


大倉:毒を吐きまくるので、そこがやっぱり面白いなあと思って。


杏:週刊誌で連載をされていたものがまとまっているので、いろんな時事ネタとかゴシップとか、「あ、記憶に新しい!」みたいなものがいっぱいあるので、熱いうちに味わいたい、みたいなものですよね。週刊連載ってあっと言う間に次、次、次って来ちゃいますよね。書き溜めとかはなく…。


詠美:やっぱり週刊誌だとアップトゥーデートになるべくした方がいいので、だけど〆切に追われるのは嫌なので、ちゃんと日にちを決めて、この日はこれを書こうって決めてやっています。


杏:私、結構ギリギリとか、〆切当日だったりするので、見習いたい(笑い)。


◆「マル禁子供」本こそ子供に


 番組の冒頭では、12才の女の子からの「オススメのエッセイ集を教えてください」というメッセージを紹介していた。再びその話に戻り──。


杏:オビに「マル禁子供」って書いてあるんですよね。


大倉:12才のかたからメールをいただいて、今日は山田詠美さんのエッセイだよーっていうことだったんですが、「大人の愉しみマル禁子供」ですからね。ただこれ、子供オッケーですよ。


詠美:マル禁子供というものの方が子供は愉しいと思うんですよね。私自身も、これは子供の頃に読んじゃダメだよって言われていたものとか、図書館に置けないよ、みたいなものが絶対読みたいと思いましたから。


杏:このエッセイを読むと、もうちょっとテレビとか注意して見てみようかなとか、見方が変わりますよね。


大倉:これね、すんごく面白いですから。ぜひ『吉祥寺デイズ』を読んでいただければ嬉しいなあ。


※女性セブン2018年5月10・17日号

NEWSポストセブン

「山田詠美」をもっと詳しく

「山田詠美」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ