デイトレードはリスクが高い?債券を持つメリットは?「投資のリターンを最大化する一番の方法」を金融ジャーナリストが伝授【2025マネー記事セレクション】

2025年4月28日(月)12時30分 婦人公論.jp


(写真提供:Photo AC)

2024年に『婦人公論.jp』で反響を得た「マネー」に関する記事から、今あらためて読み直したい1本をお届けします。(初公開日:2024年11月25日)
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金融庁が公表した「NISA口座の利用状況調査」によると、2024年6月末時点のNISA口座数は2427万6789口座で、2024年3月末から約105万口座増加しました。そのようななか、記者や金融ジャーナリストとして活動する、カナダ出身のニコラ・ベルベさんは「投資にリスクはつきもの。だが、投資しないのはもっとリスクだ」と語っています。そこで今回は、ニコラさんのベストセラー『年1時間で億になる投資の正解』から、一部を抜粋してご紹介します。

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ポートフォリオにおける株式の役割


バランスの良いポートフォリオ(資産の構成)には少なくとも2つの構成要素がある。株式と債券である。

株式はある会社の持ち分を表す。つまり、ある会社の株式を買った投資家は、その会社の一部を所有することになる。会社の利益の一部はその投資家のものだ。

株価は会社の財政状況を反映するものであり、投資家は未来に関心があるので、株式の価格(株価)には会社が将来にわたって生み出す利益が織り込まれている。

株はその日に買ってその日のうちに売ることも可能だ。こうした行為をデイトレードという。デイトレードで金儲けする方法を説く書籍、講座、セミナーはたくさんある。インターネット上にはデイトレードに特化したエコシステムが存在するほどだ。あなたの近所や親戚にも、デイトレでひと財産つくるんだと息巻いている人がいるのではないか。

残念ながらデイトレードに関する研究では、カジノでルーレットに賭けるよりリスクが高いという結論が出ている(1)。僕としては、投資家は何があってもデイトレードにだけは近づいてはいけないと思っている。

デイトレードほど短期間ではなくても、株を買ってほんの数カ月後に売却する人は多い。

リターンを最大化するには


頻繁に取引をすればリターンは高まるのだろうか。

むしろその逆で、リターンは低下する。複数の研究で、取引の頻度とリターンには負の相関があることが示されている。アメリカで6万5000人以上の投資家を分析した研究では、市場で特に活発に活動した投資家のリターンは、特に何もしなかった投資家の半分だった(2)。

運用資産というのは石鹸のようなものだ、という格言もある。触る回数が増えるほど、どんどん小さくなる。

株式投資のリターンを最大化する一番良い方法は、長期間(理想的には数十年)にわたって株に勝手に働いてもらうことだ。

過去を振り返ると、北米とヨーロッパの株式市場は10年のうちほぼ7年は上昇している。投資家の資産が減るのは、10年中3年だけなのだ。長い目で見れば、オッズは投資家にかなり有利だ。

だが翌週、翌月、あるいは翌年の株式相場がどちらに動くか、予測するのは不可能だ。ニューヨーク証券取引所はある年に22%株価が上がったのに、翌年は9%下落し、さらに翌年には14%上昇するといったことも珍しくない。

経済と株式市場の関係


投資家のラルフ・ワンガーは犬と飼い主の関係をたとえに使って、経済と株式市場の関係を説明する。こんな具合に。

株式市場を散歩に連れ出されて超ご機嫌な犬と考えてみよう。長いヒモの端っこを飼い主に握られてはいるが、好き勝手にあちらこちらを嗅ぎまわっている。


(写真提供:Photo AC)

ここでいう飼い主、つまり経済はニューヨークシティのコロンバスサークルからセントラルパークを抜けてメトロポリタン美術館まで散歩している。

道すがら犬は右に行ったと思えば左に行くなど、その動きを正確に予測するのは不可能だ。だが長い目で見れば、どこへ向かっているかははっきりわかる。飼い主と一緒におよそ時速4キロで北東へ向かっているのだ。

ワンガーはこの小話をこう結んでいる。

「株式市場の動向をフォローしている人の大半が、飼い主ではなく犬ばかり見ているのには驚くばかりだ」(3)

債券の役割


株式市場のボラティリティ(変動性)を許容するのにも限度があるので、バランス型ポートフォリオには通常少なくとももう一つ、債券という資産クラスが含まれている。

債券を買うのは、政府や企業などの借り手にお金を貸すという行為にほかならない。借り手は将来、利子をつけてお金を返すことを約束する。

債券において重要なのは、借り手の質だ。一番安全とされるのはアメリカやその他の先進国の政府が発行する債券だ。なぜなら企業と違って政府には徴税権があるため、運営に必要な資金を集めることができるからだ。

債券は定額の収入を生み出し、保有者に現金払い利息のかたちで支払われる。債券の価格は金利変動に左右されるため、一番価格が安定しているのは残存期間が短いもの、たとえば満期が1〜5年のものだ。

国債は政府が返済を保証しているためリスクが低く、このため株式より一般的にリターンは低い。こうした理由から債券は使えない、金持ちになるのに役に立たないと考える投資家も多い。

だが債券を保有することで、株式を落ち着いて運用できるようになる。それが債券の最大のメリットだ。

株式市場が急落したときも、“退屈な”債券の価格は株式ほど変動しにくい。

それが船を安定させる錨(いかり)のような役割を果たし、投資家が冷静さを保つのに役立つ。さらに債券はデフレ期(モノの価格が下落する時期。20世紀には二〜三度発生した)でも価値が保たれるので、運用資産を守るのに有用だ。

古いことわざにこんなものがある。

「株式を買うのはうまいものを食べるため、債券を買うのはぐっすり眠るため」

・参考文献
(1)Charles V. Harlow and Michael D. Kinsman, “The Electric Day Trader and Ruin,” Pepperdine Graziadio Business Review, 1999.
(2)Brad M. Barber et al, “Trading Is Hazardous to Your Wealth: The Common Stock Investment Performance of Individual Investors,” The Journal of Finance, April 2000.
(3)William Bernstein, The Four Pillars of Investing: Lessons for Building a Winning Portfolio, McGraw-Hill, Kindle version, 2010, p. 216.(『投資「4つの黄金則」』ウィリアム・バーンスタイン著、渡会圭子訳、ソフトバンクパブリッシング、2003年)

※本稿は、『年1時間で億になる投資の正解』(新潮社)の一部を再編集したものです。

婦人公論.jp

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