日本No.1ヘッドハンターが教える、強いキャリアのつくり方 第8回 2025年の転職市場はどうなるのか? コンサル業界の動向を探る

2025年4月29日(火)12時0分 マイナビニュース


戦略コンサルタント、投資銀行・ファンド、外資系エグゼクティブ、起業家など1000人を超えるビジネスリーダーのキャリアチェンジを支援してきた渡辺秀和氏(株式会社コンコードエグゼクティブグループ 代表取締役社長CEO)が、キャリアアップを目指すビジネスパーソンの疑問・お悩みに答えます。
今回のお悩みは「コンサルティング業界への転職を考えているのですが、世界情勢の混迷による影響はありますか」です。
Q. コンサルティング業界への転職を考えているのですが、世界情勢の混迷による影響はありますか。
A. 2025年度前半のコンサルティング業界は、積極的な採用が続くと予想されます。転職をお考えの方にとっては、好機といえるでしょう。
現在、米国のトランプ政権による外交・通商政策が、世界経済に大きな影響を与えています。関税引き上げなどの強硬な措置に、日本の政府や企業も対応を迫られている状況です。
国際情勢が不透明さを増すなかで、転職市場への悪影響を懸念する方も多いでしょう。そこで今回は、ビジネスパーソンから高い人気を集めているコンサルティング業界に焦点を当て、最新の転職市場の動向を紹介します。
○2025年も成長が見込まれるコンサル業界
競争が激しさを増す中、多くの企業でDXの推進とともに、生成AIやドローンといった先進技術の活用が加速しています。世界最大級のITリサーチ企業である米ガートナーも、2025年の生成AI関連投資額は世界全体で6,440億ドル(約96兆円)に達し、2024年比で76.4%増加すると予想しています。このような潮流を受けて、コンサルティングファームへのDX・AI関連のプロジェクトの依頼が一段と増えるでしょう。
さらに、人権デューデリジェンスなどのSDGs・ESG投資への対応や、地政学リスクに関するアドバイザリーのような新たな領域も広がり、コンサルティング業界の活性化につながっています。
○一部のグローバルファームでは成長に陰りも
このようにコンサル市場全体は成長が続いていますが、外資系ファームの一部では成長に陰りが見られる点には注意が必要です。
米国本社でのリストラ実施など、グローバルファームに関するネガティブな報道を目にされた方もいらっしゃるかもしれません。ウクライナ危機や米国経済の減速懸念により、米欧でのプロジェクトがやや減少しており、それが不調の一因となっています。
一方、グローバルファームの中でも、大規模なDX推進、AI活用のプロジェクトを中心に、高成長を維持している企業もあります。
業績が好調なファームとそうでないファームの差が徐々に鮮明になっており、東京オフィスにおける採用意欲にも、その違いが顕著に表れてきているのが実態です。
○日系ファームを押し上げる「2つの強み」
グローバルファームで好不調の差が広がる一方、国内系戦略ファームや総合ファームなど、日系のコンサルティングファームは堅調に成長を続けています。
日系ファームが好調な要因は、主に以下の2点です。
○1. 円安による価格競争力の向上
ここ数年の円安・ドル高傾向は、国内拠点を中心とする日系ファームにとって、価格競争面で追い風となっています。グローバルファームでは、プロジェクト単価がドルやユーロ基準で設定されることが多く、円建てではフィーが高くなりがちです。一方、日系ファームは為替の影響を受けにくく、コスト競争力の向上を背景に、受注を伸ばしています。
○2. 採用力向上による組織体制の強化
日系ファームはグローバルファームと異なり、海外本社に支払うロイヤルティや収益分配といったコストが発生しません。そのため、クライアントから得たフィーを社員に還元する柔軟な仕組みを構築しやすく、報酬水準の引き上げも可能です。待遇が向上すれば、優秀な人材の採用や組織体制の強化にもつながります。
このような特徴を持つ日系ファームの中でも、特に注目されているのが「日系グロースファーム」です。これは、外資系戦略ファームや大手総合ファームで活躍してきたコンサルタントたちが独立して立ち上げた新興ファームを指します。
これらのファームでは、グローバルファームを上回る給与水準を提示することも珍しくありません。上場を視野に入れているケースも多く、「ベンチャー企業で働く醍醐味」と「コンサルファーム水準の高い報酬」を両立できるキャリアとして、優秀なコンサルファーム出身者から転職先として注目を集め、組織を急拡大させています。
○未経験や40代以上の方も転職しやすく
ここまで見てきた通り、日本のコンサルティング業界は全体として着実な成長を続けており、さらなる規模拡大のために、積極的な採用を行っています。
また、コンサルタントは人材市場で高く評価され、PEファンドや事業会社の経営幹部ポジションなどへ転職する人も多いのです。そのため、継続的な採用をする必要に迫られているという側面もあります。
このような背景から、コンサル業界の採用は2025年も堅調であると予想されます。直近も、トランプ政権の動向や株式市場の影響を受けることなく、各ファームの採用意欲は非常に旺盛な状態が続いています。
なお、コンサル業界は未経験者にも門戸を開いており、大企業で勤務するビジネスパーソンなどを積極的に受け入れています。さらに近年では、国家公務員や地方公務員の方の採用も積極的です。当社を通じてコンサル業界へ転職した公務員の方は、5年間で3倍に増えています。
また、最近では40代のコンサル未経験者にも転職のチャンスが開かれています。コンサルファームでは先端テクノロジーやM&A、事業投資、業務改革などの高度な知見を持つ人材を求めており、40代の優秀なビジネスリーダーの職務経験をいかせる機会が増えているのです。
コンサル業界では年齢や業界経験に関わらず、多様なバックグラウンドを持つ人材が活躍できるフィールドが、ますます広がっています。
今回はコンサルティング業界に焦点を当てて紹介しましたが、スタートアップや総合商社をはじめとする日系大手企業、PEファンドやVCなどでも積極的な採用が続いています。キャリアチェンジを検討しているビジネスリーダーの皆さんにとって、当面は良好な人材市場が続くでしょう。
渡辺秀和 わたなべひでかず 株式会社コンコードエグゼクティブグループ 代表取締役社長CEO。一橋大学を卒業後、三和総合研究所を経て、コンコードエグゼクティブグループを設立。1000人を超えるビジネスリーダーのキャリアチェンジを支援し、「日本ヘッドハンター大賞」コンサルティング部門で初代MVPを受賞。2017年に東京大学で開講されたキャリア設計の授業「キャリア・マーケットデザイン」のコースディレクターを務めるなど、学生へのキャリア教育活動も積極的に行っている。著書に『未来をつくるキャリアの授業』(日本経済新聞出版社)、『コンサル業界大研究』(産学社)など。
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