高額転売が相次ぐ万博記念硬貨、資産価値はあるのか専門家が解説
2025年4月30日(水)12時0分 マイナビニュース
4月13日から開幕している大阪・関西万博を記念して、財務省は「2025年日本国際博覧会記念貨幣」を発行した。品切れからか、記念貨幣の高額転売が相次いでいるという報道もある。これらの硬貨の資産価値はどれくらいなのか、専門家に話を聞いてみた。
高額転売が相次ぐ「ミャクミャク記念硬貨」
財務省がこの度発行した硬貨は1万円金貨幣と3種類の1,000円銀貨幣、そして500円貨幣の5種類。このうち500円貨幣は全国の金融機関で4月8日から引き換えを受け付けており、一部の店舗ではすでに「品切れ」状態との報道もある。
実際にSNS上では、「市内の郵便局や銀行に何件か問い合わせたら、どこも品切れ」「ミャクミャクの500円の記念硬貨GETできず残念」などという投稿が見られた。
品切れからか、“高額転売が相次いでいる”との報道もある万博の記念貨幣だが、これらの記念硬貨の資産価値はどれほどなのだろうか。アンティークコインを取り扱う資産運用コンサルティング事業のクレア・ライフ・パートナーズで、コインの仕入れを担当する成瀬 顕音氏に、話を聞いてみた。
記念硬貨の価値は今後どうなる?
こうした記念硬貨は価値がつきやすいのでしょうか?
「記念硬貨は発行数、デザイン、話題性により一時的なプレミア価格がつくことがあります。特に注目を集めるイベントに関連した記念貨幣は、初期の流通段階で需要が供給を上回り、フリマサイトなどで高額転売されることがしばしば見られます。
今回の大阪・関西万博記念500円硬貨も、話題性の高さから入手困難を嘆く声が見られました。しかし実際には、発行枚数が232.8万枚と多く、全国の金融機関で交換が可能であったため、長期的にみて価値が上がり続けるかは不透明です。
記念硬貨の価値は、保存状態の良さや希少性、素材(金・銀)などに強く依存します。コレクター市場では、数量が極めて限られているものや特殊なエラー硬貨などが高値で取引される傾向があります。そのため、こうした記念硬貨は一時的な注目は集めやすいものの、「価値がつきやすい」と断言するには慎重な判断が求められます。」
過去に開催された万博の硬貨の価値はどれほどでしょうか?
「過去の万博に関連して発行された記念硬貨の価格推移を見ると、長期的に大きな値上がりをしている例は非常に限られています。
たとえば1970年の大阪万博では、100円白銅貨幣が発行されましたが、現在の市場価格は未使用のものでも額面〜150円程度にとどまっています。また、2005年の愛知万博では500円バイカラー・クラッド貨幣が発行され、市場価格は現在500円から1,000円前後で推移しています。
これらの事例から分かるように、万博の記念貨幣は一定の記念性やコレクション価値はあっても、資産価値の面では限定的です。特に発行枚数が多い場合、プレミアはつきにくく、地金価格に連動する金貨や銀貨でない限り、大幅な価格上昇は期待しにくいのが現実です。」
硬貨は5種類ありますが、それぞれ価値が上がっていくと予想されますか?
「今回発行された記念硬貨5種類のうち、500円貨幣は発行枚数が232万8千枚と多く、流通量が多いため、長期的に見て価値が大きく上がる可能性は低いと考えられます。
一方、1,000円銀貨は各5万枚、1万円金貨は3万枚と、比較的発行数が限られていますが、市場全体で見ると希少性が特別に高いとは必ずしも言えません。ただし、保存状態が良好であったり、需要が集中した場合にはプレミアがつく可能性は十分にあります。
特に1万円金貨については、近年の金価格の上昇傾向を踏まえると、素材としての価値に裏付けられた資産性も期待できます。全体としては、収集や記念品としての魅力が強く、価格上昇は限定的と見ておくのが現実的です。」
記念硬貨の資産価値を見極めるコツ
こうした記念硬貨は資産としてはありなのでしょうか?
「記念硬貨は基本的に記念品やコレクションとしての側面が強く、資産として保有する際は慎重な判断が求められます。特に金貨や銀貨は素材としての価値があり、価格の下支えになるため一定の資産性も期待できますが、評価は地金価格や保存状態、市場の需給に左右されます。
資産性を重視する場合には、歴史的背景や芸術的価値を持つ海外の記念金貨やアンティークコインに注目するのも一つの選択肢です。これらは国際的な市場で評価されており、流動性が高く、長期的な資産保全や分散投資の観点からも有用です。
記念硬貨を資産とするには、単に収集するだけでなく、保管や売却時の市場動向にも目を向ける姿勢が重要です。」