壮絶すぎる! 『ゲゲゲの鬼太郎』の生みの親、水木しげるの人生を追体験できる記念館がリニューアル

2024年5月2日(木)21時15分 All About

水木しげるさんの故郷、鳥取県境港市にある「水木しげる記念館」。2024年4月にリニューアルオープンし、水木さんの人となりがよく分かる展示になりました。同館と周辺の町の様子をリポートします。

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水木しげるさんといえば、『ゲゲゲの鬼太郎』や『悪魔くん』などの作品があまりにも有名。しかし、戦争で片腕を失ったり、質屋通いをするほどの極貧生活を経験したり、かなり壮絶な人生を送ったことはあまり知られていないかも?

“人となり”にフィーチャーした展示が見もの「水木しげる記念館」

波乱万丈の水木しげるさんの人生を追体験できるのが、故郷である鳥取県境港市にある「水木しげる記念館」。13カ月の休館を経てフルリニューアルし、4月20日にオープンしました。以前の作品主体の展示から、より水木さんの人生に強くスポットライトをあてた展示に変わっています。先日、プレスツアーに参加し、リニューアル後の館内や周辺を見てきました。
常設展は少年時代から晩年まで、水木さんの人生を丁寧にたどっています。特に見応えがあるのが、第2章の「水木しげると戦争」の展示。戦争に行ったのは3年間で、水木さんの93年の生涯の中では短い期間ではあるのですが、展示ではかなりのボリュームを割いています。水木さんは戦争中、古兵によるいじめ、戦友との死別、マラリアの罹患(りかん)、そして爆撃によって左腕を失うなど、数々の過酷な経験をしました。
水木さんのコアなファンの多くは「戦争は先生の作品にも大きな影響を及ぼしている」と考えているようです。例えば、『ゲゲゲの鬼太郎』の中に、ねずみ男の「けんかはよせ、腹が減るぞ」というセリフがあるのですが、これも戦争反対を平易な言葉で表現したのかもしれません。
戦争から戻ってマンガ家になってからも、安い原稿料に苦しむ時代が長く続き、決して暮らしはラクではありませんでした。その頃の様子を描いたのが、2010年に放映されたNHK連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』です。ただ、貧乏描写は現実よりかなりマイルドだったとか。リアルな貧乏具合は朝8時に流すには悲惨すぎたようです。
有名な「なまけ者になりなさい」をはじめ、数々の名言を残している水木さん。夫婦円満を長く続ける秘訣(ひけつ)を聞かれた時は、「相手に何も要求しない 何も期待しない」と答えています。
「若い貧乏な頃も、大御所になっても、発言は一貫していてブレがない。文化功労者に選ばれても屁の話が大好き。生き様やスタンスが変わっていないのが水木の魅力だと思います」と話す館長の庄司さんは、実はアニメ『ゲゲゲの鬼太郎』第6期に庄司おじさんとして登場しています。

妖怪で町おこし! 至る所に妖怪の気配を感じる町

記念館のある鳥取県境港市は、水木作品で町おこしをしています。いわば、町全体が水木しげるワールド。ファンにはたまりません。
まず最寄りの空港の名前も「米子鬼太郎空港」。そして、米子と境港はラッピングが施された鬼太郎列車が結んでいます。
記念館の前の道は、約800メートル続く、その名も水木しげるロード。道の両側には妖怪のブロンズ像が並んでいます。その数は増え続けており、最近178体目が誕生しました。
通りには、実写版『ゲゲゲの鬼太郎』公開の際に主役のウエンツ瑛士さんが参拝に訪れた妖怪神社もあります。

あの目玉おやじを食べられる! 「妖怪食品研究所」

記念館のとなりにある謎めいた店は、その名も「妖怪食品研究所」。目玉おやじそっくりの和菓子(ねりきり)を売っています。食べる前に、ユニークな写真を撮るのが大人気。
こういう商品は見た目重視で味がイマイチなこともありますが、こちらは島根県出雲市の老舗和菓子店「彩雲堂」とコラボレーションした自信作。出雲といえばお茶文化で有名です。しっかりとした上品な甘さがあります。

散歩の途中で立ち寄りたい「ゲゲゲの妖怪楽園」

散策の休憩にぴったりなのが、水木しげるロードから1本入った記念館のすぐ裏にあるプチテーマパーク「ゲゲゲの妖怪楽園」。テーブルの置かれた広場があり、誰でも自由に休憩してOK。オリジナルお土産を購入したり、「妖怪ラテ」や「妖怪クリームソーダ」などのカフェメニューも楽しめます。全国から多くの水木ファンが訪れ、ファンにとっては「ここに来れば誰かいる」という場所にもなっているそう。

海鮮と日本酒、境港のグルメに舌鼓も!

境港市は三方を海に囲まれた珍しい地形で、境港でとれる海の幸が名物です。ここまできたら、楽しまない手はありません。観光客に人気なのが「境港水産物直売センター」。日本一の水揚げ量を誇る紅ズワイガニをはじめ、本マグロや岩ガキなど、旬の魚がずらりと並びます。イートインスペースもあり、その場で食べることも可能。もちろん配送もできます。
市内には海鮮がウリの食堂もたくさんあります。食堂「旨いもん市場 海月丸」もその1つ。境港出身の店主が「地元の人にも観光客にも愛される海鮮料理を提供したい」とオープン。名物の「てっぺん海鮮丼」はごはんが見えないボリュームです。この日は紅ズワイカニやホタルイカ、エビ、境港サーモンなど旬の食材がどっさり乗っていました。魚は日替わりです。
うまい料理に合う日本酒もあります。境港市にある1865年創業の「千代むすび酒造」は、精米設備を備え、自社精米しているのが特徴の1つ。鳥取県独自の酒米である強力を使った日本酒や、最近注目のスパークリング日本酒(SORAH)などをつくっています。27カ国に輸出しており、海外でも好評。最近は焼酎やウォッカ、ウイスキーづくりにも挑戦しています。水木しげるロードに角打ちを楽しめる店舗があります。
水木さんの人生を追体験しながら、町のそこかしこに妖怪の気配を感じ、港町ならではの美味を堪能……。境港では、そんな楽しくおいしい旅を楽しめます。
(C)水木プロダクション
この記事の筆者:古屋 江美子 プロフィール
旅行やグルメを中心にWebや雑誌など様々な媒体で活躍。これまでに訪れた国は約40ヶ国。出身地である山梨県の「やまなし大使」としてもさまざまな情報を発信中。
(文:古屋 江美子)

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