新田真剣佑、『るろうに剣心』の壮絶な復讐者から“月9”へ
2021年5月5日(水)12時15分 シネマカフェ
月9では、大ヒット海外ドラマをリメイクした「SUITS/スーツ」も記憶に新しい中での法廷ものだが、刑事裁判官が主人公になるドラマは民放連ドラ史上初という。そして今作で裁判所書記官・石倉文太を演じる新田真剣佑も、初めての月9に挑んでいる。
「HERO」を思い出す声が続出!刑事裁判官を描くドラマ
今作は、「週刊モーニング」(講談社)で連載されている浅見理都の同名漫画をドラマ化。ドラマ版の入間みちおは、竹野内さんの風貌や温かみある雰囲気を生かしながら、口ヒゲを生やして服装はカジュアルに、世間一般の裁判官のイメージとはほど遠いゆるい空気をまとっている。
みちおが所属する東京地方裁判所第3支部第1刑事部(通称イチケイ)には、新田さんが演じる裁判所書記官の石倉ほか、お人よしの主任書記官・川添博司(中村梅雀)、3つ子の母でもある姉御肌の裁判所書記官・浜谷澪(桜井ユキ)、物おじしない新人の裁判所事務官・一ノ瀬糸子(水谷果穂)といった顔ぶれが揃い、有罪率99.9%といわれる日本の刑事裁判において30件あまりの無罪判決に関わった伝説の裁判官・駒沢義男(小日向文世)が部長を務めている。
木村拓哉が型破りな検事を演じた「HERO」を思い起こさせるとすでに話題となっており、検事の井出伊織(山崎育三郎)や城島怜治(升毅)までも、いつの間にか、みちおのペースに巻き込まれイレギュラーな行動をサポート。「キャスト陣がいいバランス」と視聴者からも好評だ。
そんなイチケイに、若くして特例判事補になった東大法学部出身の坂間千鶴(黒木華)が赴任する。彼女はいわゆる“ザ・裁判官”のイメージそのままの堅物タイプで、事件の処理件数が極端に少なく、会社なら倒産レベルの赤字状態であるイチケイを立て直す役割を任されている。
その赤字状態の原因、みちおが“職権発動”と裁判所主導の捜査権の発動を宣言し(刑事訴訟法128条には「裁判所は、事実発見のため必要があるときは、検証することができる」と定められている)、疑問に思った事件の現場検証を何度も行い、真相を深掘りしていく姿は、イチケイでは「入間る」と呼ばれている。それゆえにみちおの裁判は見応えがあり、傍聴マニアによる“みちおを見守る会”も存在するほど。
一方、迅速さと効率性を求めるあまり、傍聴マニアから“ベルトコンベアー裁判官”と名づけられてしまう坂間は、みちおのスタイルは全く理解ができずイライラが募るばかり。イチケイの仲間からは「坂間る」と皮肉られる。この正反対な2人の化学反応を見守り、どこか楽しんでいる様子の石倉はイチケイのムードメーカーであり、みちおに振り回されるイチケイメンバーとの橋渡し役となっている。
『るろうに剣心』から一転、“陽キャ”の元傍聴マニアに!?
新田さん演じる石倉は裁判所書記官。法廷では裁判官の前方の席に座り、裁判の記録や調書などを作成・保管し、裁判所主導の現場検証を行う際にはスケジュールを調整したり、検証に立ち会って記録したりと、縁の下の力持ちとして裁判官をサポートする。
しかも石倉は元傍聴マニア。書記官になる前から弁護士時代のみちおの裁判を傍聴したことがあり、みちおがかつて弁護士バッジを捨て裁判官へと転身するきっかけになった事件の裁判も含め、駒沢部長に次いでみちおの過去を知る人物のようだ。
坂間にも「みちおさん、心を読むんです」「気になったら、いつも止まらないんですよ」と教え、彼のことなら何でも知っていると言わんばかり。みちおが“職権発動”する際も、“みちおファン”の石倉は「出るぞぉ」とニンマリ。何より書記官になったのも、その活躍ぶりを最前列で目撃できるから。みちおが飼いたがった犬・みちこも、犬アレルギーであるにも関わらず実家のそば処「いしくら」で代わりに引き取っている。
その一方で、みちおに影響を受けながら、効率や処理件数よりも裁判官としての誇りを再確認するようになった坂間にも興味を持ち始め、LOVEをストレートにぶつけていく。そんなふうに人との距離を縮めていくのが得意な石倉は、まるで新田さんそのものでもある。
2017年に映画『ちはやふる』で第40回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞し、その後も、『劇場版コード・ブルー−ドクターヘリ緊急救命−』や『サヨナラまでの30分』(主演)、『名も無き世界のエンドロール』などに出演、テレビドラマでも「僕たちがやりました」「トドメの接吻(キス)」「同期のサクラ」などの話題作で、不良高校生から優秀な営業マンまで多彩な役柄に挑んできた。
主演映画『ブレイブ−群青戦記−』では戦国時代にタイムスリップする、自分に自信が持てない弓道部員を演じたばかり。そして、何と言っても現在公開中の『るろうに剣心 最終章 The Final』では、愛する姉・巴の復讐を誓う雪代縁(ゆきしろ えにし)役に抜擢され、その繊細な演技や息を飲むようなアクションシーンに「ハマり役」「最高だった」と絶賛の声が上がっている。
同作の大友啓史監督は新田さんの起用理由を、「ある意味でこの何年間で若手俳優のなかではモンスター級になった佐藤健という存在にぶつける相手として、新田真剣佑は適任だと思った」と説明している。確かに最近の仕事ぶりに照らしても、新田さんの存在感は“モンスター級”だ。
今作ではスーツや法服を着ていても、鍛え上げた体躯の素晴らしさを隠しきれないが、キャラとしては真逆のよう。入間みちお役の竹野内さんとは約20年ぶりの再会で共演を果たし、坂間千鶴役の黒木さんとは「一度舞台を見させていただき、とても感動した」と初共演を喜んでいた。
第6話 過去の事件が再び動き出す…
草野球の試合を終えた入間みちお(竹野内豊)たちは、井出伊織(山崎育三郎)ら地検チームと一緒に石倉文太(新田真剣佑)の実家「そば処いしくら」に集まって飲んでいた。そこに、坂間千鶴(黒木華)が日高亜紀(草刈民代)を連れてやってくる。するとみちおは、志摩総一郎(羽場裕一)という男の名前を出し、彼が被害に遭った窃盗事件を担当することになったと日高に告げる…。
みちおが裁判長を務める窃盗事件とは、前科6犯の窃盗犯・岸田茂(バカリズム)が、会計事務所所長の志摩の自宅に忍び込み、現金113万円を盗んだ事件だった。岸田は犯行後、盗んだ自転車で逃走を図ったが、その途中で新聞配達員と自転車同士の衝突事故を起こして顔を見られたため自首していた。
第1回公判で、岸田はエリート人生から転落して窃盗を繰り返したという井出の言葉に反発し、泥棒がいかに魅力的な仕事であるかを力説し始める。みちおは、理路整然と話す岸田が、逃走時のことになるとあいまいな話をし始めることや、今回初めて自首してきたことが気になり、逃走経路周辺の防犯カメラを確認することにするが…。
イチケイのチーム力が注目を集めている今作。次第に明らかにされるはずの、みちおの過去の事件も気になるばかりだ。
「イチケイのカラス」は毎週(月)21時〜フジテレビ系にて放送中。