パワハラ先輩がパワハラ上司になったら職場も動く?軽視されがちな同性同士の人間関係トラブル

2024年5月8日(水)22時5分 All About

過去に「パワハラに苦しんだ」と言っていた同僚女性が、パワハラ加害者になることがある。男性によるささやかなジョークは容易にセクハラ認定される一方で、同性同士によるハラスメントは軽視されがちだ。

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親から子へのDVは連鎖するとよく言われているが、自分が「被害」に遭うと無意識に同じことを人にしてしまう習性が人間にはあるのだろうか。パワハラについても今、似たような経緯をたどっていると感じさせられることが多々ある。

「パワハラで苦しんだ」と言っておきながら

「職場の先輩女性なんですが、一見、親切なんです。私が転職してきたときも、何か聞けばすごく優しく答えてくれた。だからてっきりいい人だと信じていたんです」
マキさん(33歳)は、2年前に今の会社に転職してきた。同業他社にいたので、仕事の大きな流れはわかっているが、その会社、その職場ならではの習慣に早く馴染もうと思っていたとき、10歳ほど先輩のエミコさんが親切にしてくれた。
「親しくなったころ、エミコさんが『私も転職してきたの。前の職場のパワハラでひどい目に遭って』という話をしてくれて……。私はパワハラと認識するような目には遭ってなかったので、彼女は大変だったんだなと深く同情しました。ただ、今の職場にはそういうのがないから安心してと彼女に言われてホッとしていました」
ところが半年ほど経って、マキさんが取引先との交渉に悩んでエミコさんに相談すると、彼女は非常に冷たい口調で言った。
「そこの会社は、もううちとは取り引きさせませんよと言えばすぐに折れてくるわよって。それって外部業者に対するパワハラそのものじゃないですか。交渉なんだから対等の立場でテーブルにつかないといけないんじゃないですかと言ったら、『あなたは甘い』って。この人、実は怖い人なのかもと感じました」

先輩の行動を観察していて気づいた本性

その後、客観的に観察していると、エミコさんは自分より立場が上の人にはにこやかに、どちらかといえばへつらうように接している。だが後輩に対しては、顔は笑っているが「ねえ、どうしてこれができないの?」と小声でネチネチつぶやいているのを何度か見かけた。
その後輩に「あんなこと言われて大丈夫?」と聞いてみると、「あの人はいつもああなんです。あれもパワハラだと思うけど、上層部は彼女をいい人だと思っているから聞く耳を持たないんですよ」と言われた。
パワハラで苦しんだ人がどうして……とマキさんは驚いたが、エミコさんの言動は大きなパワハラとは言えないとも気づいた。単なる嫌味や皮肉、彼女の個性とさえ思われがちなのかもしれない、上層部にとっては。

立場が上になったら“パワハラ”なのでは?

その後、エミコさんが昇進し、実質的にマキさんの直属の上司になった。
「半年ほど前、私たちの部署の仕事が立て込んでいた時期に、私の父が倒れたと仕事中に連絡があったんです。飛行機でいかなければならない距離だし、今日はものすごく忙しいしと思っていたら、隣の席の同僚がどうしたのと聞いてくれて。
父の話をしたら、それはもうすぐに帰ってあげなさいよって。上司であるエミコさんに言おうと思ったんですが、姿が見えなかったので部長に直接言ったら、やはりすぐに行ってあげなさいと。あわてて支度してそのまま空港へ行ったら、エミコさんから電話があったんです」
直接、話ができなくて申し訳ありませんとマキさんが言うと、「LINEをくれるとかメールするとか、そういう方法はなかったの?」といきなり言われた。そこまで頭が回らなかったし、部長には言ったしと言いかけると、「もういいわ、どうでも」とエミコさんが冷たい声を出した。
「あなたの親がどうなろうと私には関係ないの。それより今日の午後からの取引先との会議だけど、ファイル、ちゃんと共有しておいてくれた?って。見ればわかるはずです、きちんと共有しているし、先日のやりとりも全部書いてありますと言うと、あらそう、じゃあねと電話が切れました」
わざわざ電話までしてきて言うことだろうかとマキさんは首をひねった。ファイルの共有は基本的なことだし、いつもきちんとしていることをエミコさんは知っているはず。
「こっちは父が急に倒れたと聞いて、気持ちが焦っているし不安でもある。私は遊びに行くわけじゃないのに……」

同性同士のハラスメントを軽視してはいないか

その日の午後は確かに大事な会議があった。それを欠席するマキさんに、エミコさんは腹が立ったのかもしれない。だがこれは不測の事態だ。しかも、誰もが陥る可能性のある事態である。
「そういうことにいちいち腹を立てていたら、チームのリーダーなんてやってられませんよね。人間、病気になることもあるし、私のように不測の事態で離脱することもある」
納得がいかなかったマキさんは、父を見舞って帰ったあと、エミコさんからの嫌がらせを部長に告げた。同僚たちからもヒアリングをし、エミコさんに注意をしたようだ。
「今のところ、ことは大きくなっていませんが、彼女がこのまま嫌がらせを続けるようなら私たちにも考えがある。些細な嫌味なら許される、というわけではないと思うんです。
職場は、男性のささやかなジョークをセクハラだとやたらと認定するくせに、同性同士のこういった出来事は小さく考えがちなんですよね。おっさんのくだらないジョークは流せても、同性先輩の嫌味はけっこう堪える。そういうことも考えていってほしいと思っています」
立場が違えば立派なパワハラとなりうる。とはいえ、大ごとにしたくないマキさんは、エミコさんと腹を割って話せる機会を狙っているが、あの一件以来、エミコさんはマキさんを避け続けているという。

亀山 早苗プロフィール

明治大学文学部卒業。男女の人間模様を中心に20年以上にわたって取材を重ね、女性の生き方についての問題提起を続けている。恋愛や結婚・離婚、性の問題、貧困、ひきこもりなど幅広く執筆。趣味はくまモンの追っかけ、落語、歌舞伎など古典芸能鑑賞。
(文:亀山 早苗(フリーライター))

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