なぜ多くの人が「着物は苦しい」と思い込んでいるのか?その背景に根深い「着付け問題」が…呉服屋が語る<着物が嫌いになるかどうかの分かれ目>

2025年5月9日(金)12時30分 婦人公論.jp


(写真:stock.adobe.com)

生活の欧米化と共に、今では着る機会が激減した着物。着物と距離が生まれた理由の一つに、「着るのが大変」「大変で苦しそう」というイメージがありそうですが、山陰地方で呉服店・和想館を経営する和と着物の専門家である池田訓之さんは、「着物を着るのはそこまで大変ではなく、そして本来苦しいものではない」と話します。着物の心地よさと、秘められたメリットについて池田さんに解説いただきました。*医療情報監修:芝千太郎さん(本名:森川由基。医学博士、芝流舞踊療法研究所・家元付師範、もりかわ在宅ケアクリニック楠・院長)

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着物が苦しいという勘違い


呉服店を経営している著者は、もう二十年以上、ほぼ毎日着物を着ています。

そして、そんな私の周りで“あるある”な会話が、「着物っていいですねえ。でも…苦しくないですか?」というパターンです。

この記事を読んでいる皆さんの多くも、着物に対して「苦しそう」「疲れそう」などネガティブな印象を持っているのではないでしょうか?

ですが「着物が苦しいというのは全くの勘違い」だと、私はここで断言いたします。

着物が好きになるかどうかは「着付け」で決まる?


そもそも「着物が苦しい」とおっしゃる人の多くは、自分の手で着物を着ていない方がほとんどなのではないでしょうか?

たとえば「二十歳の集い」に出席するために、振袖をお求めになる十代の女性が毎年一定数おられます。この女性たちは、集いを終えた後に着物のファンになる方と、もう着物を着たくないという方にわかれます。

この2つのわかれ目の最大の要因は何か? それは「着付け」だと私は考えています。

人に着せてもらう場合、着付け師さんによっては、「着物が絶対にズレないように」と、強めに紐や帯を締める方がいるのは事実です。

ただそんな着付けに出会うと、着ている間ずっと辛くなる。さらに、振袖を着せられたほとんどの女性が着物を日頃着ていないので、着物に合わせた所作がわからず、極端な例だと、「着物を着ている間トイレに行けず、ずっと我慢した」という話まで聞かれます。

ちなみにトイレなどは、裾をまくるだけで、着物特有の特別な動作は必要ありません。弊社では式の前に、基本動作を確認いただくようにしていますが、ともあれ、こんなことで着物嫌いになる人がいるのは悲しすぎます。

着物を自分で着るのはそんなに難しくない


この悩みの解決法は簡単。自分で着物を着ればよいのです。

とお話すると、「着物を着るには、着付け教室に通って習わないといけないし…」と反応する方が多い印象です。

でも「お太鼓結び」という一般的な帯結びなら、半日もあればマスターできます。ちなみに男性の着付けなら、30分で覚えられます。

なお、弊社はコロナ前にロンドンに出店していたのですが、そこに着物を自分で着たうえで来店する英国人の方が何人もいらっしゃいました。話を聞けば、みなさんYouTubeを見て覚えたそうです。

私自身は着付け教室に1年通って女性の着付けを勉強しましたので、そこで色々な帯結びを教わりました。でも日常的にはお太鼓結び以外、使っていません。

まずお太鼓結びの着付けができるようになって、着物が好きになり、他の帯結びや着方をさらに勉強したいと感じた方が、着付けの学校に行くことを考える。それで十分と私は思います。

婦人公論.jp

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