小1の壁は? 子なしは? 4月に施行された育児・介護休業法の改正ポイントと、SNSで語られる本音と課題
2025年5月10日(土)21時5分 All About
2025年(令和7年)4月から施行された「改正育児・介護休業法」。どのような点が変わったのでしょうか。今回は「育児休業法」から改正のポイントとネットの賛否の声を取り上げます。
この改正は、男女ともに仕事と育児・介護を両立できるよう図るものであり、特に男性の育休取得率については、政府が次のような目標を出しています。
【政府目標】
▶2025年までに男性育児休業取得率を30%へ
(令和元年12月に閣議決定された「第2期『まち・ひと・しごと・創生総合戦略』」より)
▶国・地方の公務員(一般職・一般行政部門常勤)の男性育児休業取得率を
・2025年までに1週間以上が85%へ
・2030年までに2週間以上が85%の取得率へ
(令和5年12月に閣議決定された「こども未来戦略」より)

「子の看護休暇」の範囲が小3修了までに拡大
改正後は、どのような点が変わるのでしょうか。1つは、子どもの看護休暇の見直しです。対象となる子どもの範囲が「小学校3年生修了まで」に拡大。取得事由に「感染症に伴う学級閉鎖など」「入園(入学)式、卒園式」も含まれるようになりました。それに伴い、名称も、「子の看護休暇」から「子の看護等休暇」へ変更します。労働者側の条件では、「週の所定労働日数が2日以下」以外は全て適用されることとなりました。

このほか、残業免除は3歳未満までが対象だったのに対し、改正後は小学校就学前まで範囲が拡大。3歳未満の短時間勤務制度について、テレワークも選択できるよう事業主は努力義務化されました。
育児休業取得状況の公表義務は、従業員1000人超の企業が対象だったのが、従業員数が300人超の企業までに変更されています。
2025年10月1日から施行される「柔軟な働き方を実現するための措置等」
柔軟な働き方を実現するため、2025年10月1日からは3歳から小学校就学前の子どもを養育する労働者に対し、事業主は次の5つから2つ以上を実施するよう育児休業法に明記されます。労働者はそのうち1つを選択して利用します。1. 始業時間などの変更
2. テレワークなど(月に10日以上)
3. 保育施設の設置運営など
4. 養育両立支援休暇の付与(年に10日以上)
5. 短時間勤務制度
子どもが生まれた労働者に個別で意向確認を
「妊娠・出産などの申し出があった時」と「子どもが3歳になる前」には、労働者に個別でヒアリングすることが事業主に義務化されます。【ヒアリングする内容】
・勤務時間帯
・勤務地
・両立支援制度などの利用期間
・両立のために就業の条件など
これは育休の取得率にも影響を与えるのでしょう。
「妊娠・出産などを申し出た労働者に、個別の制度周知・休業取得の意向確認をしたか」調査結果を見ると、正社員・職員に対して意向確認を行った企業は「1001人以上の従業員規模」で93.9%、「501〜1000人」で92.7%、「301〜500人」で87.6%、「101〜300人」で77.3%、「51〜100人」で52.8%と、従業員規模が小さくなるにつれて下がることが分かっています(「令和4年度 仕事と育児等の両立に関する実態把握のための調査研究事業報告書」より)。
今回の改正により、この数値が大きく改善されることが期待されています。
育児休業法改正で、子育て環境はどう変わった?
育児休業法改正を受けて、2025年4月初旬のSNSでは「休みを取って、子どもの入学式に行ってきた」と喜ぶ様子が見られました。このほか、「転職後は6カ月経過しないと年次有給休暇が付与されない。この制度を利用して子育てとの両立を図りたい」「子どもの看護のため有給を使い切ってしまった場合などに活用ができる」といった好意的な声も多くみられます。
一方で、「うちの会社は子の看護等休暇は無給扱いのため、有給を取得して入学式へ参加した」と言う声も。
子の看護等休暇を有給にするか無給にするかは企業判断です。「令和3年度雇用均等基本調査(事業所調査)」によると、子の看護休暇を取得した場合の賃金の扱いについて、「無給」が65.1%、「有給」が27.5%、「一部有給」が7.4%となっており、「無給だったら、有給を取得する」ことを選ぶ労働者は多いかもしれません。
また、今回の改正を疑問視する声も聞こえます。「子の看護等休暇の対象が、小学3年生までである根拠が分からない」「結局、小1の壁はフォローできていない」といった意見も。子どもを持たない労働者からは、「子育て世帯の急な休みや時短勤務者のフォローに疲れた」といった声も聞こえてきます。
学校教師など職種によっては、自分の子どもの入学式よりも仕事を優先せざる終えず、両親が教師だった人たちからは「子どもの頃は寂しかった」という声も。
仕事と子育ての両立にはまだまだ課題が残ります。
この記事の執筆者:結井 ゆき江
中学受験雑誌の編集者として勤務したのち、フリーランスの編集者・ライターとして独立。教育や生き方、地域情報などを中心に取材・執筆を行う。グレーゾーンの小学生をサポートした経験も。(文:結井 ゆき江)