「AYA世代」がん治療が卵巣機能に与える影響を調査…大阪急性期・総合医療センターなどのチーム
2025年5月10日(土)5時0分 読売新聞
がん治療が「AYA世代」と呼ばれる若い患者の卵巣機能に与える影響を見極めようと、大阪急性期・総合医療センター(大阪市)などのチームが新たな研究に乗り出した。不妊になるリスクが検討されていない薬が増えていることなどから、対応する指針を作成し、患者が最適な治療を選べる医療の確立を目指す。
国の統計などによると、国内では年間約2万人のAYA世代が新たにがんと診断されているとみられる。手術や放射線照射、抗がん剤などで妊娠しにくくなる恐れがあるため、妊娠の選択肢を残したい患者は、治療開始前に受精卵や卵子、卵巣組織を凍結保存する温存療法の検討を迫られる。
日本
今回の研究では、AYA世代を中心とするがん患者約500人を対象に、治療前と治療1年後、2年後の血液を採取。特定のホルモンの値などから、それぞれの治療で卵巣機能がどう変化したかを調べる。
AI(人工知能)を活用し、治療が妊娠に及ぼす影響を予測するモデルを開発し、リスクを最小限に抑える治療法を提案することをめざす。研究には埼玉医大、聖マリアンナ医大なども参加する。
研究代表を務める同センターの森重健一郎・生殖医療センター長は「新たな命を授かりたいという患者さんの希望を実現する医療が必要」と話す。チームは16日まで、検査費用など必要な資金を募るクラウドファンディングを実施。9日に第1目標の650万円に達したため、目標額を800万円に引き上げ、専用サイト=左のQRコード=で支援を呼びかけている。
◆AYA世代=「思春期・若年成人」を意味する英語(Adolescent and Young Adult)の頭文字で、15〜39歳でがん治療を受けた患者を指すことが多い。がん治療に加え、将来の妊娠に備えた温存療法を受けるかの決断も迫られ、心身、経済的な負担が大きい。