世界の名だたる数学者がこぞって日本のチョークを買い求める理由

5月11日(土)20時30分 カラパイア

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 ホワイトボード、電子黒板に以降しつつある今でも、かたくなに黒板とチョークを使い続ける人々がいる。世界の名だたる数学者たちだ。

 常に難解な数式や図式の解を求める彼らには強いこだわりがあるのだ。黒板は答えを導き出すための最高のツールなのだろう。それは最高のチョークを使用することで実現する。

 数学者たちにとっての最高のチョーク、それは日本の羽衣文具が発売した「ハゴロモ(HAGOROMO)”フルタッチ”」チョークである。

 炭酸カルシウムを主原料とするこのチョークは、なめらかで書き味に優れ、折れにくいことから、数学者の間では「チョーク界のロールスロイス」とまで言われる最強のアイテムなのだ。
・数学者界を激震させたチョーク・アポカリプス

 残念なことに羽衣文具は2015年3月、後継者不在を理由に廃業となり、80年余りの歴史に幕を下ろした。これに嘆いたのは、世界中の数学者たちだった。

 廃業が発表になるや否や、海外から羽衣文具にチョークの注文が殺到した。この魔法のアイテムをなんとかして買いだめしようと、数学者らは必死になったようだ。

 最近公開された動画では、普段から羽衣”フルタッチ”チョークを愛する世界トップクラスの数学者たちがこのチョークの魅力を熱く語っている。


Why the World’s Best Mathematicians Are Hoarding Chalk

・数学者たちの声

 アメリカのワシントン大学のマックス・ライブリッチ数学教授はこう語る。

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このチョークの特別な材料は“天使の涙”だと私は思っている。だからこんなに完璧でスムーズなんじゃないかなと。日本でしか手に入らない物だから、これまでは日本に行った人に買ってきてもらったりしてたよ。

これから自分が、何箱のチョークを使うのか計算してみたんだけど、買いだめした分は、多分10年〜15年はもつんじゃないかな。

貴重なチョークだから、アパートの1室で密かにチョークディーラーになってみるのも面白いかもね。

 一方、スタンフォード大学のブライアン・コンラッド数学教授はこう語った。

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HAGOROMOチョークの書き心地は、言葉ではちょっと説明し難いね。

4年前に羽衣文具が廃業を決定した時には、「チョーク・アポカリプス(チョーク文明の崩壊)」なんて冗談を周りで言っていたぐらいだったからね、私もすぐに大量に買いだめしたよ。職場で売買して、これまで同僚8〜10人ぐらいに売ったかな。

 元数理科学研究所所長で、現在カリフォルニア大学バークレー校で教鞭を執っているデイヴィッド・アイゼンバッド数学教授は、次のように語っている。

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このチョークにまつわるレジェンドに、誤った定理を当てはめることは不可能だ。

私が羽衣チョークに初めて出会ったのは、東京大学を訪れた時だった。出会った教授の1人が、アメリカよりも優れたチョークが日本にはあると言ってきてね、最初はチョークなんてどれも同じだろうと思っていたんだけど、試しに使ってみたら彼が正しいと知って、驚いたよ。

羽衣チョークは徐々に数学界に浸透していってムーブメントを起こした。私も今は買いだめをして、10年分は家にあるよ。


・羽衣チョークの魅力とは

 世界中の数学者たちを虜にした羽衣チョークが愛される理由のひとつには、もちろんその使いやすさである。

 ミシガン大学のウェイ・ホー数学教授は運命の相手に巡り合えたかのような喜びを口にする。

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質の悪いチョークだと、力を入れないと太く書けないけど、HAGOROMOなら楽に書けて疲れないの。使った瞬間に「これだ!」と感じたわ。今では3箱保管していて、とても大切に使っているわ。

 また、コロンビア大学のデーヴ・ベイヤー数学教授はその優れた品質を絶賛。

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使ってみて信じられない感触を味わったよ。どのチョークよりも一番濃密で清潔、そして綺麗な線が引けるんだ。1500本ぐらい買いだめしたよ。1日4本使うとしても、結構もつかなと思っているけどね。

 しかし、使いやすさだけがこのチョークの魅力ではない。コーネル大学のマイク・スティルマン数学教授は、次のように語っている。

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羽衣チョークで教えていると、エネルギーや自信を感じるんだ。絶対にチョークが影響しているね。友人たちは、一生分と言っていいほど買いだめしていたから、自分ももっと買っておけばよかった。

 結果、アメリカの数学者約200人が、1トンのチョークを共同購入していた。フィールズ賞の受賞者の多くが同社のチョークを愛用していたという。


・羽衣チョークは今

 2015年3月、- 生産と販売を終了した羽衣文具はその技術を馬印に移転。

 更には同年6月、「HAGOROMO」ブランド、製造設備、材料調合、製造技術指導など含めすべてを韓国・セジョンモール社に譲渡した。

追記(2019/05/11):羽衣チョークの熱心な愛用者だった1人の韓国の塾教師が、廃業のニュースを聞きつけて日本にかけつけた。私財を全て投げ出し、5000万円かけて羽衣文具の機械を全て買り、韓国内に生産ラインを設けた。その工場がセジョンモール社だそうである(ソース

 馬印は羽衣チョーク”フルタッチ”と同じ炭酸カルシウム製の『DCチョーク』をベースに原材料の割合などを調整した新製品『 DCチョークDX』を販売開始し、セジョンモール社では『HAGOROMO フルタッチチョーク』としてチョークの販売を行っている。

 今後、レプリカ商品を入手することができても、オリジナルの羽衣チョークは次第にこの世から消えていく。オリジナルを愛した数学者たちにとっては悲しいことだろう。

数学者たちは、お互いに敬意を払いながら、常に最高の道具を使いたいという気持ちを持って羽衣チョークを愛用し続けている。

ある意味、我々は科学者でもあり職人や芸術家のようなものだと思う。黒板に美しい数字や記号を描くことは、高度な職人技と言ってもいい。

 と前出のアイゼンバッド教授が言うように、数学界の職人に100%ぴったりの道具が、まさに羽衣チョークなのだ。

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written by Scarlet / edited by parumo

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