脳梗塞に心筋梗塞、認知症のリスク…まずケアすべきは<口>だった!日本人の半数が罹患しているのに自覚症状がない<最恐の菌>を歯科医が解説

2025年5月13日(火)12時30分 婦人公論.jp


(写真:stock.adobe.com)

日本人の死因の上位3位は「がん(悪性新生物)」、心筋梗塞などの「心疾患」、脳梗塞などの「脳血管疾患」。これら「三大疾病」と呼ばれる病による死亡率は45.6%で、実に2人に1人はそれが原因で亡くなっているそう(厚労省「令和5年人口動態統計」)。生活習慣改善を通じて、今すぐにでも対策をしたいところですが、どこから手を付ければ…という方も多いはず。その意味で「“口腔ケア”がオススメ」と語るのが幸町歯科口腔外科医院の宮本日出院長です。宮本先生いわく、比較的手軽である上、手をかけることで、実際にこれらの発症リスクを抑えられる可能性があるそうですが——。

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「口の疾患」対策のポイント


今回の記事では、全身の健康に影響を及ぼす可能性のある「口の疾患」にフォーカスを当てたいと思います。

「口の疾患」と聞いて、多くの方がまず思い浮かべるのは「むし歯」と「歯周病」ではないでしょうか? 確かに歯科医療に携わっていると、お口のトラブルとしてこの2つに悩まされている方を多く目にします。そしてこれらの疾患の対策としては、それぞれに適したオーラルケアグッズを選ぶことが大切になります。

ではどうすれば適したグッズが見つかるのでしょうか? 

その見極めには<口臭>がポイントとなります。

そもそも口臭は強かれ弱かれ誰にでもあるものです。そしてそれは、お口の清掃状態が原因で生じる「生理的口臭」と歯周病が起こす「病的口臭」に大別できます。この二つを見分けるために、自分で簡単にできる口臭の識別方法をご紹介しましょう。

10cm×20cmほどのビニール袋に口をつけて、中にゆっくりと息を吐いて袋を膨らませます。袋が一杯になったら口を離し、袋を閉めてください。深呼吸をしてから、まだ袋に息の温かさが残っている内に中の臭いを嗅いでみてください。

「生理的口臭」と「病的口臭」


もし口臭が「ゆで卵」に近い臭いの場合は「生理的口臭」です。

この臭いの原因はベロの表面に溜まっている口臭菌が出す「発揮性硫黄化合物」なので、ベロの表面をキレイすると瞬時に臭いは消えます。市販の舌ブラシを使用して、ブラシで舌の奥から手前に擦り、ベロの表面の汚れを取ってください。

またこの場合は歯周病が始まっていないので、むし歯対策を中心としたオーラルケアグッズを選ぶと良いでしょう。歯ブラシは毛先が丸くなって長さが揃っている「ラウンドタイプ」を選び、歯磨き粉は歯を強化する「フッ化物」が配合された物を使用してください。

他方、口臭が「台所の三角コーナー」に近い臭いの場合、歯周病などを原因とする「病的口臭」の疑いがあります。

口臭の元は「メチルメルカプタン」という物質なのですが、これは日本の法律では「毒物」に指定されています。ご存知のように、毒物は資格なく勝手に持ち歩くことはできません。そしてこの「メチルメルカプタン」の毒性は「酸性ガス」に匹敵します。

つまり、歯周病を介して、口の中に危険物質が発生していることになるので…放置せずにしっかりと対策をとることが大切になります。

この場合は歯周病対策のオーラルケアグッズを選んでください。歯ブラシは毛先が尖った「テーパードタイプ」が適していて、歯磨き粉は歯周病菌が潜む菌膜に浸透する「IPMP(イソプロピルメチルフェノール)」が配合された物がお勧めです。歯磨きの前に「CPC(塩化セチルピリジウム)」含有のうがい薬でうがいをしておくと、お口の中に飛び散っている菌が除菌できて、より効果的です。

ただし、歯周病そのものはどんなケアグッズでセルフケアを行なっても治すことはできません。歯周病の疑いがあれば、直ぐに歯科医院で治療を受けましょう。

“最恐の菌”に日本人の半数が罹患?


なお歯周病は「世界で最も蔓延している感染症」として、2001年にギネス世界記録で認定されました。

日本人の場合、その半数が歯周病を発症している(厚労省の発表)とされる一方、たとえばアメリカ人は35%と日本より少ない。こうした状況から、歯周病は「日本人の国民病」と呼ばれる事もあります。

代表的な歯周病菌として「ジンジバル菌」が挙げられますが、これらの中にも種類があり、毒性が高いものは、低いものの44倍以上に。高い方の菌を研究用マウスの体内に注射すると、臓器が侵され、数日の内に死んでしまうほど非常に強い毒性を持ちます。

このように「最恐の菌」とでも呼べそうな歯周病菌ですが、歯周病を発症していても、自覚することが簡単ではないのが厄介なところ。

歯周病菌はその毒性で歯ぐきの神経を萎縮させて麻痺させるので、多少歯ぐきが腫れても、もしくは歯がぐらついても、それだけでは痛みが認識できない状態にしてしまいます。

またその毒性は鼻にまで及び、嗅覚を麻痺させてしまうので、歯周病を原因とする口臭があっても、なかなか気づくことができない。


(写真:stock.adobe.com)

実際、歯周病の患者さんに「あなたは歯周病です」と伝えても自覚症状がないため、受け入れようとしない方がたまにいらっしゃいます。それでは治療を行えないので、結果的に歯周病は放置され、末期状態を迎えることに…。

脳梗塞、心筋梗塞、動脈硬化などの原因に


お口の二大疾患である「むし歯」と「歯周病」はどちらも病名に「歯」がつくこともあり、<歯に特化した病気>だと連想する方も多いかもしれません。

確かに「むし歯」はむし歯菌により歯が侵される病気で、「歯周病」は歯周病菌により歯ぐきが被害を受ける病気ですが、最近の研究で、いずれの病気も全身へ影響を与えることが明らかになりました。

歯周病菌が攻撃した結果、歯ぐきは歯周病菌から逃れようと、自ら歯ぐきと骨を退縮します。その結果、歯を支えられなくなり、抜けることに。一方で歯周菌は歯ぐきに侵入した後、その場にとどまることなく、毛細血管にも侵入。血管を通って全身を駆け巡ります。そして到達した先で悪さをし、健康状態を悪化させるのです。

たとえば、歯周病菌の毒性は血管の内壁に傷を付け、慢性の炎症の原因を作ります。血管を修復する際にカサブタの様な物を作るのですが、これを繰り返すとカサブタが厚くなり、血管の内側サイズが次第に細くなっていく。

そこに血栓が飛んでくることで血管が詰まります。これが頭で起こると「脳梗塞」、心臓で起こると「心筋梗塞」になるのです。またカサブタを繰り返す中で、血管が硬くなり「動脈硬化」にも至ります。

フジテレビの情報番組「サン!シャイン」(2025年4月9日放送)では、歯周病に罹患すると「脳梗塞リスク約2.8倍」「認知症1.7倍」「糖尿病2.0倍」と報道されていました。

自覚しにくい歯周病はこれでチェック


この様に歯周病は全身の健康に悪い影響を与えます。

実際、アメリカ歯周病学会では歯周病は全身の100以上の病気の発症・進行に影響を与えているとしていますし、日本でも厚労省は生活習慣病(メタボ)をはじめ、リウマチ、低体重出産、がんなど数多くの疾患との関連を認めています。

またむし歯菌は、これまで「体内に入っても胃酸で死滅するから全身の健康に影響を与えない」とされてきましたが、近年では数多くの疾患と関連している事が認められています。

たとえば、胃がんの原因の一つとされるピロリ菌ですが、ピロリ菌の除菌治療に失敗した症例では、多くのむし歯菌の存在が指摘されています。また大腸にむし歯菌が存在した場合に大腸がんの発症が高くなることがわかっています。

最後に、「自覚することが難しい」と記した歯周病について、チェックポイントをお伝えします。以下の項目に当てはまる場合は歯周病を疑いましょう。

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(1)歯磨きをすると出血する

(2)歯ぐきが赤くブヨブヨしている

(3)歯と歯の間に食べ物がつまりやすい

(4)歯がグラグラする

(5)最近、歯ぐきがやせてきた

(6)歯が長くなった感じがする

(7)歯ぐきを押すと膿のようなものが出る

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これらの症状があれば、歯科医院で相談してみてください。特に3個以上あれば、歯周病が進行している可能性があります。

婦人公論.jp

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