関東インカレ男子10000mの戦い、1部は早大のエース・山口智規が激走、2部は青学大勢が日本人ワン・ツーを飾る

2025年5月14日(水)6時0分 JBpress

(スポーツライター:酒井 政人)


1部は早大・山口が攻め込み、日本人トップを死守

 毎年、5月に開催される陸上競技の関東インカレ。今年は8〜11日に相模原ギオンスタジアムで行われた。初日の男子10000mから激戦となり、今年の箱根駅伝出場校では早大、中大、城西大、東洋大、順大、日体大、法大、山梨学大、日大がいる1部(全16校)は臙脂のエースがぶっ飛ばした。

「調子が良かったのでスローペースになるのはもったいない。最初の100mで誰も出ないと察したので、いったれ、と。優勝を目指して、気持ちで攻めるレースをしようと思っていました」

 序盤で山口智規(早大4)がトップを奪うと、1000mを2分43秒で通過して抜け出すかたちになった。「キロ2分50秒ぐらいで押していける」と読んでいたが、強風に苦しみ、1800m手前でジェームス・ムトゥク(山梨学大4)に追いつかれる。ほどなくしてムトゥクがペースアップして、独走するかたちに。山口はヴィクター・キムタイ(城西大4)にも並ばれて、しばらくは2位集団を形成した。

 5000mはムトゥクが13分57秒、山口とキムタイは14分05秒ほどで通過。ムトゥクは後半も独走態勢を崩さず、28分06秒37で3連覇を達成した。2位はキムタイで28分31秒37、3位は山口で28分37秒82だった。

 気迫のこもったレースを見せて、日本人トップに輝いた山口だが、「自分で満足できる点数を与えられるような走りはできませんでした」と不満を口にした。

 2〜3月にオーストラリア合宿を行い、「かなり充実した2カ月間」を過ごしたという。しかし、帰国後は「気候の変化」もあり、体調が上がらず、日本学生個人選手権10000mは11位に沈み、目指していたユニバーシティゲームズ日本代表を逃した。

 山口は競技者として「わがままでありたい」と思っていたが、伝統あるチームの駅伝主将となり、「自分の競技よりもチームで結果を残さないといけない」という気持ちが強くなったという。そのため今季最初の総力戦である関東インカレでは“結果”を求めて激走した。

「4月は自分としてもチームとしてうまくいかなかったんですけど、ここで気持ちを見せるレースができて良かったと思います。最低限の走りですが、自分の中でホッとしている部分がありますし、貪欲に上を目指していきたい」

 昨年の箱根駅伝は2区を1時間06分31秒の区間4位と快走。今年も2区で攻めの走りを見せたが、後半は失速して区間12位に終わった。それでもチームは総合4位に躍進して、今季は“頂点”を目指している。

「箱根の結果に満足している選手は一人もいません。新チームのミーティングでは、『絶対に総合優勝するぞ』という熱い話をしました。勢いのある新入生が加わり、僕の4年目にして今までなかった早稲田大学が見せられるんじゃないかなと思っています。トラックシーズンは勝負にこだわっていきたいですし、駅伝主将として、三大駅伝も結果を求めていきたいです」

 上位3人以外は集団でのレースとなり、山崎丞(日体大4)が28分53秒28で4位。野田晶斗(3年)と清水郁杜(4年)の法大勢が5位(28分55秒80)と6位(28分56秒58)に入った。

 山崎は今年の箱根駅伝で花の2区を任されるも区間19位。順位を3位から18位まで落とす苦い経験を味わった。しかし、2週間前の日本学生個人選手権10000mで4位に食い込むと、関東インカレでも結果を残した。

「最後の関東インカレなのでしっかり得点を稼ぐことに重きを置いてレースを運びました。連戦できつかったんですけど、4年生の意地と強さを見せられたのかなと思います。全日本大学駅伝選考会(5月24日)は4組目を走ることになると思うので、チームのために力を出していきたい。前回の箱根駅伝は非常に悔しい思いをしているので、しっかりとぶつけられるように準備していきたいです」


2部は青学大2年生コンビが日本人ワン・ツー

 駅伝強豪校がひしめく男子2部。10000mは9人の留学生が出場する大激戦になった。レースはスティーブン・ムチーニ(創価大3)を先頭に5000mを14分10秒で通過した。6000mを過ぎて先頭集団は9人。日本人トップ争いは國學院大と青学大の戦いになった。

 8000m付近でトップ集団は5人に絞られる。そのなかに青木瑠郁(國學院大4)と安島莉玖(青学大2)がいた。しかし、青木が残り1000mで急降下。ムチーニが28分14秒30でラスト勝負を制すと、安島が28分19秒81で日本人トップの4位に食い込んだ。日本人選手では黒田然(青学大2)が5位(28分24秒38)、辻原輝(國學院大3)が7位(28分31秒42)、小池莉希(創価大3)が8位(28分35秒98)に入り、貴重な「入賞」を勝ち取った。

 とにかく目立ったのが、日本人ワン・ツーを飾った青学大の2年生コンビだ。何位を走っているのかよくわかっていなかったという安島だが、「100%の力を最大限使い切ることを意識しました。最高のレースだったかなと思います」と笑顔を見せた。

 ルーキーイヤーだった昨季は、「弱音ばかりを吐いてきて、自分なんか陸上ができないんじゃないか」と感じたという。しかし、1年かけて大きく成長。「監督が与えてくれたメニューを信じて良かったという気持ちです」と今回の結果を素直に喜んだ。

 日本人トップに輝いただけでなく、自己ベスト(28分56秒62)を約37秒も短縮。目標にしていた日本インカレの参加標準記録(28分35秒00)も悠々と突破して、「ゴールタイムを見て驚いた」という。

 そして今回の結果を経て、6月上旬に岡山で開催される日本インカレの出場が濃厚になった。

「朝日さんがエースで、自分が準エース。自分が次のエースになるんだという気持ちで走ります。日本インカレでは朝日さんに食らいついて、『俺が青学を勝たせる』というチームスローガンを体現できるような走りをしたいなと思います」

 関東インカレにエースの黒田朝日(4年)は出場しなかったが、弟・然が活躍。自己ベスト(28分40秒22)を約16秒更新して、日本人2位に入った。

「8000mまでは先頭集団について走れたので、そこまでは想定通りでした。そこからどれだけ粘れるのか。タイムは良かったんですけど、正直、安島に負けたのはめちゃくちゃ悔しいですね。この大会は個人戦なので相手が誰であろうと勝ちたいと思っていました」

 昨季は通学や寮生活を含めて「生活する部分での体力」が不足していたという。特に前期は「ボロボロ」だったが、徐々に調子を上げてきた。安島同様、三大駅伝の出場はなかったが、兄・朝日の存在が明るい希望になっている。

「昨季は活躍することより土台作りを考えてやってきました。兄に似ている部分もないし、自分が勝っている部分もあまりありません。でも、ここから伸びればあのレベルに行く可能性はあると思うので、朝日を目標に頑張りたい。出雲と全日本の細かいイメージはできてないんですけど、箱根はどの区間を任されても実力を出し切って優勝に貢献したいです」

 青学大勢に敗れたが、昨季の学生駅伝で2冠を果たした國學院大も存在感を見せつけた。しかし、9000m付近まで日本人トップを走っていた青木は「途中まで楽だったんですけど、急に差し込みが来てペースダウンしました」と腹痛に苦しみ、9位(28分37秒45)に沈んだ。

「留学生に食らいついて、優勝しか狙っていませんでした。気持ち的に(青学大勢には)に負けられないと思っていたんですけど、日本人にも負けて悔しい気持ちです。今回は着順を勝負する大会なのに、辻原にも先着されて、(エースの)自覚が足りなかったのかなと思います……」

 関東インカレは不発に終わった青木だが、今後は6〜7月のホクレン・ディスタンスチャレンジで記録を狙う。「5000mは(山本)歩夢さんの國學院大記録(13分34秒85)、10000mは平林(清澄)さんの國學院大記録(27分55秒15)を最低でも塗り替えたい」とまずはトラックで好タイムを残して、“エース”として駅伝シーズンを目指していく。

筆者:酒井 政人

JBpress

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