「大事な商談に向かう途中で車が脱輪。焦る私を見た通りすがりのオジサンが、ニヤニヤ顔で去ったあと...」(東京都・50代男性)
2022年5月15日(日)11時0分 Jタウンネット
シリーズ読者投稿〜あの時、あなたに出会えなければ〜 投稿者:Uさん(東京都・50代男性)
20年以上前のその日、Uさんは仕事の大事な打ち合わせに向かうため車を走らせていた。
しかし、その途中で不幸にもタイヤが側溝にハマってしまい大ピンチ。このままでは約束の時間に間に合わないと焦っていると、見知らぬおじさんがニヤニヤしながら車のそばを通り過ぎていったという。
<Uさんの体験談>
もう20年以上前になりますが、その頃の私は仕事の都合で京都に住んでいました。
その日、会社の車を運転してお客さんとの待ち合わせ場所に向かっていたのですが、初めての場所で道に迷ってしまったんです。
スピードを落として、地図と周りの景色を交互に見ながらしばらく走っていると、突如大きな衝撃が。次には車が大きく左に傾いて止まったので降りてみると、タイヤが側溝にハマってしまっていました。
「なんや、脱輪したんかい」
ひとりでは動かせない状態だったので、ロードサービスに電話して来てもらうことにしました。ところが、待てど暮らせどなかなか来ません。
大事なお客さんとの待ち合わせ時間が迫ってきて、相当焦っていた私。そこに、近くを通りかかったおじさんが声をかけてきました。
「なんや、脱輪したんかい。あー、こら自力で出すんは無理やな」
おじさんはニヤニヤしながらそう言って、通り過ぎていきました。時間が無くて焦っているところにそんな冷やかしを受けて、私のイライラはピークに達しました。
もうこのまま車を放置してお客さんのところに行こう、と思ったその時です。50メートルほど先にある工場から、作業服姿の5〜6人の人たちが。彼らはこちらを指さしたかと思うと、早足で向かってきました。
「マズい。邪魔だからどけろと囲まれて文句を言われる」と思って、私は身構えました。しかし......。
「どうせ可愛い姉ちゃん見てて落ちたんやろ」
作業服の人たちは車の四隅に散らばり、そのうちのひとりが私に声をかけてきました。
「車押すからハンドル操作頼むな」
よく見ると、声をかけてきたのは先ほどニヤニヤしながら通り過ぎて行ったおじさんでした。
そう気づいたものの、おじさんたちの勢いに押された私は、とりあえず言われるままに車が押されたタイミングにあわせてハンドルをきりました。すると、車はあっけなく側溝から脱出できたのです。
「どうせ可愛い姉ちゃん見てて落ちたんやろ。ちゃんと前見て運転せえよー」
最後に笑顔でそんな冗談を言いながら、おじさんたちは去っていきました。
作業服のおじさんたちが助けてくれた。
そうです。通り過ぎて行ったおじさんのあのニヤニヤは、冷やかしたわけではなく、「仲間を連れてくるから待っとけや」の笑顔だったのです。
おじさんたちの後ろ姿がかっこよかった
その時は勘違いをした申し訳なさや恥ずかしさもあり、通り一遍のお礼しか言えませんでした。
おじさんたちのおかげで、私はお客さんとの約束の時間に間に合い、大事な商談も滞りなく終えることができました。
しかし、それよりも何よりも、人の温かさを身に染みて感じられたことがとても嬉しかったのをよく覚えています。
今となっては場所も思い出せませんが、サラリと人助けをして風のように去っていったおじさんたちの後ろ姿は本当にかっこよくて、今でも脳裏に焼き付いています。
あの時は、本当にありがとうございました。
誰かに伝えたい「あの時はありがとう」、聞かせて!
名前も知らない、どこにいるかもわからない......。そんな、あの時自分を助けてくれた・親切にしてくれた人に伝えたい「ありがとう」を心の中に秘めている、という人もいるだろう。
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