「クズ男の内面があまりにも生々しい」本命彼女とセフレの間で揺れ動く、26歳フリーター男性の“複雑すぎる恋愛”を描いたマンガが話題に
2025年5月16日(金)7時0分 文春オンライン
長年付き合っている彼女との関係に不安を感じ、浮気に走ってしまう26歳のマサムネ。その「沼男」の目線から描かれる、アラサー世代のリアルな恋愛模様を描いた『 幸せになりたいマサムネ君 』(ヨネマイ著・文藝春秋)が、SNSを中心に大きな話題を呼んでいる。
同人誌として発表された作品を商業連載化したこの漫画は、「クズ男」の内面をあまりにも生々しく描き出し、読者から「共感しすぎて吐きそう」「全員が傷つく未来しか見えない」といった声が殺到。その圧倒的なリアリティはどのように生み出されたのか。担当編集者に話を聞いた。

◆◆◆
「生身の人間が動いている感」を大切に
「同人誌版の冒頭は『浮気もの漫画』に分類されるような展開なのですが、浮気をドラマチックに仕立てた物語じゃなく、本当に『リアルで素朴な浮気』なんです」と担当編集者は語る。

「テンポ感も独特で、漫画として面白くなるようにスピード感を上げたりなどあまりしていないんですよね。その分『生身の人間が動いている感』があって、共感性が増しているんです」
同人誌から商業版への描き直しにあたっては、作者ヨネマイさんの独自の良さを損なわないよう、従来の漫画のセオリーにはめ過ぎないことに気を付けたという。

作中のキャラクターたちの魅力について、担当編集者はこう語る。
「キャラクターの解像度がめちゃくちゃ高いんです。マサムネは『26歳。身長178.5cm。細身で長身だが180cmに届いていないことをたびたび自虐的に語る』。モモカは『26歳。中2でバレエを辞めたあとはしばらくガニ股がひどく、お父さんが一生懸命注意して直った』。〇〇子は『22歳。“パパ活してそう、ガールズバーで働いてそう”と言われがちだが、そんな度胸はない』。いる〜、こういう人いるいる〜、と」
「まさに今こんな経験をしています!!」と反響
このように細部まで作り込まれたキャラクターたちが、読者の共感を呼ぶ大きな要因となっているようだ。
特に印象的なシーンとして、担当編集者は3話でのマサムネと〇〇子のやり取りを挙げる。
「マサムネが『もう俺26なのにフリーターとかどうしよ、将来ヤバいかも』と悩みを打ち明けると、〇〇子が『私、結婚相手とか好きな人だったら、正社員とかアルバイトとか本当に気にしない。もし無職になっちゃっても別れたりしないし』と返す。

そこで『マサムネが本命彼女とセフレで、態度が全然違う』ということが読者には見えていて……。〇〇子のことは、セフレだから雑に扱うことができる。好きじゃないから、カッコつけない。でも、だからこそ自信がなくて悩んでいることを打ち明けられる。〇〇子の言葉が、マサムネ君に届いて欲しい……、と切なくなるシーンなんです」
20代〜30代の女性を中心に支持を集める本作。「まさに今こんな経験をしています!!」という同世代層と、「少し前の恋愛が、こんな感じだった……」という30代以降の層からの反響が大きいという。
「弱さを無防備に出せるマサムネ君のことを、つい好きになっちゃいます(やってることはクズだけど)」「あの彼にも本命がいたのかな……?ってこの作品で気づきました」など、読者からの生々しい感想が続々と寄せられている。
アラサー世代の複雑な恋愛事情を赤裸々に描き出す『 幸せになりたいマサムネ君 』。その圧倒的なリアリティは、読者の心に深く刺さり続けている。
(「文春オンライン」編集部)