キウイの国、ニュージーランド紀行 第3回 世界最大のキウイ企業・ゼスプリ本社に潜入! - キウイの品質を決める"ドライマター"とは?

2024年5月16日(木)11時0分 マイナビニュース

ニュージーランドに到着してから、キウイ農園にて収穫の様子を見学し、選果場にて出荷方法を見てまわった。最後に残された疑問は、どうやって”キウイの品質”を審査しているかについて。ひょっとして大きさ、色合い、硬さなどの見た目で判断している?その基準は?取材に残された時間を使って、ゼスプリ・インターナショナルのニュージーランド本社、およびキウイの研究所で話を聞いてきた。
○世界最大のキウイ企業
まずは、タウランガにあるゼスプリ インターナショナル本社を訪問した。言うまでもなく世界最大のキウイブランドであり、ニュージーランド国内最大の園芸作物の輸出業者でもある。雇用者数は941人以上、栽培者数はNZ国内に2,820戸(国外1,441戸)。ちなみにZESPRIとは、zest(情熱)とspirit(精神)をかけ合わせた造語らしい。
建物は吹き抜け構造のエントランスを中心に、清潔感のあるオープン型のオフィス空間が広がる。内装の色合いも特徴的で、キウイをイメージさせるグリーン、イエロー、レッドを基調にした落ち着いたデザインで統一している。
2022/2023シーズンに売上高39億2,000万NZドルに達し、2025年までに45億NZドル到達を見込むゼスプリ。担当者は「まだまだ小さな市場。未来に向けて、もっと大きなマーケットに成長させていきます」と意欲をみせる。今後、さらなる消費者を獲得するため、キウイフルーツが健康に良いこと、栄養面で優れていることを広く継続的にアピールしていく、と話していた。
○研究所に聞く - ドライマターとは?
そしてキウイの品質管理を行っているHill Laboratoriesを訪ねた。案内してくれたブラッド・スティーブンスさんは「ここは40年前にできた研究所です。キウイの完熟度などを調べています」と紹介する。なるほど、完熟度を調べている……。具体的には、どうやって調べているんだろう?
施設内では担当者がセクションごとに分かれ、様々な計測器を用いてキウイの品質をチェックしていた。重さを測る、果実の硬さを調べる、色あいを確認する、といった具合。クロモメーターを使った測定ではカラーチャートも使用する。ブラッドさんは「サンゴールドキウイであれば、イエローの色味を見ます。たとえば、まだグリーンの色素が強いなら完熟前の状態なので、その農園からは出荷できません。日をあらためてサンプルを採取し直します」と説明。どれも地道な作業だ。
キウイの品質を決める工程で欠かせないのが、果実から水分量を取り去ったときの状態(ドライマターと呼ばれる)のチェック。キウイの輪切りを乾燥機にかけて60〜65度の高温で8時間ほど乾燥させ、乾燥前の数値と比較する。ゼスプリの定めるドライマターの基準があり、これを満たしていないと出荷できない、とのこと。
ここがキウイの品質検査の最前線だった。全ての検査をパスしないと出荷できないとあり、検査結果が出るまで、キウイ農家にとっては気持ちが落ち着かないに違いない。もっともそのおかげで、我々消費者は美味しいキウイを食べられているわけだ。余談ながら、先日の選果場、今回の研究所ともに働いているスタッフは楽しそうだった(カメラを向けると必ず笑顔を作ってくれた)。ニュージーランドの国民性もあるのだろうが、きっと労働環境も良いのだろう。
○キウイの効能について
最終日、キウイの効能についてあらためて研究者の発表を聞いた。主要フルーツのなかでも栄養素の充足率が飛び抜けているキウイフルーツ。ビタミンC、食物繊維、カリウムなど、日常生活に必要な10種の栄養素が摂取できることが広く知られているが——。オークランド大学の講義室にて行われたプレゼンにおいて、アンバー・ミラン医学博士は「グリーンキウイは便秘と胃腸の快適さを改善することが報告されています」と紹介する。
アンバー氏によれば、現在、世界人口の約60%もの人々が胃腸の不快感に悩まされているという。そこでうまく活用したいのが、キウイに含まれる食物繊維、あるいはアクチニジン(タンパク質の分解を助けて消化を促進する酵素)といった消化器系に作用する成分。便秘の改善、消化不良の改善のほか、胃腸の不快感の緩和を促す効果も期待できるそうだ。
ところで食物繊維には水溶性・不溶性の2種類があり、快適な排便にはどちらも欠かせない。そしてキウイには、この両方の食物繊維が含まれているという。
アンバー氏は「1日2個のキウイフルーツを3日間、食べるだけで腸の中の水分量が変わったとの報告があります。これを4週間続けた調査では、自発的な排便の頻度が上昇し、便秘の辛さが改善され、膨満感が緩和されました」と紹介する。このあとも、サンゴールドキウイには”いきみ”解消のメリットがあり、残便感がなくなる改善効果も見られた、などの研究結果を公表。直近では、キウイは腸だけでなく胃の働きもサポートしているのではないか、そんな観点からも研究を進めている、と明かす。現時点での結論としては「グリーンキウイ、サンゴールドキウイは便秘改善に有効です。キウイには腸の健康に有益な化合物が豊富に含まれている可能性があります」とまとめた。
ニュージーランドから帰国後、毎日、キウイを食べ続けている筆者。おかげで快調(快腸)を維持している。朝はグリーンキウイをヨーグルトに入れ、夕食にはサンゴールドキウイでサラダをつくる日々。キウイにナイフをあてるとき、貼られているシールをじっと見ながら「これは何処の選果場で貼られたシールかな」などと、はるか遠い南の島、ニュージーランドに思いを馳せている。
近藤謙太郎 こんどうけんたろう 1977年生まれ、早稲田大学卒業。出版社勤務を経て、フリーランスとして独立。通信業界やデジタル業界を中心に活動しており、最近はスポーツ分野やヘルスケア分野にも出没するように。日本各地、遠方の取材も大好き。趣味はカメラ、旅行、楽器の演奏など。動画の撮影と編集も楽しくなってきた。 この著者の記事一覧はこちら

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