復活! 休眠クロスバイク 第1回 休眠クロスバイクをリフレッシュする
2025年5月17日(土)11時0分 マイナビニュース
「では、復活させましょう。ちょっとお金はかかるけど、メンテナンスすれば、また乗りたくなりますよ……」
しばらく乗っていないので、捨てるか、引っ越し先へ持っていくか。そう話す編集者Rさんのクロスバイクを復活させることにした。
○室内でオブジェと化している自転車を復活させる
国土交通省によれば、国内には5724万台(2022年)もの自転車があるそうだ。通勤や通学用のシティサイクルが大半とは言え、すごい数である。その中には駐輪場に放置されていたり、室内でオブジェと化している自転車も多い。
Rさんの2015年式ジャイアント・エスケープRX3は典型的な後者、埃を被り汚れてはいるが、年式の割に傷んでいない。
とはいえ、素人判断で走らせるのは危険。まったく走らなくても、時が経てばゴムは柔軟性を失い、樹脂のパーツも紫外線等によって傷んで本来の性能を発揮できなくなっていることもある。休眠させている自転車を復活させるときは、やはりプロに見てもらってからの方が安心だ。
ひとくちに自転車店と言っても、シティサイクルの専門店もあれば、スポーツ車に特化したプロショップもある。さらに大手チェーンの販売店や、メーカー運営しているストアもある。本来であれば、購入したショップに持ち込むのがベストだが、今回のように転居した場合、どこへいけばいいのか?
まずは自宅の近所にあり、メンテナンスする自転車を取り扱っているショップが第一候補だろう。通勤に使うなら会社の近くでもいいし、自分の生活パターンとショップの営業時間を照らし合わせてみれば、候補がいくつか見つかるはず。今回はジャイアントストア二子玉川で面倒をみてもらうことにした。
○メンテナンスするストアの選び方
メーカー系のストアを選ぶ理由は、商品知識に長けているという安心感である。自転車にも個性があるように、故障する部位もモデルごとに違いがある。そうしたトラブルに纏わるノウハウは、関わった数で培われる。また、純正の補修パーツが入手しやすいという強みもある。
「この自転車、室内で保管されていたんですね。屋外だったら、走行距離に関係なく、もっと傷んでいるはずですよ」
店長の加藤愛夢さんは微笑みながら、タイヤの空気が抜け、一部のボルトはサビもうっすらと浮いているRX3を見て、そう言った。しばらく乗っていないので、消耗品類は一新したほうがいいだろうし、詳しくはメカニックが細部までチェックして見積もりを出してくれるというので、ひとまずお店を後にすることにした。
○見積もり額&どこをメンテナンスする?
見積書の明細はここでは省略する。だが、実際には細かい項目がずらりと並んでいる。基本整備は「ライトメンテナンス」という名称で、ヘッドパーツの調整やホイールの振れ取り、ハブのガタつきチェックなど、全部で19項目を点検してくれる。自転車に詳しい人なら自分でやってみたくなるかもしれないが、正しく作業するのはなかなか難しいし、ほとんどの人にとってプロに任せた方が安全で確実だし、時間の無駄も省ける。
ちなみにジャイアントストアで購入した自転車であれば、全国どこのジャイアントストアでも月に一回は同様のメンテナンスを無料で行ってもらえる。ほかにも工賃の割引きがあり、今回であれば総額で15,950円も安くなるので、最初にどこで買うかでランニングコストは大きく違う。
してみると、確かに最初は肝心である。でも、リカバリーはいくらでもできる。よく言われることだが、自転車店とのつきあいは買って終わりではなく、買ってから始まるのだ。
【自分の色に染めていく】
見積もりの内訳を見て予想している人もいるだろうが、Rさんはサイクリング中にお尻が痛くなって、それが乗らなくなった原因の1つだという。初心者ならずとも、お尻の痛みはサイクリストの大敵である。
お尻が痛くなったら……やるべきことは1つ。
ショップに相談する。
自転車は機材スポーツなので、ライダーか自転車が変われば問題が解決することが多い。初心者ほど痛みや悩みを我慢してしまう傾向にあるが、それは間違いである。初心者ほど、問題解決の方法は機材に求めるべき。ケースバイケースではあるが、サドルの高さや取付け角度をちょっと調整するだけで、嘘のように痛みがなくなることだって珍しくない。
Rさんのクロスバイクはベルがない。 ほとんどの都道府県で装着が義務づけられているので、ベルは新しく装着せざるを得ない。しかし、考え方を変えれば、自分好みの音色のベルを選べるチャンスでもある。そう思って、アクセサリーコーナーを歩けば、店内を歩くのも楽しくなる。
「半年以上乗っていない自転車を復活させるときは、ショップに顔を出してみてください。不具合があるなら、すぐに。なくても、疑問や思うところがあったら、どんどんお店に来て下さい」(加藤さん)
行きつけの自転車店は、かかりつけ医と似ている。長く通うこと、頻繁に診てもらうことで、診断の精度も安心感も上がる。新車を購入するためカタログを見ている時間は楽しい。けど、これまで乗ってきた(乗ってない)自転車に手を施すと、新車以上に愛情が湧く。これも、またワクワクする時間だ。
次回、メンテナンスとリフレッシュの様子をレポートしていこう。
協力:ジャイアントストア二子玉川
所在地:東京都世田谷区玉川1丁目10−7
営業時間:月木金 11:00〜20:00、土日祝 10:00〜19:00
定休日:火曜日、水曜日
アクセス:東急田園都市線・大井町線「二子玉川」駅より徒歩2分
菊地武洋 きくちたけひろ 自転車ジャーナリスト。80年代から国内外のレースやサイクルショーを取材し、分かりやすいハードウエアの評論は定評が高い。近年はロードバイクのみならず、クロスバイクのインプレッションも数多く手掛けている。レース指向ではないが、グランフォンドやセンチュリーライドなど海外ライドイベントにも数多く出場している。 この著者の記事一覧はこちら