テレビで勝手に顔出しされていた!肖像権の侵害じゃないの?

5月17日(木)22時9分 シェアしたくなる法律相談所


テレビには芸能人や著名人だけでなく、一般の人が映っていることがあります。取材を受けて応じている場合もありますが、「取材は受けない!」と断っている姿が放映されていることもあります。


取材を断ったにも関わらずその姿を放映するのはアリなのでしょうか? 琥珀法律事務所の川浪芳聖弁護士にお聞きしました。


プライバシー権や肖像権を侵害されたか?

テレビ取材を断ったのに勝手に撮影され、放映された。こんな時、慰謝料や損害賠償請求はできますか?


川浪弁護士「撮影態様が社会的に受忍すべき限度を超えたものであれば、肖像権侵害やプライバシー権侵害を理由に損害賠償を請求することができます。


社会的に受忍すべき限度を超えたかどうかは、撮影内容、撮影場所、撮影された人の社会的地位、撮影方法、撮影の必要性、撮影者の意向等の事情を総合して判断されます。」


いわゆる「プライバシー権」や「肖像権」について明確に規定した法律は、日本には存在しません。しかし、これらの権利が侵害された場合に不法行為に基づく損害賠償請求を認めた判例があるそうです。


川浪弁護士「実際に、テレビ番組の生中継において廃棄物等の収集に従事している様子を無断で放送した行為が肖像に関する人格的利益やプライバシーの侵害にあたるとして損害賠償請求をした事件において、テレビ局に対し、120万円の損害賠償請求を認めた事例もあります(東京地裁平成21年2月17日判決)。」


また、放映・公表されそうになった場合には、事前に差し止め請求ができます。とはいえ、憲法で定められた表現の自由や報道の自由と衝突するため、厳格な要件が必要となるそうです。


それでは、街中や店内にいるところなどを無断で撮影され、放映された場合はどうでしょうか?


川浪弁護士「ケースバイケースです。中継中に偶然写り込んだような場合には何の中継中なのか、映像はどの程度鮮明なのか(個人を特定できる程度なのか)等の事情によりますが、損害賠償請求は認められにくいでしょう。他方で、自宅内にいるところを無断で撮影された場合には、プライバシー侵害の程度が高く、無許可で放映すると損害賠償請求が認められる可能性は高いといえます。」


 


写真でもプライバシー権や肖像権はある

映像ではなく写真がテレビ放映されたり、出版物に掲載されたり、展示された場合は、慰謝料や損害賠償を請求できますか?


川浪弁護士「上記と同様にその放映や掲載が受忍限度を超えた場合には、不法行為に基づき損害賠償請求をすることができます。


裁判例で、街中を歩く一般人の写真(胸元に大きく赤字でSEXとデザインされた衣服を着用)を無断で撮影しファッションサイトに掲載した行為が肖像権侵害にあたるとして損害賠償請求が認めたものがあります(東京地裁平成17年9月27日)。」


 


重大性や社会的関心によって変わる

プライバシー権や肖像権がどこまで認められるかは、一般市民と公人・芸能人などで違いがありますか?


川浪弁護士「芸能人・公人についても、肖像権やプライバシー権が認められますが、特有の事情は考慮されます。(なお、芸能人等については氏名や肖像が経済的価値を有する場合があり、その場合にはその経済的価値をコントロールする権利としてパブリシティ権が問題となりますが、ここでは割愛します。)


語弊を恐れずにいえば、著名人になる道を選択したのだから、世間の注目を浴び、ある程度プライベートが晒されてしまうことについては、自分でも分っていたはずでしょう、ということです。いわゆる有名税みたいな考え方ですね。


ただし、著名人だからといってなんでも晒されていいわけではありません。例えば、ジャニーズ事務所所属タレントの自宅の住所を載せた『ジャニーズおっかけマップ・スペシャル』の出版の差し止めを認めた裁判例があります(東京地裁平成10年11月30日判決)。著名人といえども、自らの住所について公表されることまで、承諾しているとは考え難いということですね。」


それでは、一般人でも何らかの事件に関わっている疑いを持たれていた場合はどうでしょうか?


川浪弁護士「事件の内容、疑いの程度等にもよりますが、例えば、犯罪に関与しているような場合、自己の容ぼうが無断で撮影・放映された場合に被る精神的苦痛は甚大といえます。一方で、一般社会の知る権利に奉仕するため、それを報道すべきともいえます。


これらの調整という困難な問題がありますが、事件の重大性から社会的な関心が強いような場合には、肖像権やプライバシー権の侵害は認められにくくなるでしょう。」


個人の権利を守るためのプライバシー権や肖像権と、報道の自由や公共の利益。法的にはどちらが上であるとか強いなどとは決まっておらず、それぞれのケースによって検討し、調整されるものなのです。


 


*取材協力弁護士:琥珀法律事務所 川浪 芳聖先生(弁護士の役割は、一言で表すと「法的問題の解決」ですが、依頼者さんにとっては、解決(結果)に至るプロセスも非常に重要だと考えています。依頼者さんの話をじっくり聞いて、丁寧に説明することを心がけています。)


*取材・文:フリーライター 岡本まーこ(大学卒業後、様々なアルバイトを経てフリーライターに。裁判傍聴にハマり裁判所に通っていた経験がある。「法廷ライターまーこと裁判所へ行こう!」(エンターブレイン)、「法廷ライターまーこは見た!漫画裁判傍聴記」(かもがわ出版)。


*画像はイメージです(pixta)

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