「嫌なことを思い返さない」「話す相手がいなくても誰かに語りかける」92歳のシスター・鈴木秀子の元気を支える<食事の取り方>
2024年5月16日(木)12時30分 婦人公論.jp
(写真提供:Photo AC)
内閣府が公表した「令和5年版高齢社会白書」によると、令和元年時点の健康寿命は、男性が72.68年、女性が75.38年と年々延びているそう。「超高齢化社会」の現代、年を取ることに落ち込んでしまう人もいるのではないでしょうか。しかし、50万人の悩みと向き合ってきた92歳の聖心会シスター・鈴木秀子さんは「年を取るって、素晴らしいこと」と話します。今回は、その鈴木さんの自著『あなたは、そのままでいればいい』より、人生100年時代を軽やかに生き抜くヒントを一部ご紹介します。
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年を取ったら、自分自身を大切にする
年を取るのは、なにかをがまんすること。そんなふうに考えていませんか?
歩くのが大変になってきたから、習い事をやめる。
健康のために食べたいものをがまんする。
耳が遠くなってきたから、お友だちとのおしゃべりをあきらめる。
食が細くなってきたから、家族との外食をあきらめる。
年を取ると、体力も気力も衰えてくるのは自然の摂理ですから、抗(あらが)うことはできません。
でも、なにかをあきらめたり、がまんするのではなく、どうか次の言葉を自分に言い聞かせてください。
年を取るほど自分を押し殺さない。
あなたはこれまで、親のため、子どものため、家族のため、仕事のためなど、だれかのために十分に生きてきました。
だからそろそろ残された人生を、自分のために生きてもいいのですよ。
年を取ったら、自分自身を大切にする。
それはわがままなことではありません。
もっともっと自分をいたわってください。
食事をすることは、私たちの人生でかけがえないこと
食事についていうと、私が幼いころは、ものがない時代でしたから、好き嫌いはありません。ちょっと野菜が苦手なだけです。
栄養的にこれを食べると良いとか、これを食べると体に悪いとか、あまり考えずに、「食べる喜び」を味わうようにしています。
食べることは、生きること。
生きることは、食べること。
食べ方には、その人らしさがあらわれます。
共に食事をすることは、その人のあるがままを受け入れること。
食事をすることは、これほど私たちの人生でかけがえないことではないでしょうか。
高齢者施設は、修道会の暮らしに似ているように感じます
ですから、食事のときはたくさん会話をします。食事は、生きていく楽しみを共に味わう場ですから。
おなじ釜の飯を食うという言葉があるように、楽しくいっしょに食事をすると、なぜか心を許し合えて、まるで人生の苦楽を共にしたような気がするものです。
(写真提供:Photo AC)
修道会で私といっしょに生活をしている人たちは、多くが海外で生活した経験を持っています。海外では食事中のコミュニケーションをとても大切にします。
高齢者施設は、それぞれが個室で時間を過ごし、食事や活動はほかの入居者と共にするという生活スタイルですから、目的は違えど修道会の暮らし方に似ているように感じます。
私は、講演の予定が延期になったりして時間ができると、「なにをしようかしら」と考えます。
そんなときは、修道会の食事メニューに彩りを添えられたらという気持ちで、インターネットで料理のレシピを検索します。
先日は「なすと鯖缶の煮物」をつくりました。食卓でみなさんと「こんなメニューを見つけたのよ」なんて会話をしながら食事をしていると、栄養以上のエネルギーをもらっています。
年を取るほど、自分を押し殺さないでくださいね
私は食事をするとき、決めていることがあります。
それは、今日あった嫌なことを思い返さない、ということです。
そのためには、目の前に出された食事のことを考えます。
「このにんじんは、どんな農家さんが育てたのかしら。ありがとう」と感謝したり、「お米が実った黄金色に輝く秋の田んぼを見てみたいな」と自然に思いを馳せたり、「今日はつくったことがないレシピに挑戦できたわ」と自分を褒めたり。
目の前の食事を楽しむことが元気の秘訣だと感じています。
目の前に話す相手がいないときは、亡くなった両親や友人、遠くで暮らす家族など、話す相手を心に決めて語りかけます。
生きているときはどんなに厳しくて口うるさい親だったとしても、もうあなたを否定することはありません。亡くなった方は、絶対的に肯定的だからです。
「お母さん、このにんじんは甘くて美味しいね」
「このレシピに新しく挑戦してみたの。どう?」
こんなふうに話しかけてみるといいですよ。
ひとりで食事をする人であれば、だれに遠慮することもありません。いつ食べてもいいですし、どんなふうに食べてもいいのですよ。
最後にもう一度。年を取るほど自分を押し殺さないでくださいね。
※本稿は、『あなたは、そのままでいればいい』(扶桑社)の一部を再編集したものです。
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