からっぽの廃空間に驚きの使いみち

5月18日(土)6時0分 JBpress

 冒頭の写真がどこだかおわかりだろうか。

 栃木県宇都宮市にある大谷資料館、大谷石(おおやいし)を切り出したあとにできた地下空間なのだ。

 構内にはさまざまな色の照明が設置されていて、光と影のコントラストが神秘的な雰囲気を引き立てている。


聖地巡礼スポットとしても脚光

 この光景を実際の目の前に見るだけでも価値があるが、それだけではない。希少価値を持った「観光スポット」「イベントスペース」として多くの人を呼び寄せているのだ。2018年には約46万人が訪れたという。

 映画やドラマの撮影にもよく利用されている。新しいところでは、自虐的な内容なのに(なので)埼玉県民にもウケている『翔んで埼玉』もその一つ。そのほか、音楽のプロモーションビデオの撮影や外資系企業のレセプション会場としても使われているという。残念ながら撮影現場の写真は撮れないので、校内入口横に張り出されている映画のポスターでご容赦いただきたい。このため、映画、ドラマ、ミュージシャンそれぞれのファンが「聖地巡礼」として訪れることもかなり多いらしい。

 撮影実績は以下のページで一覧されている。
http://www.oya909.co.jp/as-studio/

 独特の雰囲気を持つので、神殿や秘密基地のような場所として利用できるし、大がかりなセットを組むより手間がかからない。地下なのに火器を使える場所であることも、戦隊ものや特撮ものなど特殊な撮影に重宝される理由の一つとのこと。大谷石が持つ耐火性という特性がこんなところでも威力を発揮しているというわけだ。「セーラー服と機関銃(1981年公開)で薬師丸ひろ子さんが磔(はりつけ)にされたシーンもここで撮影されたんです」と、案内してくれた大谷資料館の鈴木洋夫館長が教えてくれた。

 過去に行われた撮影時の写真は、坑内にも展示されている。著名な作品が多数あり、思わぬ発見があったりする。

 このほか小中学生による合唱コンサートや、立体造形の展覧会などの催し物も行われている。立体造形(オブジェ)の一部はそのまま坑内に残されていてライトアップされ、地下空間の雰囲気を盛り上げている。

 以前は地上からは存在がわからない、という特性を生かし、“秘密工場”として利用されていたことがあるのだが、それは後編で。

 同じ敷地には、しゃれた内装のショップとカフェもある。ショップには大谷石をモチーフにしたインテリアグッズが並び、表参道にいそうなカッコイイ店員さんのいるカフェの床は、大谷石が敷かれている。「資料館」と聞いてイメージする地味な施設とはだいぶ印象が違う。手間と費用をかけて「観光スポット」にしようという強い意気込みが感じられる。


“餃子の町”の足下にある空間

 大谷資料館(大谷石地下採掘場跡)があるのは、栃木県宇都宮市大谷町。古くから建築物の外壁や土蔵などに利用されてきた大谷石(おおやいし)の名前は聞いたことがあるかもしれない。

 JR宇都宮駅から北西に直線距離でおよそ7km。市街地からそれほど遠くないが、大谷石を算出する山に囲まれた一帯だ。地上に露出している大谷石は一部だけで、地中には東西に約8km、南北に約37kmにわたって分布している。

 公共交通機関を使うならJR宇都宮駅前から出ているバスが利用できる。次第にのどかな市街地に車窓が変わっていく中、大谷町に入りバスが北方向に進行方向を変えると、あたりの景色は一変する。やや緑がかった岩肌が覆いかぶさるように眼前に迫ってくる。

 最寄りのバス停から、ゆるやかな坂をのぼりつつ案内板通り歩いていけば、「くり抜かれた」としか表現できない形状の岩山が現れる。この風景も独特のものだが、これ以上のものが地下に埋まっている。

 ここでは1919年(大正8年)から1986年(昭和61年)までの67年間、大谷石の採掘が行われていた。跡地を何らかの形で世に残したいと、土地の所有者がオープンしたのが1979年。東日本大震災のときに安全確認のため一時的に閉鎖したが、その後運営者が変わりつつもずっと展示が続けられている。一時期は年間入場者数が10万人程度に落ち込んだものの、前述したようなさまざまな取り組みを行った結果、現在では年間約46万人を集める「観光スポット」へと変貌したのだ。


狭い階段を抜けると一気に

 大谷資料館自体はとてもシンプルな作りの建物だ。建物に入ると、坑内への入り口が右手にある。ここのアルミ製の扉を開けると、地下に通じる階段がある。

 狭い階段を降りていくと、空気がだんだんヒンヤリしたものに変わっていく。年間を通じて、坑内の平均気温は8度前後。大谷資料館では上着の持参を勧めている。

 階段を降り切ると一気に視界が開ける。坑内の最も広い空間が一望できる瞬間だ。坑内には採掘後に残された大きな石柱が何本もあり、全体の広さは2万m2(140m×150m)にも及ぶ。日本とは思えない異国感あふれる情景に、この場で息をのむ人も多いという。

 ただ大谷資料館、本来は大谷石の採掘現場を見てもらうもの。注意深く観察すると、積み重なった過去が浮かび上がってくる。つづきは後編で。

大谷資料館見学の概要
 大谷資料館の開館日や見学料金などはWebサイト(http://www.oya909.co.jp/)で確認できる。見学にあたって制限されていることや、現在の館内温度なども記載されているので、事前に読んでおいた方がいい。

 また、2019年6月1日から30日までは教会ゾーンが特別公開される。教会ゾーンの公開は期間限定のうえ、通常はライティングされているのだが、今回はライティングなしで天然の太陽光が差し込む様子を見られるという。
http://www.oya909.co.jp/release/2019/03/09/1381/

筆者:牧村 あきこ

JBpress

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